【仕立て屋の繕う日々】羽を織る
コロナのとき、アトリエを出て自宅でしばらく仕事をしていたことがあった。二階の奥の扉をタンと閉め、部屋に籠ってドレスをつくった。わたしは仕事に集中すると、まわりのことがわからなくなる。なんなら子どもが居るということでさえ、ふと忘れてしまうようなときがある。
そんなわたしを見て、娘は言った。
「ドレスをつくっているときのお母さんって、昔話の『鶴の恩返し』の鶴みたい。戸を閉めて、羽根を抜いてドレスをつくってる」
たしかに、その感覚はあるかもしれない。ドレスをつくるとき、