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舞台『野球-飛行機雲のホームラン-』を観た話。



日本から『野球』が消えた時代があった。

1944年、夏。

甲子園優勝候補校・伏ヶ丘商業高校。
甲子園出場有力校・会沢商業高校。

代打も死球も認められない"お国"のためのルールの中、最初で最期の彼らだけの『甲子園』が始まる――。

賢明に、ひたむきに。
これまでの人生・こらからの結末。
全てをボールに、バットに、握り込めて空へと託した。

18人の少年たちトケイソウによる、記録より記憶に残る物語。



6年ぶりの再演ということで観劇。
初演は『全国高等学校野球選手権記念大会』の『100回目』に当たる2018年。パンフレット等に記載はあるが、今回の再演は『コロナ』が関係しているであろう事ははなんとなく感じていた。

結論から言うと、『ラストゲーム-最後の早慶戦-』があるし、創作ではあるけれど、日本の戦争の記録の1ページとして残っていてほしい作品。




※舞台写真撮影可能の時間帯に撮影した写真です。



西田大輔氏の手掛ける作品としては、"おとなしい"部類になる。
※音と照明が派手で、大がかりな演出が特徴的であるため。

それでも、投げたボールを『光』で表現する。
平和と不穏の影を『ボールの軌跡』や『飛行機/戦闘機』で表現する。
※また本作は空を見上げる描写が多い。
本物のボールが投げられ、転がる。土煙が上がる。
開始5分前のアナウンスに『サイレン』を使用する。
氏が作品の雰囲気を大事にしたい、そんな『細やかなこだわり』が静かに生かされていた。

ただ、『衣類の汚れ具合』が初演はじわじわ汚れていくのに対し、今回は顕著だったような、最初から汚されていたような気がして少し寂しい気持ちを抱いた。あと初演の時、本塁打の演出をボールを上から落として役者がキャッチする演出があったような気がしたが無くなっていた。
気のせいだろうか。


初演のパンフレットと”暑中見舞い”。



本作は、伏ヶ丘と会沢・二校の試合シーンの合間に選手各々の回想が組み込まれ、主人公・穂積均の特攻までが描かれる物語。

『試合開始!』から涙腺が緩む。
OPで笹川美和さんの『蝉時雨』で大洪水。
SNSで6年前から語られていることなので包み隠さず言うと、『特攻した選手たちの叶えたかった夢』が登場するという…泣き叫ぶしかない。


※笹川美和さんはKIRINの小岩井のオレンジジュースのCM『笑』で馴染みある人が多いかも。
作品内では主題歌『蝉時雨』以外にも『誘い』『サンクチュアリ』『止めないで』『光とは』が流れる。



ホッとできるシーンも勿論あって。
やはり会沢八番。
俊敏性・洞察力・顔がいい。(あと、かたつよ)
久しぶりに聞けて、「あぁ『野球』だ」と破顔。

会沢野球顧問の菊池先生は…今回くどかったかなと。
後の事を考えると納得のいくシーンではあるのだけれど『物語進まないから早くどいてくれ』と思ってしまった。

伏ヶ丘八番も初演から印象に残っていて。
所謂『二世』の子で、『国(日本)のために戦う』という事で理不尽な叱責を受けるシーンがある。『自分の国は"伏ヶ丘"』という言葉を返答として残すのだが、元特攻隊の人間も『あまり国のためにとかは思わなかった。やはり家族かな。』という事を言っていたので納得しかない。※祖父です。

あとは穂積兄弟は、語ると陳腐になるので、均役の橋本祥平氏の爆発力が物凄かったなとだけ。

更に畳みかけるように伏ヶ丘の静と会沢の均、幼馴染コンビの最後の掛け合い。1/18の命を任せられたと言っても過言ではない静に見送られながら、懐かしくバットを振った後の均の叫び。ここは初演も再演も嗚咽が止まらなかった。※初演の方が静君食い気味の演技だったかな…という気持ちはある。


舞台のギミックとして、白板後方に"板"が見えると思う。
最終局面では板の数が増え、最終的に『戦闘機』の絵が完成する。
上から戦闘機の絵が下りて賛成した時の”絶望感”はいつ見ても凄まじい。


日本の"大本営"の無茶ぶりは『不死身の特攻兵』や『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』といった創作で目にした人も多いかと思う。
それこそ敷島少尉が呉爾羅に会わなかった世界線の話。

生き残りの特攻隊員の話だったか『人の犠牲ありきで、命を「兵器」にする作戦を組み込む事は作戦として終わっている』と語った人がいる。※参考に諸外国は"複数人に致命傷を負わせる"戦い方が多いらしい。

『最後の早慶戦(出陣学徒壮行早慶戦)』に出場した選手の中にも勿論、特攻隊になった人たちがいる。

作中でも『がんばれ』や『万歳』の意味が不穏になるように。

バットを握った手が操縦桿(歩兵銃)を握る手に。
ボールを握っていた手が手りゅう弾を握る手に。

そういう人たちがいたことを、そういう時代があった事を風化させないために、この物語が今後も長く人の心に残り、再演されることを願う。



余談で。
元特攻隊の祖父は震洋(ボート)じゃなく零戦(飛行機)がよかったそう。
そう考えると、会沢のみんなで夢を語るシーンは、年相応の少年たちだったのだなと。ちょっと微笑ましいなと思てしまった。


あと初演のランダムフォトがあったのだけれど…。
誰が誰だか未だにわからない…(わからない…)
自己申告ありなので、誰か…よろしくお願いします…。



ここまでご覧いただきありがとうございます。
今日も良い一日をお過ごしください⚾🏟






…推しより先にイケメソに甲子園を見せてしまった…無念。
ごめんね。今度機会あったら行こうね。






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