頭のリハビリ〜闘病備忘録10
身体を拘束されて過ごした次の朝、看護師さんに起こされてオムツを脱がされ汚れを洗ってもらった。そのときには身体の拘束も外されて、とりあえず最悪の状態からは開放されたようだ。が、ベッドにはセンサーがついていて少しでもベッドから離れようとすると、すぐに看護師さんが飛んでくる。トイレに座りたいときには必ずナースコールしてくださいと、まさに病床六尺の世界に閉じ込められた感じだが前夜の状況よりは遥かに快適だ。看護師さんの見ているところでパンツを下ろすことなど、今までの入院で慣れてしまって屁とも思わなくなった。
昼には食事も出た。思ったよりも食べることができたので自分でもびっくりだった。昼ご飯を食べて少ししてから「今からリハビリを始めます」と若い男性が入ってきた。この辺りの展開の早さにもずいぶん慣れてきたが、毎回、もう少しのんびりさせてよと思ってしまう。今回のリハビリは頭のリハビリだった。少し呂律が回らないところがあるくらいで普通の会話は冗談に笑えるくらいになっていたけれど、リハビリが始まるとまず引き算ができない。100-7は?と言われて1分ほど悩んで93と答えると次はそこから7を引いてと容赦なく聞かれる。もうここでお手上げだった。次は携帯電話とボールペンと体温計を見せられて、それぞれこれは何かを聞かれる。それくらい分かるさと答えたら、では何を見たか覚えておいてと言われて、後で何を見たか聞かれる。変な話ずいぶんと時間が経った今覚えているのにそのときには忘れているのだ。後は、知っている限りの動物の名前をいくつ言えるかとか、そんなテストばかりやらされて、終いには自分でも腹が立ってきた頃にようやく頭のリハビリから開放された。そして拘束された次の夕方にはもう大部屋に移動させられる。トイレはポータブルトイレでしなければならないので特に大きい方をするときには結構気を使うことになる。入院中は朝の検温の時間にその日の日付と名前とここはどこかと毎日聞かれた。頭のリハビリと並行して身体のリハビリもすぐに始まり、それでもトイレに歩いて行くお許しが出たのは退院の1日前のことだった。今回は1週間足らずの入院だったが前の入院から間がなく、筋力も元に戻っていない状態だったので自宅に帰ったときには身体はへとへとになっていた。自宅に帰ってからは頭の方は順調に回復しているが落ちてしまった筋力を戻すには相当の時間がかかるだろう。今回の身体拘束、小便の垂れ流し、こんな思いはもう2度としたくない。