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紅型の文化を届けるための商品開発。「琉球紅型の手づくりピアスキット」

さまざまな、この土地だからこその文化が残る沖縄。沖縄、実は民藝的な運動が盛んな土地だということはご存知でしょうか。やちむんと呼ばれる焼き物や染色系の工業品 ー。

そんな沖縄民藝のなかでも、一際存在感を放ち続ける「紅型」。「びんがた」と読みます。

琉球王朝時代、ハレの日の着物の技術として発展した紅型。長い歴史を持つ紅型は、現在にまでその技術を発展させながら、沖縄のトラディショナルとして引き継がれています。

今回、紅型の新しい出会い方を提案するため、ともに商品開発に挑戦させていただいたAyumiさんも、トラディショナルである紅型に自分という個性を注ぎ込み、引き継いでいるひとり。Ayumiさんのお仕事におおきな感銘を受けています。

沖縄のトラディショナルである紅型という文化に敬意を払い、新しい紅型との出会い方、楽しみかたをつくることができれば。そんな気持ちから「琉球紅型の手づくりピアスキット」は誕生しました。

Ayumiさんとの出会い

沖縄で多くお仕事をさせていただくようになってから1年と少し。ずっと、沖縄だからこその商品開発と販売にチャレンジしたいと思いながら過ごしていました。
そんな動機を持って訪れた県産商品の展示会で、カラフルな、「サラダのような日々の彩りを」というニュアンスのアクセサリーたちを展示していたのがAyumiさんでした。「コンセプトまでつくられた商品で素晴らしいな」と拝見し、声をかけたのがはじまり。


「展示で忙しいのでこちらから連絡しますねーー」とお返事いただき、数ヶ月後、ほんとうに連絡が来て向かった浦添のカフェ。「普段こんなのをつくっているんです」とSALAD SALAD SALADのアクセサリーを見せてもらったあとに机に広げてくださったのが、紅型の作品でした。

なんて魅力的な………!SALAD SALAD SALADの作品をどう取り扱うかというイメージを持って足を運んだ打ち合わせ、机の上に広げられたAyumiさんの紅型の作品はあまりに魅力的すぎました。


テンションが上がって気合いの入ったInstagramの投稿をつくってしまった


机の上に広げてくださったAyumiさんの紅型の作品を見たときに、「ほんとうに力のあるクリエイティブだ……!」と感じいってしまいました。紅型という伝統的な手法であることは間違いないのですが、その伝統のうえに、Ayumiさんがどのように世界を認知しているのかが広がっているのです。

このときに、商品開発をおこなうというモチベーションから、自身の感性というフィルターと共存しながら伝統を受け継ぐ紅型作家のAyumiさんの、アーティストとしてのアウトカムをともにつくることができればというモチベーションに切り替わった感覚がありました。

商品ができるまで

Ayumiさんのアーティストとしての魅力が強く表現されている紅型をテーマに商品開発が決まったあとに考えたことは「どんな商品にするか?」でした。

単純にアクセサリーを企画して販売する、アパレル系の商品を制作する…… 様々なアイデアを話しましたが、「いまは紅型って、紅型というものをすでに知っていて、関心があるひとにしか届いていない感覚がある。紅型をいままでは届けられなかったひとに届けられたら」という会話がありました。

現在は紅型にふれる体験として「購入」と「使用」しか存在していないのだとして、買って使うだけではない体験をつくるメディアとして商品にできないかを考えはじめ、出たアイデアが「自分でつくる紅型のアクセサリーキット」でした。

コンセプトが決まってからは、具体的な商品の開発にすすみます。最適な資材は?Ayumiさんの紅型のなかでもどの作品を使うのがいいだろう?作品のなかで切り抜くベストなアングルは?布は何cmに調整するのがベスト?資材の卸先は?

ベストな「自分でつくる紅型のアクセサリーキット」の形を探し、さまざまな試行錯誤の末生まれたのが紅型のアクセサリーキットでした。



こんなふうに楽しんでもらえたらいいなと思っています

商品のなかには紅型の布とピアス台、針と糸がなどが封入されており、パッケージを開け、道具を取り出し、裁縫を含めたプロセスをご自身で楽しんでいただけるようになっています。


紅型が好きな方はもちろん、クラフトが好きな方にも紅型という沖縄の文化が届くとこんなに嬉しいことはありません。

また商品は、もうその取り組みやプロダクト自体がそのひとの人生を表現しているよなあ、言葉にならないなあと感じるものを取り扱い、その感情をそのままブランドの名前とした「言葉にならない」というtagラインで販売していきます。Ayumiさんが作品の着想を得ることが多い、首里で撮った写真を使ったパネルと一緒に、共感くださるお店に並べています。

現在取り扱いは、本部町伊豆味のやんばるの森のなかにあるこれもまためちゃくちゃ素敵なお菓子屋さん、ヒムベーレさんで販売いただけることが決まりました。

こんなにおおきくスペースを置いてくださり!うれしいーー


置いてあげてもいいよーーというお店や、共感くださるお店のみなさま、バイヤーの方など、ぜひお気軽にご連絡いただけますとさいわいです。

商品を開発するなかで感じていること

今回の商品開発のプロセスは、ぼく自身にとってもとてもmeaningfulなものとして体験されました。頭に浮かぶことをいくつか。

Ayumiさんのアーティストとしての在りかた

Ayumiさんの人柄に惹かれる気持ちが大きくなる商品開発のプロセスでした。Ayumiさん、ほんとうに、ひとつひとつの出来事を丁寧に味わう方で……!頻度高く打ち合わせの時間を頂戴するなかでいろいろなお話を聞かせていただき、Ayumiさんの日常に起きるすべてのことが意味があるなーーと思いながら体験の後ろを言葉というライトで照らしていただきながら歩かせてもらうような時間でした。

普通に過ごしていると「そんなに考えなくても………」と思ってしまうような語りも、ああこの思考がすべて作品を支えるものとなっていくんだなと理解していくプロセス。大きなギフトだなと振り返っています。

商品開発のプロセスのなかで、琉球銀行さんが毎年ひらかれている紅型のいちばん大きなコンテストがあり、最優秀賞に次ぐデザイン賞を受賞される出来事がありました。自分のことのようにうれしく、また、紅型という文化が発展しながら引き継がれていくとしたらこのようなプロセスのうえにあるんだろうなと感じる体験で、このこともまた、Ayumiさんからもらったギフトだったと感じています。

沖縄県立美術館でおこなわれたレセプションで、Ayumiさんと


アーティストと商品開発をご一緒させてもらうということ

Ayumiさんは、日常のなかで魂を削り紅型に向き合われているように思います。いただいた「作品を商品として販売する」という意思決定が、アーティストとしての活動を感覚的な部分で邪魔することなく、きちんとエンパワとして働くようにするために、自分自身の力不足を実感する日々でした。

たとえば、開発した商品を共感持って取り扱ってくださるお店へのアクセスをもっと簡単にできる立場であれば、たとえば、会話自体が作品への発想の豊かさにもっとなるものであれば ー。

あげだせば至らなさはキリがないのですが、もっと負担少なく、アーティストとしての活動をエンパワできる自分自身の在りかたがあるとすれば、それはできるようになりたいなと思わせてもらえるAyumiさんとの時間で、長い時間をかけてそんな自分と関係性をつくれていければと、チャレンジもgiftとしてもらっているなと感じます。



たくさんのひとに、紅型という文化と、Ayumiさんという存在が届く一助になれればうれしいです。


琉球紅型の手づくりピアスキット

紅型作家|Ayumi

パッケージデザイン|やんばるDesign Studio COuSA

企画、コンセプトデザイン|中尾岳陽


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