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経営者がnoteを書こうと思ったら読むnote

まず自分の年表を作る

経営者が「noteを書こう」と思ったら、具体的に何から始めればいいのでしょうか?

まずは自分の「年表」を作ってみましょう。年表はそのままコンテンツにはなりませんが発信戦略を考えるうえでの補助線になります。

たとえば「22歳で大学卒業と同時に就職。30歳でITベンチャーに転職」といった年表があれば、そこから「転職のきっかけって何だったっけな?」と思い出すきっかけになります。

「何を発信するか?」の前に「誰が発信しているか?」

多くの人は「発信しよう」と思うと「さて、何を発信しようかな?」と真っ先に考えます。でもここで見落としがちなのが「誰が発信しているか」ということです。知らない人の話は聞いてもらえません。とにかく「何を」の前に「誰が」を固めなければ何を言っても聞く耳を持ってもらえません。

まずは「自分は何者なのか」を伝えることです。

最初から事業内容やビジョンの話をしても読んでもらえません。社内の人すら読んでくれないかもしれません。そういうときにまず大事なのが「誰が書いているか」「あなたは誰なのか」を明確にすることなのです。

同じことを言っても「誰が」の部分が固まっている堀江貴文さんや落合陽一さんが言うのと、知らない会社の経営者が言うのとではやはり届き方は変わってきます。

これは現実的な話です。

「結果として」自己紹介になるコンテンツを

「誰が」の部分を固めるためにも、まずは「自己紹介」をすることです。

ただし、この「自己紹介」も「私は〇〇と申しまして、こんなことをしています」という普通の自己紹介だとあまり読んでもらえません。

社員や関係者であればそれでも読んでくれるかもしれませんが、もっと多くの人に読んでもらうためには、ちょっとした工夫がいります。その工夫とは「結果的に自己紹介になるようなコンテンツにする」ことです。

スタートアップ企業であるリチカ代表の松尾幸治さんは、こんなタイトルのnoteを公開しています。

インパクトあるタイトルに「なんだろう?」と思った方も多いと思います。「まわりがスゴすぎて吐きそう」だなんて親近感も湧きます。

このnoteでは、松尾さんのこれまでの人生が語られ、最後に「こんな会社をつくりたい」「こんな世界をつくりたい」といったビジョンが書いてあります。コンテンツとして読み進めていくだけで、松尾さんやリチカという会社を深く知ることになります。

このnoteは1400近くの「スキ」を獲得しています。これがもし「僕がこの会社でやりたいこと」といった切り口だったら、この1000分の1くらいしか読まれなかったかもしれません。

このように「結果的に」自己紹介になるようなコンテンツが出せるとベストです。読者にとって「いつの間にか自己紹介を読んでいた」となるような体験。それが実現できれば、自己紹介noteに続くコンテンツにも興味を持ってくれる人は増えるでしょうし、中長期にわたって伝わり方に大きな差が生まれていきます。

「経営者の半生」は強力なコンテンツになりうる

「経営者の半生」は外さないコンテンツです。

1本目はまず、自分自身の半生を書いてみましょう。「私の人生に興味持ってくれる人なんている?」と思われるかもしれません。しかし、他人の人生の話は「自分ごと」になりうるのです。誰しもが人生を歩んでいて、同じように悩んでいます。自分の半生を披露するだけで多くの読者は「自分ごと」として読んでくれるはずです。

「いやいや、私なんて普通の人生を歩んできただけですから」とおっしゃる方も多くいます。しかし、そもそも「子どものころに両親を亡くし、弟と二人きりで生きてきた」といった波乱万丈な人はほぼいません。

それに波乱万丈な人生は映画にはしやすいかもしれませんが「共感」からはむしろ遠ざかってしまいます。「普通」であるほうが共感する人が多いので、普通の人生のほうがいい面もあります。

ほとんどの人は「会社員の父親と公務員の母親の間に生まれて普通に育った」といったような子ども時代です。それでも「普通の家庭で生まれ育ったのに、リスクを取ってまで経営者になった」というのが面白いのです。

僕が取材した経営者の中には「親がどちらも教員で、厳しく保守的な家庭だったけれど起業を選んだ」という方もいました。共感する人はいるでしょうし「保守的な家庭で育つと逆に反発するんだな」といった感想を抱く人もいるでしょう。

このように、共感されつつ興味を持たれる部分もあるといいでしょう。イメージとしては、共感が8割、驚きや新規性が2割ぐらいです。

「創業秘話」が広まるとファンが増える

特に創業者であれば、会社を作る前後の「創業秘話」は最強です。

創業期にはたくさんのドラマが詰まっているはずです。ぜひ自分たちにしか語れない創業期について発信してください。

なぜ、リスクを負ってまで会社を作ろうと思ったのか?
その際にいちばん苦労した部分はどこか?
どうやって人を集めたのか?

それを書いていくだけでも面白いストーリーになるはずです。そして、あなたに続く多くの起業家の参考にもなるはずです。

多くの人に「創業秘話」が知られると「ファン」が増えていきます。

Facebookが大学内で学生同士をつなぐサービスから始まったことは有名ですし、松下幸之助は体が弱いことに不安を感じ、改良ソケットを作って独立しようと決意したのが創業のきっかけだそうです。こういう創業秘話を知ると共感せざるをえません。

「人を集めるのが大変だった」「四畳半の部屋から始まった」「残高が底をついた」などベタかもしれませんが、そういった創業期の苦労話に人は惹かれるものです。

UUUM創業者の鎌田和樹さんのnote「永遠のベンチャー企業『UUUM』創業物語」には、HIKAKINさんと出会いその後チャンネル登録者数の多い順に「ユーチューバーに会いに行く旅」をしていた話が書かれています。

こうした裏話を知ることができると応援したくなる人も多いはずです。

成功話、自慢話は嫌われる

企業として発信しようとすると、つい「成功話」を語りがちになります。

「会社設立以来、順調に成長し、顧客もこれだけ増え、◯年後に上場も果たしました!」

こういった記事もたまに見かけますが、これだけだと「ただの自慢」に見えてしまって、読者はあまり魅力を感じません。下手をすると「なんだか偉そうだな」と、逆ブランディングになる危険性もあります。

それよりも今の時代は、苦労話や失敗話を書くことをオススメします。

「会社を立ち上げたのはいいものの、お客さんは0人。しばらくはパチンコに通っていた」とか「順風満帆だったのに、不況のあおりで一度倒産しかかり、一時期はカップ麺ばかり食べていた」といった話です。

苦労話、失敗話は多くの人が「自分ごと」にできるので、共感を得やすいのです。

僕自身もSNSを眺めているときに「こんなにうまくいきました」という話よりも「倒産して大変なことになりました」「社員が逃げちゃって一人になってしまいました」「借金を抱えて大変なことになりました」という話についつい目が行ってしまいます。

人は他人の失敗から学びたいと思うもの。少し躊躇するかもしれませんが、恥を忍んで苦労話を書いてみてほしいと思います。

たとえばこんなコンテンツは共感を呼びます。

これはある印刷会社の二代目社長の奮闘記です。

メインクライアントだった家電量販店のチラシ発注がなくなりピンチになるものの、その後「社内報」の制作に舵を切り、復活を遂げたことが書かれています。

もしこれが「社内報で儲かった話」だったら読んでもらえなかったでしょう。注文が減り続け、苦労した様子も描くことで多くの人の共感を呼ぶことができたのです。

軌道に乗ったブレイクスルーなできごとを書く

苦労話、失敗話は面白いのですが、さすがに「じゃあここに依頼しよう」「採用に応募しよう」とはなりにくいかもしれません。

よって会社がうまくいくようになったターニングポイント、ブレイクスルーしたできごともセットで書きましょう。すると、ただの「面白い話」で終わらずに、信頼性・ブランドにつながります。

下がってから、上がる。印刷会社のnoteも「ピンチからの復活劇」だったからこそ、グッときたわけです。

SNSの向こう側には、仕事や人生でうまくいかずに悩んでいる人がたくさんいます。失敗を恐れてチャレンジできずにいる人も多くいる。そういうなかで「苦労したところからどう立ち直ったのか?」「失敗して、その苦境をどう打破してきたのか?」というストーリーを書けば、そういう人たちを励ましたり、勇気を与えることができます。

コンサルティング会社のドリームインキュベータ代表の三宅孝之さんの「創業時の事業を失った会社が、3000億円級ビジネスの支援で復活できた話」というnoteにもピンチからの復活劇が描かれています。

うまくいっている現状だけを書くのではなく、それまでの経緯を書くと自然に「面白いコンテンツ」になります。

どんな商品も、どんなサービスも、たった一人のお客さんから始まったはず。何もなかったところから、どうビジネスを作り上げていったのか? それを多くの人にシェアすることは人類を前に進めることにもなると思うのです。苦労話や失敗話も含めてぜひ書いてみてください。

ビジョンだけ書いても伝わらない

「これからこういう世界を実現させたい!」というビジョンを書くのもオススメですが、実はビジョンだけをまとめてもそこまで読んでもらえません。そこに「人」が見えないので、あまり魅力的ではないのです。

そこで、ビジョンを語るときは「原体験」とともに書くことをオススメします。「なぜそういう世界にしたいと思ったのか?」「なぜそういう会社にしたいと思ったのか?」など、描いている世界に影響を及ぼしてきた経験を書いてみるのです。

具体的なエピソードが混ざることで、経営者のパーソナリティも伝わり、面白い記事になるはずです。

NOT A HOTEL代表の濱渦さんの「僕たちは『世界をもっと楽しくする会社』を目指すことにした」というnoteは同社のビジョンをまとめたものです。この記事には、ビジョンだけでなく、そのきっかけとなったエピソードが書かれています。

本来であれば、こういったミッションやビジョンを発表するようなnoteにはあまり反響がありません。社員や関係者が見つけて「社長が書いているからいいねしてあげよう」という人がいる程度。ですが、この記事には「スキ」が200以上ついています。おそらく第三者にもきちんと伝わったのだと思います。

「応援したくなる企業」になろう

このようにnoteを書いていると、自然と応援する人が増えていきます。

もちろん、事業自体が素晴らしいというのもありますが、それに加えて、企業や経営者の「思い」を読んだ人と共有できるからです。

思いを共有できると、その会社に合う人、会社を成長させてくれる人がどんどん入社します。それによって、さらに事業も伸びていく。すると、面白いこと、ワクワクすることがどんどん生まれるので、さらに発信力が増して、強力なスパイラルになっていきます。

経営者が何かを始めようとすると、足を引っ張る人が現れることがあります。足を引っ張らないまでも、嫉妬されたり、無視されたりすることもあり得ます。でも会社が「応援されるモード」になっていればそういうことは起きづらくなる。むしろ、お客さんだけでなく他の経営者も応援してくれるようになるはずです。

うまくいく企業は「推される」企業である

これからの企業がうまくいくためのキーワードは「推し」です。

企業が「推される」と、事業がうまくいくのはもちろん、優秀な人も集まってきますし、投資も集まるでしょう。逆に「推されない」企業は、たとえ一瞬事業がうまくいっても、採用には不利だし、お金も集まってきません。

では、推される企業になるにはどうすればいいのか? 

まずは事業・プロダクトを磨くことです。あたりまえですが、いちばん重要。そもそもの事業やプロダクトが社会に貢献していたり、課題を解決したり、素敵なものじゃないと推してはもらえません。

2つめはその事実を伝えることです。「いいものだけ作っていればそれでいい」というほど甘くないのが現代です。競合だって多いし、みんないいものを作っているのは同じ。どこで差別化するかというと、その事実を伝えること。きちんと認知を獲得することです。

さらに、裏にある思いやストーリーを伝えられればベスト。「美味しいリンゴ」というよりも「無農薬にこだわった農家が20年かけてたどり着いた美味しいリンゴ」のほうが「推せ」ます。

さらに付け加えるなら、自画自賛しないことも大切です。ことさらに自分たちを褒めたり、派手に宣伝したりするのはむしろ逆効果。あくまで自分たちのことを素直に語る。事実ベースで伝える。そしてゆくゆくは「自分で言う」のではなく、第三者から「言ってもらえる」ようになれば最高です。「俺すごいでしょ」よりも「あの人すごいよ」のほうが強力でしょう。それが真の「推される」企業なのです。


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