2023年振り返り① クリラボ活動で種蒔き始める
転職して一年半経過して思うこと 志が消えないように
新規事業専属の部門に転職して一年半が経ちます。組織の構造や仕事のやり方なども見えてきつつある状況の中、最も重要だと感じたことを書きます。
それは 心に宿った火を消さない ということです。
いわゆる大企業の新規事業専属部隊に所属しながら思うことは、大きな組織の構造の中で、自分にとって心の底から突き動かされるものを押さえ込んでしまっていないかを自問自答すると、割と抑えてしまっていたかもしれません。組織が目標にしているKPIを達成するために自分が存在しているのか、TAKEBONという一人の個人が大切にしている価値観に基づいて全て判断していく必要がある、ということに気付かされました。さらには、自分の意志は常に発信しないと誰もその存在に気付いてはくれないので十分注意しなければいけないということです。
大規模な組織の中にいると、自然と組織の同調圧力のようなものに負けてしまいそうになります。しかし、志の火が消えてしまってはいけないんですね。組織の一つの歯車として機能して行く方が良いのか、それとも個人の意志を軸に主体的に組織に働きかけて影響の輪を広げていこうとするのかでは、全くその発想法は違うと考えています。私は主体的に自分が思うように動いていきたい、WILLドリブンで働きたいので、所属する組織の中での役割は勿論ありますが、はみ出す役割も同時並行的に持ちながら、主体的な取り組みを進めてきました。
自分のWILLを発信するには、それに共感や応援してくれる人に向けた言語化が重要
私がやりたいことは人と組織の創造性をエンパワメントすることです。人間の可能性を最大限に引き出す、創造環境をデザインすることです。このことは常にどこにいても変わらないし、これが自分の生き甲斐であると考えています。なので、まず自分自身に旗を立てました。今年は手始めに前職でもやっていたクリラボ活動を始動しました。
Creative Doing LAB始動
創発環境大臣
Cheif Hirameki Officer TAKEBON
こんな旗を立てて活動をしてみると非常に面白いことに応援してくれる人が増えてきます。狙ってやっていきたいのはChief Design Officer(経営視点でデザインマネジメントする役割)ですが、そんなこと言っても難しいのでCHOと名乗ってみました。
「TAKEBONさんが面白いことやっているから一緒にやりたい!」と言ってくれるメンバーが増え、「デザインは新規事業に重要なものだから、秘密結社作ろう!」とか、「うちの会社には必要な活動だと思うからサポートします!」と言ってくれる人も出てきました。ボトムアップの活動は自然発生的に共感の輪が広がって、渦のように人を巻き込みながら、ダイナミックな流れを生み出していける、そんなイメージを持っています。社内の有志を募ってキックオフを実施しました。
組織の上の方の人たちを巻き込みながら、共感と応援を広げていく
今ではクリラボ活動が社内のあらゆるところに広がり、発表したり、議論する場が増えてきました。外部のクリエイターとの繋がりから、根掘り葉掘りブランディングについて聞く講演会も年明けに開催できる運びとなりました。コミュニケーション課やHR関係の方もサポートを自然としてくれるようになりました。
このような草の根活動を何故しているのか?
と思う方もいらっしゃるかもしれません。新規事業を生み出して行くためにはクリエイティブカルチャーが必要だと心の底から信じているからです。博報堂は50%が雑談しているとか、アップルのスティーブ・ジョブズもカルチャーが重要だと言っていましたが、何かに未知なるものにチャレンジしていく冒険家にはクリエイティブマインドが必要だと思うからです。
失敗も恐れず常に前を向いてチャレンジし続けるには、集まった仲間が向かうベクトルは違えど、共通する価値観や重なり合う価値観を持っていないといけないと思うんです。企業の価値観醸成には、パーパス経営とかMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)が重要とか言われますが、最も重要なことは言語化されたものが、現場で腹落ちしているかどうかです。
現場で抱えている課題を洗い出してお互いに知恵を出し合ってブレストしながら解決策を共有して行くことがクリエイティブな活動になるということに気づきました。何もデザイナーがやっているデザインだけがクリエイティブなわけではありません。日常の仕事や生活の中から、違和感をキャッチして、ちょっとした創意工夫をしていることが全て創造的な行為であるということです。
新たな波を作るにはボトムアップとトップダウンの両軸が必要
このような草の根活動をしながらも、トップにも掛け合い自分の考えを主張して行くことも重要です。ボトムアップの活動は鶴の一声でかき消されてしまう可能性もあります。経営陣の意志と正反対のことをやっていては現場も混乱してしまいます。「この活動は会社にとっても重要な活動だから後押ししているよ」とマネジメント層の理解も得ながら、バックアップがある状態で続けて行くことが何より主催する側の心理的安全性を担保するためには重要だと考えます。
ボトムアップとトップダウンを同時並行的にやっていきながら、お互いにつながり合う部分をデザインして行くことが組織内での有志活動を成功させるために重要なことだと考えています。
組織の文化に染まらずローカライズしながら浸透する活動
私が入社する時に人事の人から言われた言葉があります。
「組織に染まらずに創造活動を続けてください」
こんなことを確か言われたことを記憶しています。ある組織に所属し一定の時間一緒にいると染まってしまうことはよくあると思います。昔からある風習とか文化に染まってしまう、みたいなことです。創造には一旦今あるものを壊して再構築するプロセスが重要です。自律創造的に、新たな事業をデザインして行くには、過去の風習を一旦捨てて、価値観も変えていかなければいけない、ということを暗に示されたのだと思います。
そのために組織の中にどっぷり浸かるのではなく、一定の距離感を保ちながらも貢献の精神は忘れずに、役割を自ら作り出して、自律的な提案活動を続けて行くことが求められてきました。とはいえ外部からきた人の意見をそのままの言語で主張しても通じることはないです。組織に所属する人の考えや、価値観、特性、知識レベルに合わせて、ローカライズしながら自分の意見を言わないと、理解は示してもらえませんし、共感も生まれません。そこは割とかなりしっかり言語化を考えながら、提案をしています。
誤解を与えない表現を言語化する難しさ
マーケティングをしているとよくわかりますが、ちょっとした言い回し一つで人によっては全く正反対の理解をされてしまったり、誤解が生じてしまい、共感されないことはよくあります。同じように新規事業の有志活動では表現方法を少しでも間違えると、共感ではなく、嫌悪を抱かれたりしてしまいます。八方美人になる必要はありませんが、自分たちの主張や意見を正しく伝え、正しく理解してもらうためにも、言葉選びは重要なんだなということ学びました。どんな人を最初に巻き込んでいくか、誰に参加してもらうか、活動への参加レベルの階層をどう設計するか、考えるポイントは山ほどあることを痛感しました。
如何に共感してもらうか?
如何に応援してもらうか?
熱狂的なロイヤルファンを増やして行くための施策はマーケティング活動に通じるものがあるなぁと実感しています。
最終目標はデザイン経営、デザインマネジメント
この取り組みの最終的なゴールはデザイン経営をして行くことにあります。デザイン経営とは経営にデザインを活用して行くことです。特に新規事業を専属でやっている部門としては、デザインは欠かせないツールとなります。ユーザーの未たされていないニーズを探し出すニーズアプローチと、企業の独自技術をシーズアプローチでコンセプト化したものをマッチングするフェーズでは、デザインの力が必要だと考えています。このデザイン力を発揮するためには組織自体がクリエイティブマインドで溢れている必要があると考えています。
あるブランドマネージャーの方に相談した時には「デザイン経営をデザイナー不在の企業にインストールすることは難しい」と言われました。本当に難しいと思いますが、むしろそれぐらい難しいと思われていることをやってのけてしまえる方がワクワクします。今後は社内だけでなく社外の方々も巻き込みながらクリラボ活動からオープンイノベーションを生み出していきたいと考えていますので、是非とも皆様宜しくお願い致します!!