第1章 「和食」とは:特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」見聞録 その01
2024年02月09日、私は国立科学博物館を訪れ、一般客として、特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」(以下同展)に参加した(図01.01,[1])。
人類は主に、 糖質を植物性食材から、蛋白質と脂質を動物性食材から摂取してきた。これら栄養素をまかなった食材は地域と時代によって異なるが、概して、植物性食材としては、雑穀 米、小麦、トウモロコシなどの穀物とジャガイモなどの根菜類が、動物性食材としては、ウシ、ヒツジ、ブタ、トリ、さらに魚などが挙げられる。
図01.02では、産業革命直前(17~18世紀ころ)の世界で人々がどのような食材から糖質、蛋白質、脂質などの栄養を摂っていたかをごくおおまかに示している。下部に世界各地の今の料理写真が並んでおり、その多くは、産業革命頃の食のパッケージの影響を色濃く残している。
食材の組合せ(パッケージ)には地域ごとに特徴があり、日本列島付近では米をはじめとする穀類と魚中心の食が営まれてきたことがわかる(米と魚のパッケージ)。なお、北日本では米に代わりヒエやアワなどの雑穀が、また南日本ではサトイモなどの根栽が使われてきた(図01.02,[2]のp.18-22)。
私にとって、同展は非常に興味深いものであった。
本記事から、和食に関して学ぶので、ついてこられたし。
ハーバード大学の研究の結果から、地中海食を食べている人は、心血管疾患、がん、パーキンソン病、アルツハイマー病のリスクが低く、死亡率も低いことが明らかになっている([3])。しかし、日本人にとって、地中海食は「重く」思える。
その一方で、日本での糖尿病の食事療法は、日本人が培ってきた伝統的な食文化を基軸した方が継続しやすい([4])。実際、日本では、魚をよく食べている人は、糖尿病のリスクが低く、心筋梗塞や狭心症などの発症が少ないことが明らかになっている。さらに、小魚を食べる習慣のある人は、死亡やがんのリスクが大幅に低いことが、日本の8万人超を9年間追跡した調査でも明らかになった。また、サバ・イワシ・アジ・ニシンなどの魚油に含まれるエイコサペンタエン酸が、全身の脂質代謝や筋機能を向上することも新たに分かった([5])。
上記の件が、同展を介して和食を振り返る理由である。
参考文献
[1] 株式会社 朝日新聞社.“特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」 ホームページ”.https://washoku2023.exhibit.jp/,(参照2024年07月19日).
[2] 特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」ガイドブック,168 p.
[3] 公益財団法人 長寿科学振興財団.“地中海食の特徴”.健康長寿ネット トップページ.健康長寿とは.食品・料理・食品成分.2019年02月01日.https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shokuhin-seibun/chichukaishoku-tokucho.html,(参照2024年07月20日).
[4] 株式会社 創新社.“「ごはんを主食とした和食」は食事療法に適している 食育健康サミット”.糖尿病ネットワーク トップページ.ニュース.2014年01月08日.https://dm-net.co.jp/calendar/2014/021212.php,(参照2024年07月20日).
[5] 株式会社 創新社.“魚を食べると糖尿病リスクは低下 小魚を食べる食事スタイルが寿命を延ばす 魚の油が脂肪燃焼を促進”.糖尿病ネットワーク トップページ.ニュース.2024年07月01日.https://dm-net.co.jp/calendar/2024/038358.php,(参照2024年07月20日).