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仙台市富沢遺跡保存館(地底の森ミュージアム) 訪問記

2024年07月30日、私は仙台市富沢遺跡保存館(地底の森ミュージアム、以下同館)に一般客として、見学した(図01,[1])。

図01.仙台市富沢遺跡保存館(地底の森ミュージアム)。


富沢遺跡は、宮城県仙台市太白区富沢、泉崎、長町南他に所在する。面積は90haである。仙台平野中部の名取川下流域の後背湿地に立地し、標高は8~16mである。

富沢遺跡では昭和62・63年(1987・1988)に小学校建設のための事前調査が行われた。遺跡内では30回目の調査だったので「富沢遺跡第30次調査」と呼ばれている。上から順に近世・中世・平安時代・古墳時代・弥生時代の水田跡、植物の根や茎がよく残っている土(泥炭層)、その下からは縄文時代の穴や倒木の跡が見つかった。さらに2m下(現在の地面から約5m下)からは、約2万年前の旧石器時代に生きた人達の活動跡と森林跡が一緒に見つかった。

このことは世界的にも貴重な発見だったので、遺跡を発掘されたままの状態で保存・公開するために、建設を予定していた小学校を別の場所へ移し、同館を建てることになった。その後、平成8年(1996)11月02日に開館した([2][3])。


同館では、約2万年前のたき火の跡や森の跡(図02)、ならびに、地層断面(図03)が展示されている(3,[4])。

図02.富沢遺跡―約2万年前のたき火の跡や森の跡。 
図03.地層断面。


約2万年前のたき火の跡や森の跡には、2万年前の木の根や幹(図04)、シカのフン(図05)、たき火跡(図06)、および、石器を埋めた穴(図07)が、確認されている([5][6])。

図04.2万年前の木の根や幹。
図05.シカのフン。
図06.たき火跡。
図07.石器を埋めた穴。


2万年前の木の根や幹の多くは、グイマツやトミザワトウヒ(絶滅種)などの針葉樹で、そこにわずかに広葉樹が混じっている(図08,図09,図10,5,6)。

図08.2万年前の富沢の森。 
図09.グイマツの樹根。
図10.絶滅種―トミザワトウヒ。


シカのフンはニホンジカ程度の大きさのシカで、冬の終わりから早春頃までヨシ、ササ、ハシバミ、および、シラカンバなどを食べていた(図11,図12,図13)。

図11.「この黒い粒は何だろう?」。
図12.「シカはどんなものを食べていたのだろう?」。
図13.「博士はこう考える」。


たき火跡(そこから炭化物が見つかった)、たき火跡と石器の分布、ならびに、石器を埋めた穴から、富沢の森は一晩くらいで使用されたキャンプ地とされる。(図14,図15,図16,図17)。

図14.「炭化物のまとまりは何の痕跡か?」。
図15.向かって左から、自然に黒くなった樹木、火を受けて炭になった樹木、および、富沢で見つかった炭化物。
図16.「たき火跡のまわりの石器は何を意味する?」。
図17.「博士はこう考える」。

また、これらの石器はウサギの解体に用いられたと思われる(図18,図19)。

図18.使用痕のある石器。
図19.「博士はこう考える」。


たき火跡の隣には、謎の小さな穴が確認されているが、穴が掘られ、石器が埋められた理由は現時点では不明である(図20,[7])。

図20.謎の小さな穴。


2万年前は海面が100 m近く下がっていたため、仙台湾はほとんどが陸地で、海岸線は遥か沖合にあった。当時の富沢は、標高が約100 mで、海岸からは50 kmほど離れていた(図21)。

図21.2万年前の海岸線。


野外展示「氷河期の森」では約2万年前の氷河期にこの場所に広がっていた森が復元されている。絶滅したトミザワトウヒによく似たアカエゾマツの他に、グイマツ、シラカンバ、ハンノキ、ハシバミなどが集まった林をつくっている(図22,[8])。

図21.氷河期の森。


同館は世界で唯一、旧石器時代の人が残した生活の跡と氷河期の森の跡の両者が見つかった時のままに見ることができる場所であることを知って、私は興味を抱いた。

幸い、私はNanoTerasuを見学後、同館を見学できた。

もっとも、その後、軽い熱中症に罹ったが、自力で治療し、回復した。

はっきり言って、最先端科学技術の成果と遥か古の時代の森の両者を見学できたことに関して、私は科学の神に感謝している。


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参考文献

[1] 仙台市富沢遺跡保存館.“地底の森ミュージアム ホームページ”.https://www.sendai-c.ed.jp/~bunkazai/~chiteinomori/,(参照2024年09月01日).

[2] 日本旧石器学会.“富沢遺跡 Tomizawa site”.日本旧石器学会 ホームページ.日本列島の旧石器時代遺跡.https://palaeolithic.jp/sites/tomizawa/index.htm,(参照2024年09月01日).

[3] 仙台市富沢遺跡保存館.“歴史・沿革”.地底の森ミュージアム ホームページ.https://www.sendai-c.ed.jp/~bunkazai/~chiteinomori/history/,(参照2024年09月01日).

[4] 仙台市富沢遺跡保存館.“地底の森ガイドマップ”.地底の森ミュージアム ホームページ.https://www.sendai-c.ed.jp/~bunkazai/~chiteinomori/guidemap/,(参照2024年09月01日).

[5] 仙台市富沢遺跡保存館.“地下展示”.地底の森ミュージアム ホームページ.地底の森ガイドマップ.https://www.sendai-c.ed.jp/~bunkazai/~chiteinomori/guidemap/underground/index.html,(参照2024年09月03日).

[6] 仙台市富沢遺跡保存館.“地下展示室みどころマップ”.地底の森ミュージアム ホームページ.地底の森ガイドマップ.地下展示.https://www.sendai-c.ed.jp/~bunkazai/~chiteinomori/common/images/guidemap/underground/midokoro.pdf,(参照2024年09月02日).

[7] 仙台・宮城ミュージアム アライアンス事務局.“「ちまたのけんきゅうミュージアム」(PDF)”.仙台・宮城ミュージアム アライアンス ホームページ.SMMAが発行した本.『ちまたのけんきゅうミュージアム』刊行.2021年12月24日.https://www.smma.jp/wp/wp-content/uploads/2021/12/SMMA_chimata.pdf,(参照2024年09月03日).

[8] 仙台市富沢遺跡保存館.“野外展示”.地底の森ミュージアム ホームページ.地底の森ガイドマップ.https://www.sendai-c.ed.jp/~bunkazai/~chiteinomori/guidemap/outdoor/index.html,(参照2024年09月03日).

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