武耕治郎

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  • 定時先生!本編 目次

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  • 定時先生!番外編

    #教師のバトン がテーマの小説の番外編です。読者の皆様の何かに役に立つ内容を目指して発信していきます。

  • 定時先生!本編 第3章 効率編

    #教師のバトン がテーマの小説。本編の効率編です。

  • 定時先生!本編 第2章 部活動顧問編

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  • 定時先生!本編 第1章 #教師のバトン編

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定時先生!第1話 ブラックなんでしょ

本編目次  便座に座ると、鋭い冷たさが背中まで伝った。5月も下旬だが、ここのところの長雨で、昼でも冷え込む。かがんだちょうど目線の高さに、ポスターが貼られている。  ~こどもたちのために! K市立学校 力を合わせて不祥事根絶~  遠藤は、着任後幾度と眺めたそのポスターをじっと見つめた。読むというより、字を順に見ているだけだ。  遠藤は4月に着任した、採用1年目のいわゆる初任者だ。幼いころから、教師になりたかった。行事に部活に充実した学生時代だった。教師になり、子どもた

    • 定時先生!第50話 あの日

      「本校が初任校とは思えないほどしっかりした学級経営で、もうすぐ卒業を迎えられます。バドミントン部の顧問としても、団体戦で県大会出場まで導かれました。本市の将来を担う人材です。異動先でも精一杯頑張ってください」  3月の校長室。中島は年度終わりの校長面接を受けていた。年度初めに設定した目標の振り返りや来年度の希望等について校長と話し、また、1年間の評価が伝えられる。 「ありがとうございます。至らないところもたくさんありましたが、自分でも精一杯やれたと思います」  胸を張っ

      • 定時先生!第49話 夫婦の晩酌

         迎えた教師3年目。特別な一年になる予感が中島にはあった。初めての進路指導、卒業生、そして異動が控えている。それらも大きな節目だが、まずは、夏の総合体育大会予選に並々ならぬ決意を燃やしていた。  正顧問として1年間バドミントン部を鍛えてきたつもりだ。さらに、部の中心である3年生は、担任を務める学年の生徒たちでもある。なんとか勝たせてやりたい。中島の日々の指導にも熱が入り、休日には練習試合を積極的に組んでいた。  最後の大会が近付くにつれ、部員のモチベーションも上がっていった。

        • 定時先生!第48話 仕事ぶり

           問題行動は指導のチャンス。  いつの日かの初任者研修で言われた言葉だ。右も左もわからぬまま職員室に放り込まれ、何も無くとも多忙な初任者に鞭打つかのように、あまりに多くの初任者研修が組まれたせいか、その内容の多くは覚えていない。しかし、この言葉は印象に残っている。  当時の中島は、授業中の生徒の私語に対してすら、気が滅入るような思いでいた。簡単には生徒が従わないことはわかっており、放っておければ幾らか楽だが、指導しなくては真面目な生徒にどう思われるか。一瞬の逡巡の末、一応は注

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        定時先生!第1話 ブラックなんでしょ

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        • 定時先生!番外編
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        • 定時先生!本編 目次
          48本
        • 定時先生!本編 第3章 効率編
          13本
        • 定時先生!本編 第2章 部活動顧問編
          10本
        • 定時先生!本編 第1章 #教師のバトン編
          17本

        記事

          定時先生!第47話 2年目の目標

          「進級おめでとう。今日から皆さんの担任になります、中島です…」  途中で、挨拶をやめた。生徒がざわめいていたからだ。察した生徒から私語をやめたが、一部の生徒は気付かず私語を続けていた。中島は心を決め、ゆっくり息を吸い込み、語気を強めた。 「おい!私語やめろ!」 一瞬で静まり返った教室を、中島は険しい表情で見つめたまま、静かに、続けた。 「担任になった以上、厳しくすることもあります」  中島は、前年度副担任を務めた1学年から、そのまま持ち上がる形で2学年担任となってい

          定時先生!第47話 2年目の目標

          定時先生!第46話 秋明菊

           採用試験に合格したときから、中島は美咲との結婚をより意識するようになった。そして今、初任者として数ヶ月間過ごし、試用期間である1年目を何とか乗り切れそうな見通しが、中島にはあった。  教師として今後もやっていく不安が無いと言えば嘘になる。しかし、どんな職に就いたところで、不安の無い職など無いだろう。何より、学生時代からの美咲の支え無くして、今の教壇に立つ自分はあり得ない。  小さく可憐な秋明菊が鮮やかな白を咲かせる10月、テスト前の部活動停止期間の、束の間の休日だった。二人

          定時先生!第46話 秋明菊

          定時先生!第45話 規律を与えるには

          本編目次 第1話 ブラックなんでしょ  中島がソフトボール部副顧問として着任した当時、N中ソフトボール部は既に強豪として知られていた。中島の数年前に着任した正顧問は、県ソフトボール専門部の役員を務めるほどの実力者であり、この顧問の厳しい指導のもとプレーするために、何人もの生徒が公立校であるN中学校に学区越境で入学してくるほどだった。  平日の朝と放課後、そして休日も朝から夕方まで正顧問の怒声がグラウンドに響き、休みなど無いに等しかった。毎週のように組まれる遠征では、交通費

          定時先生!第45話 規律を与えるには

          定時先生!第44話 怒声

           体育館の床は、無数の生徒の頭でびっしりと埋められ、まるで黒い絨毯で覆われているかのようだ。  中島は初任教師として、他の着任職員と共に壇上に並べられた椅子に座り、体育館後方まで整然と座る生徒たちを一望していた。緊張しながらも、どこか冷静に、茶髪の生徒がいないな、と思った。俺の中学生時代には、学年に数人は茶髪にしている不良がいたものだが、などと考えているうちに、中島が挨拶する番がきた。  慌てて立ち上がろうとした、その時だった。 「おい!そこ!」  生徒らを囲むように立っ

          定時先生!第44話 怒声

          定時先生!第43話 出会い

          本編目次 第1話 ブラックなんでしょ   中島は、実家から一切の援助を受けずに、奨学金とアルバイトだけで一人暮らしの生活費と大学夜間部の学費を稼ぐ苦学生だった。少しでも高い時給を求め、深夜のファミレスで働き始め、アルバイトの先輩だった美咲と出会った。  中島より年齢がひとつ上の美咲は、整った顔立ちと周囲を照らすような笑顔で、制服がよく似合っていた。天真爛漫な一方で、周囲を気遣う細やかな性格の美咲は、新人の中島をよく気にかけ仕事を丁寧に教えた。  いつしか中島は、美咲をもっ

          定時先生!第43話 出会い

          定時先生!第42話 彼女

          本編目次 第1話 ブラックなんでしょ  画面を埋め尽くす数字が、下から上へと流れていく。静寂に包まれた図書館に響いてしまいそうなほど、胸の鼓動が暴れている。心中で唱え続ける数字に近づくにつれ、スクロールは遅くなり、そして、ついに止まった。  アパート近所の図書館のWEB閲覧用パソコン画面と、知らぬ間に握りしめ、しわだらけになっていた受験票とを、何度も凝視し見比べる。 ー間違いないー  腹の底からこみ上げる狂喜の叫びを必死に堪えるものの、重力を失ったかのように持ち上がる

          定時先生!第42話 彼女

          定時先生!第41話 煎餅

          本編目次 第1話 ブラックなんでしょ  3月も中旬に差し掛かり、春がそこかしこに芽吹き始めたものの、日が沈むと、冬が名残り惜しむかのようにまだまだ寒さが堪える。  蛍光灯に煌々と照らされ、暖房が効いた夜の職員室。湯気の立つ緑茶をすすりながら、定年目前の男性ベテラン教員が尋ねた。 「もうすぐ初担任でしょ」  この時期、職員室の関心は、来年度の人事にある。3月には、校長及び教頭をはじめ、学校運営の中心となる一部職員によって来年度の組織案がほぼ出来上がっている。あとは、職員

          定時先生!第41話 煎餅

          定時先生!第40話 放送室

          本編目次 第1話 ブラックなんでしょ 『ー放送は以上です。残りの問いに取り組みなさい』 「…」 「CD止めないと」 「あっ、停止っと」  追憶に耽っていた遠藤は、危うく他の問題まで流すところを、中島に助けられた。  埃を被った機材、色褪せた注意事項の貼り紙、乱雑に置かれたCDケース、カーペットに染み付いた独特の匂い。ずっしりと重たそうな暗幕が開け放され、普段は暗く陰鬱な放送室の小部屋に、朝の日差しが眩しい。  一学期定期考査1日目の1時間目、各学年分の

          定時先生!第40話 放送室

          定時先生!第39話 負のリレー

          本編目次 第1話 ブラックなんでしょ 「彼、大丈夫かな」  背後からの唐突な声に、遠藤は驚いて振り返った。西田が眉間を狭め、北沢が消えた街角を眺めている。  北沢を気に掛け、遠藤に遅れて様子を見に来た西田は、職員玄関で外履きに足をねじ込んでいるときに、北沢の怒声を聞いていた。 「わかりません…」  そうとしか言いようがない。  北沢は、非正規職員の講師として遠藤より1年早くS中学校に着任していた。新卒採用で右も左もわからなかった遠藤からすれば、北沢は

          定時先生!第39話 負のリレー

          定時先生!第38話 初任なんだから

          本編目次 第1話 ブラックなんでしょ  遠藤は口を開けたまま、北沢を見つめていた。数拍の間の後、北沢がいつもと変わらぬ明るい調子で続けた。 「ごめん、急に変なこと言って。効率的にやるのは間違いなく良いことだよな。俺、今日も早めに帰ろうかな。と言っても定時1時間ぐらい過ぎてるけど」  思考停止状態の遠藤だったが、素早くアルコールを手指にすりこむ北沢の手元を眺めながら、徐々に我に返っていく。何か言葉をかけねばと、考えを巡らせたが浮かばない。思案するうち、北沢はトイレを去っ

          定時先生!第38話 初任なんだから

          定時先生!第37話 辞めてぇわ

          本編目次   第1話 ブラックなんでしょ 17時30分 職員男子トイレ  「着席指導ひとつとってみても、西田先生、市川先生、中島先生それぞれの切り口からのアプローチがあるんだよね。多分、先輩たちも皆、迷いながら自分に適した方法を獲得していったと思うんだ。俺も最近、どうチャイム着席指導していいか迷ってたんだけど、少し勇気貰った気がしたよ。北沢くんさ、前に中島先生を真似する、って言ってたでしょ。正直俺、その時は中島先生のことよく理解してなくて、共感できなかった

          定時先生!第37話 辞めてぇわ

          定時先生!第36話 隣のレーン

          本編目次  第1話ブラックなんでしょ 「チャイムと同時に制限時間1分で漢字小テスト。もちろん成績に入れる。これなら、チャイム前にはほとんど全員着席して勉強してるよ。導入してからはチャイム着席指導する必要がなくなったね」 ー指導しなくて済むように工夫するのが一番重要な指導力だよ。生徒指導でも何でもそうだけど、何か問題が生じたとき、あるいは予見されるときは、生徒の前に、システムに原因を求めることが大事なんだー 中島の発言を思い返す。 「清掃指導と同じで、システムを見直さ

          定時先生!第36話 隣のレーン