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パンで学ぶスウェーデン語単語(4)

パンで学ぶスウェーデン語単語(1)で bröd(パン)をとり上げましたが、今回は bröd を使ったイディオムや表現・格言などを見ていきます。

おおむね、パンが「食料全般」、「生活の糧」の意味で使われています。以下では Svensk ordbok の bröd の項に載っている5つの表現をとり上げていきます。例文は同辞書やコーパス、イディオムの書籍から取ってきたものです。

1. bröd och skåde­spel(パンとサーカス)

パンとサーカス(羅: panem et circenses)は、詩人ユウェナリス(西暦60年 - 130年)が古代ローマ社会の世相を揶揄して詩篇中で使用した表現。権力者から無償で与えられる「パン(=食糧)」と「サーカス(=娯楽)」によって、ローマ市民が政治的盲目に置かれていることを指摘した。パンと見世物ともいう。愚民政策の例えとしてしばしば用いられる名言であり警句である。(Wikipedia パンとサーカスの項から)

上記にもある通り、スウェーデン語版はskådespel(演劇)となっているので、「見世物」という意味で使われていますね。コーパスを見てもこの表現を使った例が散見されます。

Regeringar ger bröd och skådespel med ena handen och monterar ner den sociala omsorgen med den andra. (政府は一方でパンとサーカスを与え、他方で社会保障を解体する。Webbnyheter 2005 より)

2. den enes död, den andres bröd(一方の死は他方のパン)

一方にとって悪いことが、同時に他方にとって良いことである場合があるという意味。英語だと One man’s meat is another man’s poison日本語だと「甲の薬は乙の毒」になりますでしょうか。さてこの格言。どのように使われているか見ていきましょう。

Tack vare att den andra affären stänger igen får vi sälja mer. Den enes död den andres bröd.(他の店が潰れてくれれば、我々の売り上げが増える。一方の死は他方のパンだ。Luthman Hans (2002) Svenska Idiom. より)

次のように少し変形させたヴァージョンも良く見られます。

Trafiksiffrorna för oktober med allmän nedgång för SAS men starkt uppåt för Norwegian vittnar om att den enes död inte behöver bli SAS bröd.(10月の旅客数でSASが全般的に減少し、ノルウェージャン航空が急激に増加しているのを見ると、一方の死がSASのパンには必ずしもなってないことを物語っている。SvD:2008-11-08)

アイスランドの金融危機を受けて、スターリング航空というアイスランドの格安航空会社が破産したが、SASの旅客数が増加せず、逆に減少したということを伝える記事です。元の格言の後半部分を変えて、上手に表現しています。ちなみに SAS bröd の部分ですが、SASが -s で終わる(固有)名詞のため、属格(所有格)の -s が現れていません(× SASs bröd)。

3. ge/bjuda bagar­barn bröd(パン屋の子供にパンを与える)

不要なこと、無駄な骨折りのたとえ。日本語だと「屋上、屋を架す」、「高みに土盛る」あたりが相当するでしょうか。ただ、このイディオムはコーパスなどで探してもあまり見つからず、それほど使用頻度は高くないようです。

... och medan Susie bjöd bagarbarn på bröd fick Ellen en chans att beta av alla inneliggande order som ständigt hade vuxit i antal.(Susie がパン屋の子供にパンを売る[無駄な骨折りをする]一方で、Ellenは増え続ける注文をすべて自分のものにするチャンスを得た。 James, Erica (1999) Kärlek eller förnuft より)

ちなみに、bjudaは bjuda någon (på) något の構文を取ります。上記の例文では オプショナルな på が現れた例です。

4. (leva) på vatten och bröd(水とパンでしのぐ)

お金がなく、貧しい食事で生活することのたとえ。

Mot slutet av månaden var hon pank och levde på vatten och bröd.(月末にかけて彼女は無一文になり水とパンでしのいだ。SUC-romanerより)

SAOB によると、vatten och bröd という表現は、かつて刑務所において、食料としてパンと水しか与えられない罰を表す表現として使われていたそうです。

5. ta brödet ur munnen på någon(口からパンをとり上げる、生活の糧を奪う)

英語でも同じイディオムがありますね。take(the) bread out of a A’s mouthで「生活の糧を奪う」の意味になります。

[S]truktur­omvandlingen tog brödet ur munnen på många an­ställda[.](構造改革で多くの従業員は食い扶持を奪われた.Svensk ordbokより)

以上、brödを使った、イディオムや表現を見てきました。3の表現以外は、現代のスウェーデン語でも比較的よく使われる表現のようです。

あと1回、その他の単語が含まれる、表現をみたいと思います。


記事を読んでいただき、ありがとうございます。