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東急ハンズを、世界で勝負するデザイナー・竹鼻良文と歩いてみたら



前回記事「ハンズと手を組み続けて18年。誰でも世界のデザインに挑戦できるお話」にて、ハンズ玄人の竹鼻さんが、世界で勝負をするデザインやものづくりにおいて東急ハンズという場所がいかにすばらしいのか、みなさまに伝わったとは思いますが・・・


定期購読を読んでいただいている方のなかには、「自分はデザイナーでもないし、ものづくりなんてやれないだろう」とお思いの方もいらっしゃるかと思います。わたしもまさにそうでした。しかし、クレイジータンクの活動を通じて、竹鼻さんから以下のような話を聞くなかで、わたしの中に小さな変化が生まれていきました。


「誰だって、その人にしかないオリジナリティを持っている。気が付いていないだけだよ。デザインのルールやセオリーという机上の理論はあるけれど、それより大切なことは発想やオリジナリティだよ。」

「これから社会が様変わりしていくことは明らか。そのなかで、自分のオリジナリティを確立し、育てていくことが重要。大量に売れたり、話題になることではなく、自分らしさや自分だけが創り出せる価値を、すこしずつ育てていこう。それが、ほんとうの意味の“投資”だよ。」


竹鼻さんの輝かしい実績を見ていると、「自分には到底そのような能力はない…」と思ってしまいがちですが、有名デザイナーになることや話題性のある商品をたくさん生み出すような、いわゆるわかりやすい成果が【成功】なのではなく、これから価値が大幅に変動していく時代に、自分を信じ、地に根を張れるような自分だけのオリジナリティを育んでいくことが【成功】なのではないか、と思うようになっていきました。


前置きが長くなりましたが、今回の記事では、世界で勝負するデザイナー・竹鼻良文と東急ハンズを歩いてみたら、“自分のオリジナリティを育んでいきたい衝動に駆られ、初動を起こした話” を生々しくお伝えできればと思います。




1:『ハンズは最上階の7階から下へくだるべし』


突然ですが、はじめて竹鼻ハンズプロと、渋谷ハンズを訪れた日のこと。「入店時のご注意ですか?」というスピード感で、「まずは、」と告げられたのが、この一言でした。しかも入口から入って正面のエレベータではなく、B1A階のエレベーターを指定される流れ。竹鼻ハンズプロによると、正面エレベーターは入店者で混み合うことに加え、最上階の7階まで上がれないそうなのです。

この時には、わたしはまだ、「いやいや、何をそんなに急ぎますか、竹鼻さん。時間はありますから。」と悠長に構えておりました。この先、どれだけの時間、ハンズに居続けることになるかも、知らぬままに…


チーン(7階へ到着)。


「まず、カゴを持つこと。」

次の司令がありました。カゴはまず最初に手にする。ハンズは、どこの階でも精算ができるようになっています。いつでも気になる商品を気兼ねなく放り込んでいけるようにまずはカゴを持つ。そうすることで、効率よく買い物ができますし、発想の種をとりこぼさないことになるそうです。これから、ハンズデビューする方、7階についたらまずはカゴ。ご徹底ください。

ちなみに、皆さんは、渋谷東急ハンズの7階へ行かれたことがありますか?わたしは初めて訪れました。もちろん渋谷ハンズへ入店したことはあります。でも、ハンズへいくときは「何を買うか決まっているとき」だけでした。何か買う物の目星があり、フロアマップでその物が売っている階を確認し、その階へ向かう。多くの方がそういう【目星ありdeハンズgoスタイル】利用なのではないか…と思うのですがいかがでしょう。そういう方はきっと、7階へ足を踏み入れたことはないのでは…?


7階は、こんな空間でした…(店内写真は掲載不可ですので、渋谷東急ハンズHPのフロアガイドより)

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カフェなんてあったのね…!園芸用品や植栽もあり、窓も大きく、明るく開放感のある気持ちの良い空間で、おもわず驚きました。ハンズにこんなフロアがあったなんて…!


ここで竹鼻ハンズプロ。「理化学用品」や「実験用品」のコーナーへまっしぐら。え、実験用品が必要なサイエンス系チームでしたっけ、クレイジータンク?と思っていたところに、


竹「ここに置いてあるものはモノじゃない、素材なんだ」


何かの悟りを開いたように仰る竹鼻ハンズプロ。実際に前回記事でもハンズが「すべての商品をお客様の生活を豊かにするための“素材”であると考え、お客様のご要望になんとかしてお応えしたいという思いで…」と事業内容に書かれていることはお伝えしているかと思います。ハンズに置かれている商品そのものを、素材として見方を転換すること。それがハンズならできる、とプロは語ります。


実験用のビーカー、スポイド、脱脂綿を置くトレイ、ルーペ…さまざまなモノと対峙し、それらを素材として見方を変えたとき、それらは何に見えてくるかーー?まさにハンズのあたらしい楽しみ方の世界の入り口に、わたしが立たされた瞬間だったのです。



2:『素材から発想しよう』


その日、私たちはクレイジータンク新商品のアイディア構想のために、ハンズを訪れました。構想は十分に詰め切っているものではなく、まさにハンズを歩き、ハンズに並ぶ商品の数々を見ながら、発想していくことが必要でした。

7階から下ると、6B階や6A階には、手芸・クラフト関係の商品が多数売られています。例えばボタンやリボン、布、ファスナーetc...それらは確かに一般的に見ても「素材」と呼ばれるものたち。


竹「一般的に使われている方法ではない手法でそれらを使えないか?また、その素材から別の何かを連想したりしないか?そういうことを繰り返して発想していくんだよ」


ついつい、私たちはその素材モノにも固定観念を持っていませんか。これはボタン、これはリボン、これはアクセサリーパーツ。そのモノに決められた利用方法があるかのように、それでしか使えないように思い込んでしまっている。でも、それらをもっと違う視点で見ることはできないか。至極シンプルな転換ですが、ボタンもリボンもアクセサリーになったり、アクセサリーパーツはアクセではなくインテリアの商品の部品にしたり。


発想の転換モードが、すこしずつ自分の中でスイッチONされてきた感覚で、改めてハンズの店内を見回してみると…そこが宝探しをする場所のように見えてくるから不思議です。それまでは、決まったものを買いにくる場所だったのに、むしろ「このモノは、どうやったら違う方法で使えるだろうか?」と棚の隅から隅まで食いるように見るようになっていました。



3:『わたしもなにかをつくってみたい』


フロアを移動するごとに、竹鼻ハンズプロは次から次へと発想の種を集めていきます。それはモノの見方や使い方の変換、だけに止まらず、【ストーリー】や【世界観】も交えて発想を深めていくのです。

竹「この鶴のパーツでアクセサリーを作って、瓶のなかにつるして、鶴が空を優雅に飛んでいるように見せたら、その世界観を身につけるような気持ちになるよね。耳につけているときも揺れて、まるで鶴が飛んでいるみたいだよね」

色々な商品素材を見ながら、まるでラジオ番組のDJかのごとく流暢に、次々に溢れる発想を口に出し続ける竹鼻ハンズプロの横で歩いていると、「わたしもなにかつくってみたい」という気持ちがフツフツと。ハンドメイドや手づくり系のことが苦手で、家庭科の先生から波縫いをしつけ縫いと間違えられるレベル感だったこのわたし……そう、そのわたしが、「なにかつくってみたい」ですって…!そのような気持ちになったことがほんとうに驚きでした。


竹「ゥイ〜ネ〜!!!!いいよいいよ〜!好きなものを作ってみなよ〜」


との後押しもあり、まずは発想云々まで追いつかなくても、自分が欲しいと思うものを作ってみようと思いました。そこで買ってきたパーツで作ったアクセサリーがコチラです。ドン。

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作品名:『あなたは太陽』


すこし恥ずかしいのですが……これが、わたしの人生はじめての作品です。ハンズでパーツを選ぶときには、好きなタイプのものを直感で選びました。しかし、ハンズを歩きながら常時竹鼻ハンズプロの発想トークを聴き続けたわたしは、帰宅後に、改めてモノを見つめ、発想してみようと思ったのです。すると、このグレイッシュなストーンがまるで月のような奥行きのある色味だと思い、するともう一つのブルーのパーツを地球に見立てられるのではないか、と発想。そこから「月と地球を照らすあなたは太陽です」というメッセージを込めたアクササリー作品にしようと考えるに至りました。



後日、この作品と、そのコンセプトについて、竹鼻ハンズプロに伝えました。


竹「モノからインスピレーションをうけてコンセプトやストーリーを考えたのはとてもいいね!たとえば僕なら、こう考えるかな。この月と地球はくっついているでしょ?本来離れているはずの2つがくっついている。基本は離れていて会えないけれど、1年に一度織姫と彦星が逢えるときのように、きっとまた会えるから、これはあなたが持っていてね、と片方のイヤリングを離れてしまう誰かにプレゼントする。そしてもう片方は自分が持っておく。次にまたふたりで会えるとき、互いにそのイヤリングを身につけて会おう、と伝える。だから月と地球はくっついているんだ…みたいなストーリーが浮かんだなぁ。」


深い…。なるほど…。私は転勤族で、ちいさい頃から仲良くなった友人との別れをたくさん経験してきました。だからこそ、この「月と地球」のイヤリングを、別れてもまた必ず会いたいと思う友人へ、互いに片方ずつ持つ形でプレゼントできたら、それは単なるアクセサリーではなく、「約束」や「友情」をも含んだ印象深い商品になるのだろうと思いました。アクセサリーひとつをとっても、こんなにもたくさんのコンセプトやストーリーを展開でき、その発想次第で、誰かの想いに寄り添い深く愛される商品になるのだと改めて感じた次第です。



4:『発想から商品へ、そして、世界観を届ける』


さて、時は、ハンズへ戻ります。各フロア、棚をくまなく見ていたわたしはだんだんと頭痛がしてきました。足は完全に棒状態…それくらい各フロア集中してみていたのだと思います。


そして、ステーショナリーフロアで、本に挟む栞を発見。その瞬間に、ふたりで『栞をイヤリングにして持ち歩くのは面白いのでは!?』と大盛り上がり。まさにモノから発想が降りてきた瞬間でした。その瞬間の竹鼻ハンズプロの目の輝きはすごかったです(笑)夕方の空に輝く一番星のような光を放っていました。


そこからもう一度階段を駆け上がり、アクセサリーパーツ売り場へ戻ります。そこで使い勝手や重量など色々検討しながらパーツを選び、これをクレイジータンクならではの【発想の作品】として、最終的な形まで作りこんでみよう、ということになりました。


その作品がコチラ。

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『本好きのためのイヤリング』

earring for book lovers

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まさに、読書好きな方が、途中で読書を止めるときに、片方の耳からイヤリングをとって、本に挟む。その姿がいままでにない美しさを演出する、とイメージしました。

作品が、できたぁ!となったあとも、竹鼻ハンズプロは、コンセプト通りに作品ができた、で終わりではないよ、と言います。最終的に作品を手にする方に届ける際、その“世界観”までも届け切ることが重要とのこと。もちろんその世界観を伝えるための前段階として、写真やことばなどの“伝え方”も重要。それらすべてが総合的に“クリエイティブ”ということだ、と。


たとえば、『本好きのためのイヤリング』では、最終的な包装は、ここまでやるべきだと、作品の世界観を作り込みました。

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箱、和紙でつくった熨斗、イヤリングケース、アクセサリーボックス。これらすべてが私たちがイメージする「本好きのためのイヤリング」の世界観なのです。

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また、この写真の撮り方や色味も含めて、総合的にコンセプトを軸に設定しています。まさに商品を作る・作り上げるというクリエイティブ作業は、ここまで複合的にやっていくことなのだと、竹鼻ハンズプロから学んだ事例でありました。

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本好きのためのイヤリングは、この作品を発想の種として、いま新しく“さらに”コンセプトを深めた商品を製作しています。みなさんへお届けできる日がいまから楽しみでなりません。



5:竹鼻ハンズ名言集

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