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佐野元春 sweet16

Dear Mr.Songwriter Vol.26

今回は8枚目のオリジナルアルバム『sweet 16』です。’90年の『Time Out!』から1年8ヶ月ぶりにリリースされています。

ここでリリースに至るまで少し期間があるので、活動を少し遡っていきますね。

’90年11月からスタートした2ヶ月のツアー"Time Out Tour" 今までのキャリアで一番短いツアーでした。
 そして、オノ・ヨーコさんが提唱したジョン•レノン生誕50周年記念イベント《Greening Of The World》《G.O.W》に参加することになります。

1990年11月1日 朝日新聞夕刊


1990年8月16日 朝日新聞夕刊

そのイベント用に書き下ろした新曲「エイジアンフラワーズ」を演奏。ヨーコと息子のショーン•レノンも同じステージで共に歌いました。この時はハートランドのバンド演奏ではなくテープでの同期演奏、ギター•パートだけは長田進が担当していました。

前作の『Time Out!』作成の為、元春はロンドンにいたんだけど、ヨーコさんとショーンのヴォーカル•ダビングの為一度東京に戻りこのスタジオ•テイクが完成したみたいです。
Happy Birthday, John.』というタイトルのトリビュート盤に収録されています。

Happy Birthday, John.
1990.12.21

ちなみにこの楽曲の初披露は東京FMの番組《Tasty Music Time》の1990年10月11日の放送分、その時は"エイジアン•フラワーズ"の箇所が'ジャンボリー•チューズデイ'になっているヴァージョンでした。「ディズニー•ピープル」の名残りでしょうかね。


年明けからアルバムのレコーディングを開始する事になるんだけど、リリースが少し延びるかもしれないという事で、2月には過去の作品のバラード集『Slow Songs』のリリースが決まります。収録曲は数曲をリミックス。そしてかねてからの夢だったというフランク•シナトラの様にフル•オーケストラで唄うという試みをすることに。そのアレンジは前田憲男が起用されました。

佐野元春 Slow Songs
1991.8.28
オリコンチャート最高位2位

8月にリリースされた本盤には12曲を収録。「情けない週末」「バッドガール」はフル•オーケストラ•ヴァージョン。「彼女」はリテイクされています。
小川洋子による『無垢な恋』という素敵な書き下ろしのエッセイと山本容子によるアートピースによるブックレットも素敵な作りになっていました。


アルバムのレコーディングの合間にもThe Wells「1990'S GUN」をプロデュースしています。レコーディングは4月末、3日間で仕上がったみたいだね。


ニュー•アルバムは当初の予定では91年の11月に発売でしたが、なかなか完成には至らなかった。そして10月には父親の急死という出来事がありました。その事務処理をしなければならず、音楽に集中する状態ではなかったといいます。



年が明けて'92年にとった初めてのアクションはまず全国ツアー"See Far Miles Tour Part Ⅰ"をスタートさせることだった。自分をもう一度見つめ直す作業としてロードに出ることを選んだんだと思う。


ニュー•アルバムの先行シングルとして1月にリリースされた「また明日...」はTBSのニュース番組[News 23]のエンディング•テーマとして1月から3ヶ月お茶の間に浸透する事になります。

ジャケット•アートはハワイを拠点として活動している女性作家ペギー•ホッパーの作品。曲を聴いた彼女からの希望でこのジャケット用に書き下ろされました。

そして、もう一つのトピックとして、とても美しい矢野顕子のボーカルがフィーチャーされている事だろう。元春の希望でどうしても「矢野顕子さんがいる」ということで連絡をとることに。ニューヨークに在住していたが、たまたま日本にいる事がわかり、急遽レコーディングをしたという。’87年の矢野顕子のアルバム『グラノーラ』収録の「自転車でおいで」以来の事でした。

カップリングには’91年の4月に行われたアンプラグド•ライヴ《Goodbye Cruel World》より「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」「ジュジュ」が収録されました。


Rockin' On Japan 1992年1月号

’91年の2月からスタートしたレコーディングもツアーをはさみつつ完成。
92年7月にアルバムはリリースされました。

sweet 16 
1992.7.22
Produced by Moto "Lion" Sano
(Except Track 3 Co-Produced by 西本明 )
Recorded & Mixed by 坂元達也
Mastered by Bob Ludwing
Art Design 駿東宏
オリコンチャート最高位2位
1992年7月22日 朝日新聞夕刊 全面広告

当初の予定ではこのホンダ•モンキーにまたがっている写真がジャケットの予定でしたが、急遽チェリーパイのジャケットに変更されています。

演奏は全てザ•ハートランド。エンジニアはアルバム『SOMEDAY』の2ndエンジニアだった坂元達也 通称サカゲンが担当している。

では収録曲を聴いていこう。


1.ミスター•アウトサイド

前作『Time Out !』のラスト•ナンバー「空よりも高く」において"夏の嵐が近づいてる"中、車を走らせて家に帰った主人公が、オープニングの雷で覚醒する。
それはアルバム『SOMEDAY』の「ロックンロール•ナイト」で光をつかみ損ねた主人公が次のアルバム『Visitors 』の一曲目「コンプリケイション•シェイクダウン」のイントロで覚醒した様に。

そこに続くのはローファイなドラムとパーカッションの音に続いて当時UKでハプニングしていたハウスミュージックと呼応するビートがワウギターとともに炸裂する。もうそこには理由などなく身体が動いてしまう。少し怪しげで不安を掻き立てるようなストリングス。クジラの鳴き声も詩に反応しておしゃべりをしている様に続いていく。
そしてラストに向かっては、音がぶつかりあい、カオス状態の中、不協和音を重ねて消えていってしまう。

最後のクジラの声は、左が親クジラ、右が子クジラになっていて、親クジラが、さまよう子クジラを探して鳴いている様に作られている。

"ミスター•アウトサイド" "在野の人"一体何者なんだろう。って考えてたりするんだけど、まず連想するのは、ボブ•ディランの「ミスター•タンブリンマン」かな。「あんたの魔法のうずまく船で旅につれていっておくれ」のラインは、ここではない何処かに"連れていっておくれ"という願いが通じているように感じる。

もう一つはボス、ブルース•スプリングスティーンの楽曲の「ミスター•アウトサイド」。アルバム『ザ•リバー』のアウトテイク作品です。

ここで歌われる対象は、やはり何かに囚われないで生きている人物が描かれている。

もうひとつ連想されるのは'91年6月出版された音楽ライターの長谷川博一の書籍《ミスター•アウトサイド わたしがロックをえがく時》だろうか。
元春の楽曲は’91年の4月にはレコーディングが終わっているので、偶然の一致なんでしょうね。

ここで歌われるワード"償いの季節" については
"See Far Miles Tour Part Ⅰ"のパンフレットの中には "愛しいひとの眠る 世界を忘れて 償いの季節"という詩があります。父親が亡くなった事と無関係ではないんだろう。

そして2023年にリリースの『SWEET 16 30TH ANNIVERSARY EDITION』に「ミスター•アウトサイド Complete version」として完全版が収録されました。
これはとても興奮しましたね。本当はもっと長いっていうのは、本人の発言からも知ってはいたんだけど、想像より上をいきました。このハウス•ビートが永遠に続くかの様なイメージをしていたんだけど、なんと8分弱の長さの中でアルバムに収録されたのは5分すぎたあたりからの後半部分だったのに驚きました。このハウスなダンスナンバーに違うメロディが存在してたなんて。このヴァージョンは何回聴いても何処かへ、トリップしてしまうようにゾクゾクしてしまう素晴らしさです。

オープニングの雷の音はレコーディング中に夕立の中、雷がなっているところを録音してほしいという事で当時のディレクター滝瀬茂がマイクを外に持ち出して録音したもの。

2.スウィート16

男の子のマジック•ナンバーは16。この時、元春は30代半ばでこの曲を書いている。こんな曲がまだ書けるんだという気持ちがあった。そこにはチャックベリーの「スウィート•リトル•シックスティーン」も30代で書いているじゃないかという事も勇気づけられたと語っている。
この時に初めて自分の青春を対象化できたみたいだね。
仮タイトルは、「バディ」。敬愛するバディ•ホリーのジャングル•ビートに乗って歌われるのは、夜明けまでダンスしていつも一緒にいるよ、という事。古いファンには成長を確認する曲であり、また当事者の16歳に響く曲にしたかったという。

サウンドに関しては混沌とした音の塊が向かってくるよう。それはまさしくアップデートされたウォール•オブ•サウンド。そこにビーチ•ボーイズ•マナーのコーラスも入ってくると気分も高鳴ります。後半の"〜夜が明けてた〜"の後の転調するところに響くハープの音がいいアクセントになっています。

カッコいいハモンドオルガンを弾いているのは、当時、JIGGER'S SONのサウンド•プロデュースをしていた守時龍巳。元春がプロデュースしたThe Wellsのレコーディングの時のプレイが気に入り、参加に至った経緯がありました。

3.レインボー•イン•マイ•ソウル

ジーン•チャンドラーの「レインボー」の歌詞"There's Rainbow in my heart"のラインにインスパイアされてできた楽曲。

少し苦い思い。それを肯定すること。それは絶望と希望というコインの裏表を表しているかのように感じる。
"失くしてしまうことは 悲しいことじゃない"というラインは「約束の橋」においての"今までの君は 間違いじゃない"に匹敵するエールを受け取った気持ちになる。
そして"失くしてしまうたびに 君は強くなる"と言ってくれる。

リスナーから誠実さを要求される曲だと語っていました。ソングライターとしてどれだけ誠実であるかと。
そこに関しては無意識の内に感じとるものなのかなって思ってます。

元春ソングライティングの重要な対象であるだろう""というワード。
それは聖書における"虹"と解釈は似ているのだという。それは神と人間の約束の証。そして、雨の後に立ち上がるもの。それはある種、絶望の次に来る一つの希望というイメージなんだそう。
"僕の心の中にはいつも僕にしかわからない虹がかかっているんだ"

レコードになる前、See Far Miles Tour PartⅠで演奏しながら、一番いいテンポを決めている。最初はかなりテンポが早かったという事です。

サウンドに関しては、ザ•ハートランドのキーボーディスト西本明がコ•プロデュースでクレジットされています。現場で元春とディスカッションしながら、作りあげたみたいだね。

ドラムスの古田たかしの証言からキックとスネアは打ち込みだという。それはかなりやりにくいことだったみたいだけど、海外のレコーディング現場ではサンプリング•ドラムを使うという時代背景もあってそれを実践して新しいサウンドを模索してたということです。

そして耳に残るのはメロディー•セクストンと、マクサンヌ•ルイスの女性コーラス。この二人の歌声がプラスされる事でソウル"魂"が新たに吹き込まれた曲になっています。

4.ポップチルドレン 最新マシンを手にした陽気な子供たち

"君は3個のダイヤモンドを掘りあてて そして4個のダイヤモンドをなくしてしまう"

冒頭のこのフレーズは「レインボー•イン•マイ•ソウル」にも通じるロスト&ファウンドをテーマにしているのだろう。

ここの主人公はいつかの"闇にひざまずき 奇跡を待っていた少年だろうか。
その少年の武器はコンピュータと形を変えて"本当のことが知りたいんだ"と世界に折り合いをつけようと、もがいているよう。

子供たちに向けた曲はいくつかあるけど、ここで初めて"大丈夫さ"と声をかけた。そこには前述した十代が持っている思いを対象化できた事に通じているのかもしれない。

Tokyo Be-Bopのブラス•セクションが炸裂するこれぞザ•ハートランドという楽曲。

5.廃墟の街

"柔らかく気の触れたこの世界" 気の触れた世界っていうのは想像できるけど、そこに真逆のイメージを持つ"柔らかく"を冒頭におく事で、より狂気を感じるというか、違う風景が頭の中で動きだす。あえてソフトなイメージを付け足す事によってそれぞれの人の感性に行き渡るのだろう。

仮タイトルは「Heart Beat Part Ⅱ」ここには、月の光はあるものの、素敵なスターダストのメロディーを唄うナイチンゲールはもういなく、壊れた月の下でくるおしく踊っている。
90年始め頃、救世主達が溢れる世界、はメディアを通じなくとも、街に溢れていたのは感じていたけれども。

ここでも「ミスター•アウトサイド」と同じく不穏な雷の音で始まる。そこから越智善朗、義久の兄弟によるパーカッションが鳴り響く。ハープのループ音はコンピュータのエラーから生まれたものだという。
語るように歌うスポークン•ワーズの表現はもう特に区別しなくても同じポップ•ソングとして違和感なく並列に並んでいる。

最終ヴァースでは、嵐の後、これまでの不安を吹き飛ばすかのように、青空が広がり鳥たちが一斉に羽ばたきだす。

この雨と雷のサウンド•アフェクトはディレクターの滝瀬茂が1991年8月1日東京の千駄ヶ谷で録音されたとクレジットされてますね。

6.誰かが君のドアを叩いている

誰かが君のドアを叩いている
c/w
愛のシステム(Studio Live Mix)
誰かが君のドアを叩いている(Let it roll Version)
1992.4.8
オリコンチャート最高位9位

このドアを叩いているって「ガラスのジェネレーション」の"ひとりぼっちのドアをKnock"のような表現だと最初は思ってたんだけど、少し違ってたみたい。

詩のテーマは「廃墟の街」と同様に救世主達に溢れる都市。街角のどこにも"神"がいる。そこにはそのようなでたらめの言葉を並べてる"神"がドアを叩いてくる。そんな世界において"君を悲しませるために 生まれてきたわけじゃない"という意思表示。"ほんとうにやりたいこと"がみてとれる。それはボブ•ディランが「オール•アイ•リアリー•ウォント•トゥ•ドゥ」で唄ったテーマに通じているものだろう。

それを解消してくれる対象は"太陽"🟰"神"に"何もかも焦がしてくれ"と。地下鉄の階段を"闇"に置き換えると"光"は出口から差し込む希望。そこに救いがみてとれる。そしてこうも唄ってくれている"素敵な事はまだ訪れちゃいない"

マンドリンとパワー•コードをかき鳴らすギターが印象的なイントロから、ハートランドの真骨頂ともいえるフォーク•ロック•サウンドが聴ける。マンドリンは元春自身のプレイ。実は初めて弾いたそうですね。
小気味良いリズム•ギターと一緒に聴こえる綺麗なアルペジオを多様した長田進のギターも聴きどころのひとつ。
最終ヴァースではダディ柴田の軽快なサックスブロウがこの曲に新たな生命を与えている。

この曲はテンポを決めるのに、20テイク以上レコーディングしたらしいです。

TDKのカセットテープのCMに起用されました。

7.君のせいじゃない

アナザー•サイド•スウィート16とでもいえる様なここにきてかなりヘビーな楽曲。

"君のせいじゃない"の"君"の対象はいろいろな捉え方ができるけど、ある人の不在の事なのだろう。
この楽曲のテーマは救済だとすると、「おれは最低」の様に"愛されている事を突然知る事"で光が見えたの対し、広い空に飛びたいと願うが、心が壊れていってしまう。

サウンドはストリングスが良いスパイスになっているロックンロール。ポコンポコン聴こえるビブラフォンもこの曲のイメージを決めている。
途中の"君のせいじゃない"の箇所の重ねているハーモニーもシビれるカッコよさ。

8.ボヘミアン•グレイブヤード

"僕はどこにでも行けるさ けれど僕はどこにも行けない"このラインは、禅のマインドに通じるものだろう。

ボヘミアンの墓ってまあまあ衝撃的なタイトルなんじゃないかな。アレン•ギンズバーグからビートニク🟰ボヘミアンという答えをもらった80年の中頃から、その"遠い君の記憶ばかり追いかけて"いくのはもうやめようと宣言してる訳だからね。
でもそこは佐野元春。そんな決別を唄っているけど、メロディはとてもポップ。
イントロのパグバイブは「誰君」のマンドリンと同様に元春自身のプレイによるもの。
フィーチャリング•ボーン助谷といえる様なトロンボーンのソロが楽しい。

ドゥンチカドゥンドゥンなど、ボイスパーカッションをしているのは、ドラムスの古田たかしのタムが本当は欲しかったらしいんだけど、叩いてくれなかったから自分で言っているのをそのままレコーディングしちゃっているみたいですね。

9.ハッピーエンド

父親の死と対面した後にこのタイトルをつけたとハートランドからの手紙#52に記述している。

エイジアン•フラワーズ」と「また明日...」がボーナス•トラックと捉えると本編ラストの楽曲。
このアルバムで何曲か登場している越智兄弟のパーカッションとネイティブ•アフリカンのコーラスにより境界線がぼやけていくようなワールド•ミュージックの世界が広がってくる。

ここでのテーマもアルバムのタイトル•ナンバー「スウィート 16」の"I'm gonna be with you"と同様に"いつもそばにいるよ"という約束の唄。

そして「レインボー•イン•マイ•ソウル」でBlueにさよならをし、「ボヘミアン•グレイブヤード」で古い価値観に別れを告げて"新しく始めるんだぜ"と宣言する。

原曲は後にリリースされた『GRASS』に収録してある「ブッダ

"G.O.W"とTime Out !ツアーで披露されたビートルズのカバー「レボルーション」のイントロで聴けるトラックが元になっている。Youtubeで検索すれば見れると思います。

10.ミスター•アウトサイド(リプリーズ)

次の「エイジアン•フラワーズ」に繋がる重要な位置をしめてるんじゃないかな。
ここに初めてでてくるのは、
"君が癒してくれるなら"というライン。

11.エイジアン•フラワーズ

リズム & ドラムマガジン2007年2月号において元春が古田たかしの名演としてあげていた変拍子の楽曲。ちなみに2曲選んでいて、もう一曲は「ホーム•プラネット

原曲の「ディズニー•ピープル」では途中にアジアの国を連呼していたから、この時から日本を含むアジア諸国に思いを馳せていたのは想像はつく。

なんといってもジョン•レノンのイディオムを感じるYeah!Yeah!Yeah!の箇所は聴きどころのひとつ。ヨーコさんに対するリスペクトとも語っていました。

ヨーコとショーンのコーラスも素晴らしい。特にショーンの歌声はお父さんそっくりで、そのあまりミックスを担当していた吉野金次は思わずディレイをかけてそこにジョンがいるような音に仕上げたのだそう。

エンディングに向けてのハートランドの演奏も今までになくハードに決まっている。

12.また明日…

また明日…
1992、1.22
c/w
ナポレオンフィッシュと泳ぐ日(Studio Live Mix)
ジュジュ(Studio Live Mix)
Vocal Featuring 矢野顕子
Cover Art Pegge Hopper
オリコンチャート最高位22位

また明日って言葉は素敵だよね。その後に"逢えるなら"って、切ないんだよ、もしかして逢えないかもしれないってことも含んでいるからね。また明日、逢いたいではなくて、逢えるならって、本当にそうなんだよね。逢えるのが、当たり前ではない世界もあるってことなんだって、そう思う。

矢野顕子の微妙にズレているようで、寄り添う歌声。これがあるとないとでは、かなり印象が違うよね。

ガットギターの音色と複雑だけど優しいハーランドの演奏。余韻を残すようにこのアルバムの幕は閉じます。


音楽性でいうと、ハウス•サウンド、フィル•スペクター➕バディ•ホリー➕ビーチボーイズ、ソウル•ミュージック、ファンク、スポークン•ワーズ、フォーク•ロック、オールドスタイルのロック、ワールドミュージックなどなど様々な形態を体験できるアルバムになりました。

とても美味しそうに見えるチェリーパイ(タルト?)だけど、全体を包むものはパイのように何層にも重なりあっている様です。


このアルバムは第34回日本レコード大賞の優秀アルバム賞と日本ゴールドディスク大賞を受賞しました。
受賞は知らされていなく、事務所に飾ってあったトロフィーを見て気づいたという事だけど、どうなんでしょうね。

長くなりましたが、今回はここで終わりです。
では、また!


参考文献
名盤ライブ Sweet 16 THE BOOK
SWEET 16 30TH ANNIVERSARY EDITION
対談 佐野元春×片寄明人
ROCKIN'ON JAPAN 1992 Vol.63






  





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