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定時先生!第4話 4月から

本編目次 

第1話 ブラックなんでしょ

「1年生の担任をお願いします」
「…はい、わかりました」
 
 担任。俺が。
 
 幼い頃から教師を夢みた遠藤だが、今まで自分が教壇に立つ姿を想像できないでいた。わずか3週間の教育実習ではなく、毎日児童生徒と向き合う責任ある教師としての俺。
 採用試験に合格したとき、着任先を知ったとき、この中学校の桜を見たとき。その度に教師として歩み始める意識を強くした。しかし、その具体的なイメージを頭に描けてはいなかった。
 それが今、担任、さらに1年生とまで知らされ、遠藤は腹の底から実感が急速に湧き上がり胸を満たしていくのを感じるとともに、身が引き締まる思いがした。

「どういう気持ち?」

 校長は、遠藤の表情に明るい色が射したの認め、そっと水を向けた。

「楽しみです」

 素直にそう答えた遠藤を見て、校長は嬉しそうに頷いた。

「それとね、部活動なんだけども、希望票拝見するとね、経験もあるようなので、陸上部顧問をお願いします」

 希望票は、新規採用者説明会で記入したものだ。指導可能な部活動や競技経験の欄がある。遠藤は学生時代陸上に精を出し、全国大会出場まで果たしている。彼にとって陸上は、自身を形成する重要な一要素と言って差し支えなく、そこに部活動が果たした役割は大きかった。
 部活動が教師の長時間労働の要因であることは無論知っている。しかし、部活動が無ければ今の自分は存在していないという自覚と、何より、生徒の成長に携わりたい熱意から、遠藤は部活動顧問を経験してみたかった。

「わかりました。頑張ります」
「そう!よろしくお願いしますね!先生若いから!生徒といっしょに頑張ってくださいね!!」
 激励が校長室に響き渡った。

 遠藤は帰りがけに事務室で佐々木から書類を受け取り、帰路についた。駅へ歩く遠藤を、得も言われぬ高揚感が包んでいる。実際に訪問したことで、これまで漠然としていたことが明確になり、不安が晴れたのだ。
 電車の窓を流れる景色を眺めながら、遠藤は何気なくスマホを覗く。見たことを後悔するとも知らず。

 マスクの中で呟いた。

ー#教師のバトン?