ニーズが先か、シーズが先か。というのは立場により変わるけど、最後は交わる。
先週、DIGITAL X様で書いたコラム「ロボットの魅力と魔力がビジネスを見誤らせる」が、割と多くの方に読んで頂いているようです。ありがとうございます!!
コラムの内容をザックリ言うと、
● 目の前で物理的に動くロボットというのは、なぜか人を魅了し、いいね!いいね!とロボットを使う側に振れやすいのですが、ロボット活用と言うのは、決して目的ではなく、手段ですよね、ということを忘れないようにしないと、結局は使われない。
● そのためには、現場をしっかりと観察・分析することが重要だし、その解決手段としてロボットを作る場合にも可能な限りシンプルにしていく必要がある。
という感じです。このことに対して、当然、好意的な反応と、否定的な反応があるわけですが、今回はこのコラムの補足的な書きたいと思います。
頂いた意見としては、「もっと技術オリエンテッドにした方が良い」「頑張ってロボットを入れようとするからロボットビジネスが生まれる」という趣旨が多い気がします。
もちろん、いろんな意見が合って良いし、私もコラムとは逆の技術志向の趣旨の発言をすることも多々あります。現在、私は、会社の中では、ロボットの事業を行う部門とロボットの研究を行う部門の両方を担当させて貰っています。事業部門の立場になっているときにはコラムに書いているようにニーズ志向というかちゃんと困りごとを解決できるベスト手段なのかということを考えますし、研究部門の立場の時には、ニーズはもちろん調べますが、「自分たちの持っている技術をもっと伸ばせばこんなことができるようになる!」「世の中にないこんなスゴイ技術を作ってやる!」とも思っています。
どちらかが正解とは思っていませんが、立場によってスタンスが異なるというのは、あるべき姿なのかもしれません。
私のように大企業の中における「事業側」と「研究開発側」というだけの立場の違いというものあると思いますし、もちろん「作る方」の企業と「使う方」の企業という立場の違いもあります。さらには、同じ作る企業でも、「大企業」と「ベンチャー」でも全く違うと思いますし、結局は持っているアセット(資金力や技術の尖り具合・領域の広さ)によっても、どのように勝っていくのかという戦略に差が出てくるため、どのようなアプローチを取るかは全くことなってくるでしょう。
そして、「時間軸」というのも大事な要素かと思います。直近での話なのか、5年先の話なのか、というのでも考え方は異なってくるでしょう。特に、ロボットの場合には、まだまだ低コストでできることには限りがあるので、少し長期視点でロボットありきで色々と考えてみることも重要かと思います。私自身も以下のようなNoteを書いたこともあります。
富士フイルムで事業の転地に大成功した戸田CTOのお話を伺ったときに、『新しいことをやるには「やりたい」「やるべき」「やれる」の要素が揃うことが重要』という旨のお話をされていましたが、「やりたい」という想い・情熱・拘りが最初にあれば、お客さんがいる・ニーズがあるという「やるべき」や技術などのリソースがあるという「やれる」の順序は様々なアプローチがあるのでしょう。
むしろ、どういうことをやりたいのか?という最初のビジョンというか目指すべき姿のセットこそが、最も大事とも言えるかと思います。
ただし、どのような場合にもおいても、最後お客さんに届けるとき、製品として世の中に出すときには、ユーザの目的に対して、本当に手段としてベストなものになっているのかという視点で、ロボットの魅力を引き出しながら、魔力と戦う必要があります。
いつの間にかロボットの魅力に惑わされ、価値のないところに拘ってしまったり、逆に価値を低下させてしまうということは、本当によく起こりがちです。
そして、お客さんは、世の中に存在しないモノに対して答えを知ることは多くの場合ないですが、少なくともこちらが提示した答えがイケてるか、イケていないかは非常にシビアに判断されます。
ニーズから始まろうが、シーズから始まろうが、それらは最後には交わるはずです。というか、交わらなければならないものです。
2つの要素が交わっていない段階で妄想によって結びつける。それが「やりたい」という想いなのかもしれません。
では、また来週~
安藤健@takecando
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