話を聞き流しているときの相槌「せやなぁ」
かつて午後0時から放送されていた帯番組「森田一義アワー笑っていいとも!」(フジテレビ系)。冒頭のコーナー「テレフォンショッキング」では、タモリの問いかけにスタジオの観覧客が「そうですね!」と答えるのが定番となっていた。
この「そうですね」に近い関西弁が、「そうやなぁ」もしくは「せやなぁ」だ。ただし、関西人が「せやなぁ」と答えたときは注意が必要だ。なぜなら「話を聞き流している」、もしくは答えるのが面倒になった時、とりあえず「せやなぁ」と口にすることが多いからだ。
たとえば商談の際、一通りの説明を終え「いかがでしょうか」と、相手の意見を求めようとする。すると、相手が椅子にもたれかかって腕を組み、「せやなぁ」と黙考し始める。こんな時に、「説明が足りなかったのか」とか「真剣に考えてくれているんだ」などと早合点してはいけない。
相手の頭の中は、午前中なら「昼に何を食べようか」、午後なら「今日は誰とどこへ飲みに行こうか」というようなことを考えている場合が多いのだ。そして、ある程度考えがまとまれば、「まあ、考えときますわ」といって帰りを促されてしまうのがオチだ。
自分の意見を主張して、「どう思われますか?」とたずねたときも同じ。「せやなぁ」と返されたら、それまでの主張は右の耳から左の耳に抜けている。きちんと聞いていてくれた場合、肯定なら「それは、そうや」、否定や迷いなら「それは、違うやろ」「それは、どうやろ」と「それは」が付く。
「せやなぁ」が「そうですね」と同じ同意の意味を持つのであれば、ほかにも「ほんま?」や「ほんま、それ?」が存在する。ただ、ほか地域の人からすると、「せやなぁ」と「ほんま、それ?」と大して変わらないと思うかもしれないが、この2つは完全に別物。「ほんま、それ?」は「よくぞ言った」というニュアンスになる。態度にしても「せやなぁ」は横柄、「ほんま、それ?」は前のめりという違いがある。
冒頭に記したテレビ番組の場合なら、「そうですね」の代わりに、「そうやな」となる。この「そう」を「せ」に略さないことと、「なぁ」と語尾を伸ばさないことが本気の相づちなのか、話を半分に聞いているかの分かれ目だ。「せやなぁ」でも「せやな!」と語尾を伸ばさなければ、同意と受け取ってもいいだろう。
「関西人VS関東人 ここまで違う言葉の常識」(河出書房新社)より
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