マルチタスク
マルチタスクとは短時間で切り替えながら、複数の作業を行なっていくことです。
マルチタスクには個人により得手不得手があり、マルチタスクが得意なのは脳の構造に寄与していると言われ、以前ベストセラーになった「話を聞かない男、地図が読めない女」で男脳、女脳が取り上げられ話題になりました。
狩猟時代に獲物に静かに近づき、一点集中で狩りをする必要があった男性は、脳の構造的にマルチタスクが苦手で、一方、パートナーを待ちながら、他の女性と協力して果物を取ったり子育てをしながら、他のメンバーと会話をする必要があった女性は、脳の構造的にマルチタスクがしやすいと言われています。
脳は実際には1つのことしかできず、マルチタスクに見えるのは2つの脳内部分の切り替えが早いことで同時進行に見えていることが分かってきた。この切り替えが下手だとマルチタスクが苦手だと感じるようです。
マルチタスクが苦手な人も多い。苦手だと感じる人の特徴は、
完璧主義者
「男性脳」にも関係しているのか、特に男性に多い傾向があります。完璧主義である分、作業中に話しかけられると、少し違う要素が入ったり、他の業務を頼まれたりなどのイレギュラーに対応することが、ストレスに感じるようです。
目の前の作業に集中できるという特性もありますが、その分短時間で作業を切り替えるのが難しくなります。
スケジュール管理が苦手
今あるシングルタスクに集中することはできても、複数の業務を同タイミングで渡されると、作業が止まってしまうというケースです。どこから手をつけていいかわからなくなる、納期が混乱してしまうなど、スケジュール化にとまどってしまうようです。
マルチタスクはいくつかのタスクを同時進行させるため、メリットが多いイメージですが、実はデメリットもあります。
メリット1
同時進行で複数の仕事ができる
複数のタスクをこなすことができるため、納期や締め切りが同じ業務を請け負うことができます。
突発的な依頼にも対応しやすいため、上司としても仕事を振りやすく、より仕事が任されるようになるというメリットがあります。
逆にマルチタスクが得意な上司の場合、部下はいつでも上司に相談しやすくなります。部下は上司とコミュニケーションが取りやすく、チーム全体が円滑に動きやすくなります。
メリット2
全体像が確認できる
同時進行で複数の作業を進めることで、より全体像が把握しやすくなります。たとえば販売計画を考える時に、目の前の資料ばかりに集中して書く作業に集中するのではなく、思いついたアイデアを問い合わせたり、調査も並行でできるため、深みのある資料作成が可能になる。
デメリット1
マルチタスクは生産性が下がる
マルチタスクは一見効率がよいように見えますが、しかし実際はひとつの物事に集中する方が作業効率はあがります。一旦別の仕事に手をつけてしまうと前の仕事をどこまでやっていたかを思い出すのにロスが生じて、作業効率が落ちてしまう。
また同時並行に納期があるため、ひとつ滞ると複数の業務の納期が一度に停滞するために、焦りやすくなるというデメリットが生じます。
ではマルチタスクができるようになるにはどうすればいいか?
マルチタスクが得意な人は、脳内での切り替えが早い人だと前述しました。しかしマルチタスクが苦手でも考え方を変えるだけでできるようになるコツがあります
・シングルタスクをたくさん終わらせると考える
コロンビア大学が考案した「タスクシフト」というテクニックがあります。事前に複数のタスクを切り替えるタイミングを決めておくというものです。外部からの要因で作業が中断されるのではなく、あらかじめ設定したタイミングで作業シフトするほうが効率はあがることが分かっています。このテクニックをベースにします。
まず現状の手持ちのシングルタスクをすべて書き出します。長期タスクも、短期的タスクも洗い出し、その中で翌週の1週間以内にすべきことをピックアップします。拾い上げたタスクに時間と重要度で優先順位をつけ、自分のもつ業務を可視化します。 マルチタスクも多くのシングルタスクの集まりです。マルチタスクを行うために、まずは全部をシングルタスクに分解するというイメージです。シングルタスクの各々のかたまりで管理していきます。また能動的にタスクシフトすることで、脳内の切り替えやマルチタスクが苦手な方も切り替えることができるようになります。
・先に120分ごとに時間を区切ってタスクを割り振っておく
次に1週間のタイムスケジュールに2時間、120分ごとのタイムボックスを設定します。たとえば午前中の2時間、10時から12時までを1ボックス、午後は13時から15時まで、15時半から17時半までなどを2ボックスに設定します。1週間、5日勤務であれば、勤務時間にもよりますが、15〜20個程度のタイムボックスができるでしょう。そこシングルタスクを複数終わらせると考える時に洗い出したタスクを優先順位にそって埋めていきます。
最近はポモドーロテクニックという25分間作業をして、5分間の休憩をとるというテクニックも出ています。しかし、個人的には大きなタスクを終了させるには25分ではやや短いように感じます。また人間は2時間が集中できる最大時間といわれているため、時間管理ノウハウを販売する際は、2時間を推奨していました。もし2時間が長いように感じる場合は、ご自身の集中時間を計測してみて、効率のよい集中時間にあわせてみるといいでしょう。
1週間の業務が15〜20個の大きなタスクボックスで終わらないと感じるなら、すでに翌週は業務がキャパシティーオーバーしている可能性があります。優先順位の低いもので、取り組むことをやめたり、延期したりできるものがないかの調整が必要だということです。
・関連する業務をまとめてこなす
業務を事前に洗い出すことで、翌週にすることが明確になります。また電話をかける、メールを確認するなど共通するタスクはまとめて処理するとよいでしょう。2時間のタスク時間の合間に30分間のオフタイムをとり、スモールタスクの時間を作ります。そこで共通するタスクはまとめてこなしてしまいます。マルチタスクが苦手な方は、目の前のことには集中できても、何か邪魔が入ると、同時にあれこれ考えられないという方が多いのですが、邪魔はまとめてしまうことで邪魔にならなくなります。あらかじめ決めた目の前のことに集中することができます。
また大きなタスクボックスで作業中に思いついたアイデアや、細かい業務はメモをしておき、あとで時間を決めて確認します。2時間の作業中はできるだけ集中できるような環境を作り、まわりに2時間後に戻る旨伝えて場所を変えて作業をする、2時間は電話を取り継がないように依頼するなど集中している時間であることを伝えると効率があがります。その後の30分間に電話やチャット、メールの確認をするようにし、部下にもその時間に相談をしてもらうように依頼することで作業は中断しません。1日で並行して3つから4つのタスクを走らせることができるため、作業効率があがるだけでなく、毎日マルチタスクで業務遂行ができるようになります。
ここまでが、マルチタスクについての論述になります。
最後にこれは僕個人としての考えです。マルチタスクは男女間や個人差でも大きな異なりがある機能です。最近よく取り上げあれるジェンダー問題についても女性が男性より優れている部分が多岐にわたりあります。逆も然り、お互いの得手不得手をちゃんと理解し、助け合いながら仕事をしていくことこそが、ジェンダー問題の解決の糸口になり、全ての人が本当に求めている男女雇用機会均等に繋がるのではないでしょうか。
そんなことを思いながらこの文章を結ばさせてもらいます。