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連載【仕立て屋の繕う日々】

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毎週火曜日更新。ドレスの仕立て屋が綴るおしごとエッセイ。 だいたい1000字程度で、さらっと読める日記風エッセイです。
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記事一覧

【繕う日々】いま、青森にいる。

 わたしはいま、青森にいる。  研究調査のために青森に来ているのだ。今日はいちにちじゅう…

【繕う日々】ドレスを縫うときにだけ発動する謎の特技

 ドレスを縫うときだけ、両利きになれるという謎の特技を持っている。  わたしは右利きなの…

【仕立て屋の繕う日々】ドレスと学問は両立できるか?

 「ドレスと、学問は両立できるか?」  ここのところ、そんなテーマをかかげて生きている。…

【仕立て屋の繕う日々】絵を描くこととは

 絵を描くことについて書いてみようか。  わたしは絵を描くことが大好きだった。  だから…

【仕立て屋の繕う日々】まちのミシン屋さんよ永遠に

 ある日、相棒のロックミシンが使えなくなった。  ロックミシンとは、端かがりミシンのこと…

【仕立て屋の繕う日々】マリー・アントワネッ友

 大人になったら、いつかお城から招待状が届いて、舞踏会にお招きされるに違いない。子どもの…

【仕立て屋の繕う日々】羽を織る

 コロナのとき、アトリエを出て自宅でしばらく仕事をしていたことがあった。二階の奥の扉をタンと閉め、部屋に籠ってドレスをつくった。わたしは仕事に集中すると、まわりのことがわからなくなる。なんなら子どもが居るということでさえ、ふと忘れてしまうようなときがある。  そんなわたしを見て、娘は言った。 「ドレスをつくっているときのお母さんって、昔話の『鶴の恩返し』の鶴みたい。戸を閉めて、羽根を抜いてドレスをつくってる」  たしかに、その感覚はあるかもしれない。ドレスをつくるとき、

【仕立て屋の繕う日々】魔法はないけど、ある。

 一瞬でドレスをつくる魔法なんて、ない。  シンデレラの魔法使いは、ビビディ・バビディ・…

【仕立て屋の繕う日々】この場所に居ますと言い続ける

 毎朝アトリエに行く。ウェディングドレスを繕うアトリエだ。  ほかの用事で、作業ができな…