Kat Schrier : EPIC: a framework for using video games in ethics education 

ゲームと教育の分野でかなり参照されているKat Schrierさんの論文、日本語に訳されている学習科学ハンドブックでも見ることができるので影響も大きいのではないでしょうか。
こちらはhttps://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/03057240.2015.1095168で閲覧可能である。

倫理教育とビデオゲームに関するフレームワークであるEPIC(Ethics Practice and Implementation Categorization [EPIC] Framework),は海外の文献ではよく利用されている様子。私の研究でも参照すべきなので、少なくともフレームワークの表(p408)だけでも翻訳しておこう。こんな感じであってるだろうか。

注意しないといけない点は、この論文は倫理教育とビデオゲームに関するフレームワークを提案しているのですが、自分の場合は、応用哲学である工学倫理・技術者倫理であって、倫理教育全般とは違うということだ。
 それから学生達が作ったのはビデオゲームではなく、ボードゲームやブロックゲームであったという点も注意が必要。もちろん近似、重なり合う部分は沢山あるだろうが、違う点も必ず出てくるはず。
 工学の場合は爆発や環境汚染など社会的な影響が大きく、容易にテストプレイできない。この点、ゲーム教育の利点は、安全を担保しながら、沢山失敗から学べる。別の文献では、これが科学における実験と工学との大きな違いであり、工学倫理においてゲーミフィケーションの要素が有効とされる要因の一つになっていると指摘されている。これについてはまた別に触れたい。

とはいえ、このEPICフレームワークであるが、実際にゲーム作りの授業に携わった身としては、大いにうなずける点が多い!
ゲームで楽しませようと思うと、感情移入させないといけない。なので、できるだけ現実社会に近い設定にするんですよね。社長争いをしているとか、開発部門にいて、不正を告発するか黙るか選択を迫られるとか。
ロールプレイも、例えば、倫理的に悪といわれるような判断をしても与えられた役割のせいということで自分に責任が降りかからないようになっているんですよね。さらにはロールプレイは、自分と違う考えの人を疑似体験できて、多様性の気付きにもつながっているんですよね。
ということで安全な環境で何度でも、そして他者への気付きも付随しながらゲームを楽しめる。これがゲームの良いところですよね(続き)

目次と概要を述べておこう
Introduction
Review of previous framework
   Relevant ethics and education frameworks
   Relevant games and ethics frameworks
The Ethics Practices and Implementation Categorization Framework
 The EPIC Framework Educational Goals
  E1. Enhance ethical awareness
    E2. Enhance emotional intelligence
    E3. Practice care or empathy-related skills
  E4. Practice ethical reasoning
  E5. Practice ethical reflection
  E6. Enhance character
  E7. Cultivate facility with major ethics issues, approaches, and frameworks
 The EPIC Framework Educational Strategies
  S1. Emotion, mood, and tone
  S2. Diaries or personal reflection devices
  S3. Role-taking and role-playing
  S4. Story or narrative
  S5. Modeling through avatar or character
  S6. Choices and consequences
  S7. Simulation
  S8. Social interaction and collaboration
  S9. Deliberation, dialogue, and discourse
  S10. Applications to real-world issues
  S11. Procedural exploration and interaction
  S12. ‘Nudges’ or contextual and/or personalized clues
Conclusion and next steps

結論のところで、このフレームワークをどのように用いることができるのか述べているが、その最後に
Finally, designers and educators who are creating a game for ethics education could use the framework to communicate to others a game’s potential for meeting particular goals or strategies.
最後に、倫理教育のためにゲームを制作しているデザイナーや教育者は、このフレームワークを使って、ゲームの可能性を他者に伝えることができる。

とあり、我々の研究でもこのフレームワークを是非とも使いたいと思っている。

またこのフレームワークは今後さらなる検証が必要であると述べている。
Moreover, the EPIC Framework has not been empirically tested and the games provided as examples have not been tested, in general, for their efficacy in ethics education. Further testing is needed to understand whether these are the most relevant goals and strategies in ethics education, whether specific strategies can be used in tandem to meet ethics learning goals、、、、
さらに、EPICフレームワークは実証的にテストされておらず、例として提供されたゲームも、倫理教育における有効性について一般的にテストされていない。これらが倫理教育における最も適切な目標と戦略であるかどうか、倫理学習の目標を達成するために特定の戦略を併用できるかどうか、、理解するためには、さらなる検証が必要である。



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