
理由とバンソウコウ
私の憧れていた建築家・内井昭蔵先生の言葉にこんなものがある。
理由とバンソウコウはあとからつけるもの
私は設計士になりたいと思っていた高校生の時に、ある建築雑誌で内井昭蔵先生のことを知り、彼が教鞭をとっていた大学に入学した。でも、入学式直後のオリエンテーションで先生の口から出たのは「私がここで授業をするのもあと1年なんですけどね」。。先生は退官の年を迎えられていた。もちろん高校生だった私にそんな情報が入るわけもなく、内井先生を目がけて入学した私は愕然とした。
1年生の必修の科目を取らず、上回生の選択科目だった内井先生の授業を受けた。夏休み前の学期末試験を受け、終了後「みなさん、ではまた」とお決まりのサスペンダー姿で教室を去っていったのが先生とのお別れとなってしまった。その翌月、先生は急逝された。
「理屈の上でつくられたものにおもしろさはない。でも、どんなおもしろい建築を考えついたとしても、建築という社会的なものをつくる以上、キチンと理由を説明できなくてはいけない。バンソウコウはケガをする前には貼らないでしょう?どちらもあとからつければいいのです」
先生はそんなようなことをおっしゃっていたように思う。
デザイナーとなった今の私が大切にしている言葉のひとつ。社会的なものをデザインするマインドとしてとても重要なことと思う。