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垢すりでワンチャンかけたら思いもよらぬ展開になった


夜勤のバイト中からずっと銭湯を探していた。夜勤は当たり前だけどお風呂に入れないし、わりと動くから汗をかく。

電車で数駅のところにある、朝からやってる海近くのスパ銭に決めた。夜勤が終わって9時過ぎ、東京に行く電車とは真逆のホームから、人の流れを見ながら電車に乗った。


露天風呂で遠くに見えるみなとみらいやスカイツリーを見てボーとして、サウナでスッキリを見ながら汗を滝のように流して、炭酸泉で小さな泡と格闘したりした。

ひととおり温泉を楽しんで、そろそろあがろうと思ってたときに垢すりの文字が見えた。垢すり自体には前から興味があった。肌がマジでつるつるになるらしい。30分で4000円は高いけど、「旅の恥は搔き捨てだろう」とおそらく使い方が間違ってる言葉に背中を押され、すみません、と中に声をかけた。


「今から垢すりをしてほしいんですけどー」というと食い気味に「イマ?」と中から声が返る。若干押され気味になりつつも、今お願いしますと言う。するとまじで普通のおばちゃんが出てきた。違うのは言葉がカタコトなくらい。中に入るとシャワーと簡易的なベットが三つあり、その一番端に通される。渡された紙の軽いパンツ的なものを履き、「アオムケ二ナッテー」の言葉にしたがいベットに寝転ぶ。

顔に温タオルをしかれ、すぐに垢すりが始まる。ふくらはぎとか足先は全然痛くないけどひざ上から太ももに上がるにつれめちゃくちゃ痛くなる、特に太ももの内側。「キモチイー?」とのおばちゃんの声に痛みで泣きそうになりながら、気持ちいいですと声を返す。垢すりが会陰部に近づいてきたとき、なぜかいけるんじゃないか?と感じ始め話しかけた。


「お姉さんはどこ出身なんですか?」
まごうことなきおばちゃんだったし、少しずれ落ちたタオルからも小太りのおばちゃんが見えてたけど、俺はお姉さんと呼びかけた。中国だよ、とカタコトの日本語で彼女は答える。
実は大学で中国語を履修してたこともあって、片言の中国語でおばちゃんに自己紹介した。

「我土屋、你叫什么名字?(私は土屋です、あなたの名前は何ですか?)」

俺の片言の中国語に「ウマイネー」と言うおばちゃんの顔はほころんでいた。

そこからおばちゃんとの中国語マンツーマンレッスンが始まった。

「『日本人』ってなんていうんですか?」
「『リーベンレン』ダネー」

「我喜欢你」
「どういう意味ですか?」
「『アナタガスキデス』ダヨ!」

おばちゃんオシャレじゃん。


その後おばちゃんは30分はとうに超えてるのに、垢すりも臨界点を超え肌がなくなるんじゃないかって思うぐらいこすりながら、俺に熱心に中国語を教えてくれた。


それでもいつかは終わりがくるもので、おばちゃんはそろそろ時間だとつぶやいた。

終わり際に何歳か尋ねられ、21ですと答えると、若いから何でもできる、中国語を本気で学びなさいと最後に言って、紙パンツを引きちぎった。
その乱雑さがなんだか愛おしかった。



垢すりが終わったら絶対に言おうと決めていた言葉があった。

「おばちゃん、謝謝、再見(ありがとう、またね)」

おばちゃんが少し泣いていたように見えたのは気のせいかな。


ハグしたかったけどやめた。全裸的下腹部見見だったからね。


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