今帰仁村古宇利島のビーチマップを、地元学童の子どもたちとともに作成しました
沖縄県今帰仁村。観光の文脈で注目を集める古宇利島、古宇利島を訪れる多くの人の期待である「素晴らしいビーチで時間を過ごしたい」というニーズに応えたいという声がけから、古宇利島のビーチを紹介するマップを作成しました。
地元の子どもたちが、再発見する
「ビーチのマップをつくりたい」の声がけをいただいたとき、頭に浮かんだアイデアが「地元の子どもたちが、自分が住む地域の魅力を再発見できる機会にデザインし、そのプロセスを観光に訪れたひとが見させてもらうという体験にデザインしたいな」ということでした。
沖縄に縁ができて数ヶ月。沖縄全体にいえることだと感じますが、観光の文脈で地域が開発され、必ずしもそこに地元のひとの暮らしが守られるかたちで介在されているケースばかりではない、観光=産業と暮らしが分離している。そんなふうに感じるシーンに出会うことが多くありました。
観光客の方がたくさん訪れる、それは、今回マップづくりに関わってくれた子どもたちはじめ、ここに暮らすみなさんの環境がほんとうに素晴らしいから、またこの環境を守ってこられた生活、文化、そうしたものすべてが素晴らしいから他ならない思っています。暮らしを損なわない観光。こういった考えかたのちいさな力になれれば。そんな気持ちで、古宇利島がある今帰仁村で約半世紀、子どもたちの成長を支える北山学童のみなさんにお声がけをさせていただき、この企画ははじまりました。
プロセスをデザインする
子どもたちが、地域の魅力を再発見する。そして観光的な期待に応えるクオリティのアウトプットをおこなう。これらを目指したとき、ポイントは「特に発見のプロセスをデザインできるか」という点にあると直感しました。デザイナーには、とてもこころあるお仕事を重ねてこられた松下ひかるさんに加わっていただき、まずは「子どもたちがどのように発見のプロセスを辿れるか」をつくりこむところからはじめました。
「ビーチに行った想像をしてみよう!」「どんなことを発見できたら、みんな行きたい!って思ってもらえるかな?」そんな問いかけをし、子どもたちと「発見するものを発見する」というプロセスからはじまったマップづくり。
「元気をもらえるところを発見せよ!」「友達とお弁当を食べたら仲良くなれる場所を発見せよ!」「いちばんきれいな空を発見せよ!」
プロセスをデザインすると言ったのは本人でしたが、想像を遥かに超える子どもたちのクリエイティブがどんどん生まれる体験となりました。
「発見する」の次は、「発見したものを、どのようにアウトプットする?」を。ここでも子どもたちに問いかけをおこない、「絵で描いたらいいんじゃない!?」「カメラつかってみたいさーー」などの発想すべてを取り入れ、「発見するもの」×「発見する方法」をクジで引き組み合わせることにしました。
初日はこの方法を学童の敷地内で練習をおこない。
このプロセスから、子どもたちのすごさ、またそれらを支える学童で普段行われていることの強度の高さにすっかり感じ入ってしまいました。思い切って、信頼してみること。信頼することを信頼するために、準備は、全力で。多くの学びあるプロセスを過ごしました。
多くの地域の方にもご協力いただきました
子どもたちへのアプローチと同時に、地域の方へのコミュニケーションもすすめていきました。まず、古宇利島のことを深く知る方にアテンドしていただくことが叶わないかとご相談させていただいていたところ、古宇利区区長のご協力をいただけることに。
区長のお力添えのなかで、古宇利には古くから続く神事がいまなお引き継がれていることも教えていただき、その舞台にもアテンドくださる貴重な体験となりました。
今帰仁村内でお店をされている方にも多くご相談させていただき、そのうちこころある方は協賛というかたちで関わっていただけることに。「地域にできることがあったらしたいといつも思っていますよ」の会話が印象的です。
そんな多くの方のご協力に支えられ、2日間にわけて古宇利島を探索しながら、子どもたちはミッションをこなしていきました。
そんなプロセスを過ごし、マップが出来上がりました。
紹介のコピーも、絵も、子どもたちが描いたものを使用し、様々な制約があるなかでつくられるマップではなく純粋な「子どもたちが地域を再発見するマップ」ができました。マップは今回ご協力いただいた店舗を中心に設置することを予定しており、また、取り組みに賛同いただく方からのご希望があればそちらにもお届けできればと考えています。今帰仁村を、古宇利島を訪れることがあればぜひ手にとってみてください。
また、今回の取り組みは琉球新報さんに掲載いただいています。
企画自体に共感いただいたからこその紙面になっており、とてもうれしく拝見しています。ありがとうございました🙌
一連のプロセスを通して
企画した本人ではありますが、ほんとうに学び多いプロセスを過ごさせていただきました。感じていることを。
デザイナーの松下ひかるさんの仕事を通じて
ひかるさんがすごすぎました。マップのアウトプットはもちろんですが、すべてのプロセスはひかるさんのエンパワメントがなければありえませんでした。
印象に残ることを書き出せばキリがないのですが、プロセスのなかで
「子どもたちって、本人がどんなにやりたいと思っていても保護者の方や大人の一存で意思が簡単にないものになってしまうから たけちゃん(ぼくです)、ちゃんと送り出してくださる保護者の方にも向いてね」
というフィードバックを。もう、普段、どんなことを考えてはたらきに向かっておられるか。なにに向かっているかが彼女自身のなかで徹底されていないと出てこない言葉だと振り返ります。凄みを感じるシーンが多くありました。
スキルやアウトプットといったDoingだけではなく、なにを考えているか、なにに向かっているかー。そういった、Beingも、いっしょに、大切なんだ。特に地域を舞台になにかをさせていただくときには欠かせないものだと感じます。ぼく自身が発達させていきたい。ひかるさんとの時間はすべて、そうしたチャレンジもきちんとふくまれたエンパワメントでした。感謝を書ききれません。
北山学童がほんとうにすごい
北山学童がほんとうにすごいです。たとえば、古宇利島のビーチに着いたときに子どもたちがまずはじめたことは「落ちているゴミを拾う」でした。
このエピソードを園長先生のきよこ先生に話すと
「普段から学童のなかで言ってますからね、けど外でまでやれとは言ってないのにね!ゴミ袋の準備する側にもなってほしいわよね」と。
北山学童、きよこ先生、ほんとうに敬意を感じます。大げさかもしれませんが、みなさんの人生への誠実さのようなものを、子どもたちの態度から感じるのです。すべてのプロセスで、北山学童を保たれている毎日に自然と敬意を感じながら過ごしていました。
そして、普通に沖縄を観光するだけでは、このような強度の高い日常にふれることはできません。彼ら彼女らのようなひとによって、多くのひとを惹きつける沖縄は支えられているのだということを忘れずに過ごしたい。北山学童という場所の存在自体がぼくにとってチャレンジであり、エンパワメントとなっています。
暮らすひとの日常を、あたりまえに尊重できる観光開発を
また、古宇利区長のお力添えを中心に、観光とは分離され残っている文化が多くあることも知りました。残念ながら、観光開発によって、地域の方にとってはポジティブなだけではない側面も生まれており、沖縄を訪れる方が自然と敬意を持って場所を訪れる、そして多くの方が訪れることが、このような文化にとってもエンパワメントとしてはたらく。そんな未来をつくっていきたいの気持ちも深まりました。たとえば、伊勢神宮をはじめとしたTraditionalな日本文化を伝えるスポットはそのような構造になっていると思うのです。きっと、ぼくたちにも、できます。
そして今回多くの方に企画のお話をさせていただき、具体的なかたちでのcommitmentを示してくださった方たちこそ、その未来の主人公だと感じています。また、関わってくれた子どもたちもその一員になっていくと。ぼく自身、すべての瞬間、その未来にcommitmentできている毎日を過ごしたいと、自分に願っています。
沖縄での最初の仕事が、このようなものとなりほんとうにうれしく思います。少し歩けば、日常に支えられた沖縄に出会えます。多くの方が沖縄のこのような側面に出会えるといいなと思っています。
また、このようなマインドに支えられたさまざまな企画をともにつくってくださる仲間に出会いたいと思っています。
【古宇利島ビーチマップ】
designer|松下ひかる
Thanks|北山学童 今帰仁村古宇利区
o ice cafe
L Lota
KOURI SHRIMP
ポメーロ
director|中尾岳陽
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