地域と補い合える関係を作ることで誰でも空き家を利活用できる-KURA COCOLONOを事例に-
先月、山梨県の「とある場所(北杜市までは公開しています)」に体験型実店舗であるKURA COCOLONOをオープンさせました。
都心から車で2時間半(交通事情によります)かかる場所で、都内在住の僕はいつもその場所にいれるわけではありません。
他のスタッフも東京や静岡に住んでいるので、常に誰かが在廊しているわけでもありません。
持ちつ持たれつの運営を目指す
誤解を恐れず言うとKURA COCOLONOの維持費(家賃や電気水道など)や移動のための車の費用やその維持費は0円です。KURA COCOLONOに関わるスタッフが負担しているのは、移動の際の交通費のみです。
この状況でなければ住まいから離れた場所で実店舗を運営することは不可能です。
それを可能にしているの、地域の方々や地域のKURA COCOLONOのスポンサーと言っても過言ではない方々の存在です。
僕たちがKURA COCOLONOで目指しているのは「過疎地を世界へ」や「日本の伝統文化の素晴らしさを伝える」、「居場所作り」などだけではなく、これから確実に増える空家や過疎地を「誰でも」利活用できる方法論を構築することです。
でも正直、地域の方々の賛同やスポンサーの探し方にノウハウはなく、その地域に入ってみないと分からないことがたくさんあります。
例えば神社を崇拝している地域では氏子(うじこ)が地域を取り仕切っていることが多いですし、都心に近いと自治会長などが地域をまとめています。その地域ごとに違いがあるので、一概に地域の賛同の得方はこうですとは言えません。
しかし、地域の方々やスポンサーと持ちつ持たれつの関係になることはとても大切です。しかもお金の関係では動かない、賛同が得られないことが多々あります。
その「思い」の部分をしっかり理解することがとても大切です。
誰もが空き家に手を加える時にぶつかる問題点
僕にこの場所の利活用のアドバイザー(今はオーナーです)としての依頼が来た時、まず考えたのが使われなくなった空間に対してどのように手を加えるかでした。
そして問題は資金。正直に言います。
僕は思い切ってKURA COCOLONOの資本金は10万円(結局その後の追加やオープンからの売り上げなどを収入にせず、そのまま地域や場のために使い30万円は超えました)にしましょうと提案しました。
なぜなら、なるべく「誰にでもできること」を創造したかったからです。
建築関係の人であれば分かると思いますが、50坪を超える家と蔵の空間に手を入れるとなった時の10万円はスズメの涙にもなりません。
そこで考えたのが「空間を利活用する際の建築手段を再定義する」ことです。
建築手段を再定義する
建築には、新築・リノベーション・減築・DIYなどの手段が存在します。
KURA COCOLONOでは新築と減築は考えていないので、リノベーション・DIYの中で建築手段を検討していました。
しかしどれもお金がかかります。10万円では到底できません。
そこで僕たちが取り入れたのが
・掃除
・ブリコラージュ
という手段です。
掃除は、空間を綺麗にするということも目的の1つですが、僕たちが意識したのは「空間がもともと持っているポテンシャルを見つける」ことでした。
ただ単にゴミを捨て、床や壁などを綺麗にするといった掃除ではなく、どこをどう掃除すれば空間のポテンシャルを発揮できるかを意識しながら掃除をしました。
スタッフとの掃除からスタート
ポテンシャルを意識しながら建具を取っ払ったり、入れ替えるなどの掃除をすることで素敵な空間が浮かび上がります
そしてブリコラージュ。
ブリコラージュ建築
以前、ブリコラージュ建築について書きました。
簡単に説明すると、その場所でしか手に入らない素材だけを使って空間を作ることを意味します。
これは僕が提唱した新しい建築概念です。
例えば、庭に落ちていた石や元々住んでいた方が残した建築建材、地域の方々が提供してくださった素材など、その場所で手に入るものだけでできるだけ空間を作っていきました。
その集積で完成したのが KURA COCOLONOという場所です。
ブリコラージュ建築を導入することで建築コストも下げられ、さらにここでしか体験できない空間という付加価値が付きましたし、地域の方々との繋がりも強くなりました。
しかし、どうしてもそれでは補えない箇所は地元のホームセンターで建材を購入しDIYしました。
僕はKURA COCOLONOを事例に、全国でこれから必ず増える空き家や過疎地に対して「誰でも」「ローコストで」「楽しく」「地域と共に(ために)」「地域や人に根付いた」「儲けの出る」「みんなの居場所作り」を目指したいと思っています。
そしてこれからKURA COCOLONOは宿泊できる場所を作ることも決まりましたので、また追ってご報告させていただきます!
竹鼻良文/TAKEHANAKE代表
TAKEHANAKE design studio HP
TAKEHANAKE BRAND