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第2章 列島が育む食材 03.山菜:特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」見聞録 その05

2024年02月09日、私は国立科学博物館を訪れ、一般客として、特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」(以下同展)に参加した([1])。

 

日本には7,500種類(亜種・変種を含む)を超える植物が自生しており、そのうち食べることのできる植物は1,000種類以上にもなる。人類は有史以前からそれらの野生植物を食利用し、日本では縄文時代にはツルボなどの野生植物が食利用されていたと考えられている。その食べることのできる野生植物のなかで、美味・珍味な食材として利用される植物が山菜である。

日本では約100種類の植物が山菜として利用されている([2]のp.36-37)。


代表的山菜には、チシマザサ(図05.01,[3])、ウド(図05.02,[4])、ゼンマイ(図05.02,[5])、フキ(図05.03,[6])、タラノキ(図05.04,[7])、および、ワラビ(図05.04,[8])が含まれる。

図05.01.チシマザサ。
図05.02.向かって左から、ウドとゼンマイ。
図05.03.フキ。
図05.04.向かって左から、タラノキとワラビ。


山菜に関する知識は各地に伝播され、たどり着いた先々の土地の文化と出合うことで地方特有の食文化が生まれた。 そのため1つの山菜に対して様々な方言の呼び名が存在している(図05.05)。

図05.05.「ひとつの山菜にたくさんの名前」。


地方特有の山菜には、オオタニワタリ(図05.06,[9])、エゾノリュウキンカ(図05.07,[10])、エゾエンゴサク(図05.07,[11])、ホソバワダン(図05.08,[12])、リュウキュウチク(図05.09)、および、オオハナウド(図05.09)が含まれる。

図05.06.オオタニワタリ。

図05.07.向かって左から、エゾノリュウキンカとエゾエンゴサク。
図05.08.ホソバワダン。
図05.09.向かって左から、リュウキュウチクとオオハナウド。


南北に長い日本列島では地域が異なれば分布する植物にも違いがみられ、食卓にあがる山菜も異なる。 例えばフキが分布しない亜熱帯の琉球列島にはその食文化はないが、琉球固有のリュウキュウチクを食する琉球独特の食文化がある。 また、北海道に分布するエゾノリュウキンカは北海道でよく山菜として利用される(図05.10)。

図05.10.ところ違えば山菜食文化も違う。


沖縄ではホソバワダンは山菜・薬草として200年以上前から利用されており、現在では沖縄伝統野菜の1つになっている。これまで、それぞれの農家が野生株を採集・栽培し、その来歴は様々と考えられてきたが、国立科学博物館の研究によって、人為選抜された大きく柔らかい葉をもつ1つの系統が挿し木によって栽培維持され、野菜になりつつあることがわかった(図05.11,[13])。

図05.11.野菜になりつつある「ホソワバダン」。


こうしてみると、山菜は非常に奥深い食材である。



参考文献

[1] 株式会社 朝日新聞社.“特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」 ホームページ”.https://washoku2023.exhibit.jp/,(参照2024年12月25日).

[2] 特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」ガイドブック,168 p.

[3] あきた森づくり活動サポートセンター.“山菜採りシリーズ⑱ タケノコ(ネマガリタケ)”.森と水の郷あきた ホームページ.特集記事 山菜採りシリーズ.http://www.forest-akita.jp/data/sansai/18-takenoko/takenoko.html,(参照2024年12月25日).

[4] あきた森づくり活動サポートセンター.“山菜採りシリーズ⑬ ウド(ヤマウド)”.森と水の郷あきた ホームページ.特集記事 山菜採りシリーズ.http://www.forest-akita.jp/data/sansai/13-udo/udo.html,(参照2024年12月25日).

[5] あきた森づくり活動サポートセンター.“山菜採りシリーズ⑭ ゼンマイ”.森と水の郷あきた ホームページ.特集記事 山菜採りシリーズ.http://www.forest-akita.jp/data/sansai/14-zenmai/zenmai.html,(参照2024年12月25日).

[6] JA(農業協同組合)グループ.“春の旬野菜 フキ”.JAグループ ホームページ.食や農を学ぶ.とれたて大百科.https://life.ja-group.jp/food/shun/detail?id=17,(参照2024年09月12日).

[7] あきた森づくり活動サポートセンター.“樹木シリーズ98 タラノキ”.森と水の郷あきた ホームページ.特集「樹木シリーズ」.http://www.forest-akita.jp/data/2017-jumoku/98-tara/tara.html,(参照2024年12月25日).

[8] あきた森づくり活動サポートセンター.“山菜採りシリーズ⑮ ワラビ”.森と水の郷あきた ホームページ.特集記事 山菜採りシリーズ.http://www.forest-akita.jp/data/sansai/15-warabi/warabi.html,(参照2024年12月25日).

[9] 株式会社 ONNA.“オオタニワタリ 沖縄の珍味 美と健康を支える島の宝石”.おんなの駅「なかゆくい市場」 ホームページ.村の産直市場 魅力あれこれ 一覧.2024年03月11日.https://onnanoeki.com/charm/6663/,(参照2024年12月25日).

[10] 国立大学法人 九州大学 農学部附属演習林.“27 エゾノリュウキンカ”.九州大学 農学部附属演習林 ホームページ.北海道演習林.あしょろ自然誌.2023年07月21日.http://www.forest.kyushu-u.ac.jp/?p=1358,(参照2024年12月25日).

[11] あきた森づくり活動サポートセンター.“山菜採りシリーズ⑳ その他食べられる草花等-2”.森と水の郷あきた ホームページ.特集記事 山菜採りシリーズ.http://www.forest-akita.jp/data/sansai/20-sonota2/sonota2.html,(参照2024年12月25日).

[12] 福岡県 環境部 自然環境課 野生生物係.“ホソバワダン(細葉海菜)”.生物多様性情報総合プラットフォーム 福岡生きものステーション トップページ.県内の動植物種について知りたい(身近な生きもの).この生きものは何でしょう.この生きものは何でしょう ~植物~.https://biodiversity.pref.fukuoka.lg.jp/futsushu/what/whatplants/hosobawadan.html,(参照2024年12月25日).

[13] 独立行政法人 国立科学博物館.“伝統野菜の起源を探る”.国立科学博物館 ホームページ.研究室コラム.2024年7・8・9月.2024年08月29日.https://www.kahaku.go.jp/column/?month=202407,(参照2024年12月25日).

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