Dancer in the kitchen

※実は本業に関わる事が最も書きづらい為、支離滅裂になったら陳謝します。

飲食店を選ぶ基準って、なんですか?

そう聞かれるとはたと迷う。ガッチガチの飲食畑にいる癖に。
フレンチ、イタリアン?和食?

ここから先は本当に私の職業病について語る。偏愛にも程がある基準故、本当に一般的ではない。
しかし凄く感動している。それはマジだ。だから行きます、茶を沸かしながら聞いてください。

私が偏愛している飲食店のスタイルは2つ

1.オープンキッチン
2.カウンターのあるバー

両者に共通するポイントは、絶対にカウンターで無ければならない事だ。

超個人的な話になるが、小規模型の『餃子の王将』で本日へらへら飯を食していた。席はほぼ満席で、全席にギッチギチにお客さんがいるピークタイム。
っていうか王将にピークタイムでない時間ってあんのかな。
席に着き、のんきに天津炒飯と海老チリと、あとなんか頼んでキッチンを眺めていた。

凄え。というか久し振りに見た。

オープンキッチンやバーカウンター、というのはあまり馴染みが無いかもしれないが、その飲食店のオペレーションの全てを観察出来る唯一の場所である。
大半の店はクローズドキッチンの為、裏側は常に隠されている。だけどオープンキッチンとはいわば舞台、全力でオーダーをぶん回すショーを見せなければいけない。満席時のオーダーをぶん回す王将のオペレーションを見て、なんか感動したのだ。

結構簡単なオペレーションで組んでいるな、と思う。もやし、にら、キャベツを放り込む、油を入れる、卵液を入れる、強火一択、時間との勝負、その間にもう一人が海老なんかを揚げる、餃子を焼く、なんて事をやる。さらにもう一人が皿などを用意する。切ってある食材を補填するなどする。そんなところ。ただセンターはコンロの前に立つ一人だ。

さあ開始だ。
餃子6個、天津飯、キムチ炒飯、五目そば、ホルモンの味噌炒め、海老チリ、唐揚げ、餃子3つ、極王天津飯、回鍋肉、麻婆豆腐、麻婆豆腐ジャストサイズ、唐揚げジャストサイズ、肉と卵の炒り付け、天津炒飯2つ、ラーメン、ニラレバ、野菜炒め、炒飯、酢豚、八宝菜、ちゃんぽん、もやし炒め、海老チリジャストサイズ、などなどなどなど。
息もつかせぬオーダー、止まらぬ伝票、頭を沈め、メニュー同士の組み立てを一瞬で判断、もやし、にら、豚肉なんかを中華鍋に放り込む、油を放り込み火にかけ、次のキャベツ、卵液なんかを中華鍋に放り込みもう片側の火にかける、次を火にかけている間に野菜がしなる。調味料なんかを中華お玉でバシバシ入れて、一気に振るい混ぜる。次、調味料を放り込み、また戻って最初の鍋の中身を皿に盛り付け、次の鍋を振るう、終わった鍋を火にかけたままお湯をお玉で鍋に入れ、ブラシで一気に汚れを削ぎ落とし、次、次。

息もつかせぬ攻防戦だ。全然書ききれない。これだけの事を全て一人で行う。もちろんチームの力量でスピードは大きく変わる。食器を置いておく場所、調味料の配置、食材の量、1ミリだってずれてはならない、後ろを通る時だって阿吽の呼吸がなければズレる、全てのピースが揃って寸分なく埋まらなければ完成しないし、完成しても次、終わりなどない。リードタイムは一分一秒を争う世界。厨房にいるスタッフ全員がアイコンタクトすらない先読みの動きが出来なければ、詰み。
そう。超繁忙店のオープンキッチンは、まるで一つの舞台で、スタッフはパフォーマーなのだ。

ブラボー、マジでブラボーだ。一瞬の判断力、圧倒的に鍛錬によって鍛えられた腕、無駄のない動き、呼吸、誰にでも出来る仕事じゃない。

数年前まで、私もそういうオペレーションの中で仕事をしていた。毎日くたくたになりながら、滝のように流れてくる伝票を捌き倒した。舞い、踊り、ステップを踏み、フライパンを振るい、包丁を振るい、いつになったら終わるのか分からないダンスを踊り続けた。

作業自体は、誰にでも出来る仕事かもしれない。もっと機械化すれば良いのかもしれない。辛い、キツいと言って飲食を離れる人間は後を立たない。評価される仕事ではないかもしれない、薄給かもしれない、休みがないかもしれない、収益性がないかもしれない、競合の数は限りないかもしれない。

でもこの壮絶な舞台を前に、つまんねえ仕事だな、とか、なんでそんな仕事やってんの?なんて本当に言えるだろうか?
機会があったら、観て欲しい。
料理人の所作、一人舞台、強烈なオペレーション、バーテンダーのスマートな所作、動作、シェイク、ステア、その全てを目に焼き付けて欲しい。

全て、目の前のあなたの為だけにやってることだ。

いいなと思ったら応援しよう!

薄情屋遊冶郎
サポートはお任せ致します。とりあえず時々吠えているので、石でも積んでくれたら良い。