教#015|学力低下のトレンドは、押し止められない所まで来ている~「漫画:二月の勝者」を読んで⑩~(たかやんnote)
私は、1975年に早稲田の政治経済学部に入学しました。受験科目は、英語・国語・世界史の3科目です。社会は、日本史を選択する受験生が多く、それは、今でも同じ傾向です。割合で示すと、日本史・世界史・政経・数学の比率は、3対1対0.4対0.3くらいだと、私の経験から推測しています。国立大学を受験する生徒の多い学校は、私大文系を数学で受験する生徒が、かなりいる筈です。公立の中堅校には、本気で国立大を目指す生徒は、ほとんどいません。上位校は、国立大を目指します。そこが、上位校と中堅校との違いです。
大学に入学して、一番、困ったことは、理論経済学の本が読めなかったことです。私は政治学科でしたが、理論経済学Ⅰと、Ⅱは、必修でした。大学1年でⅠを取り、2年でⅡを学びます。理論経済学は、つまりケインズの近代経済学です。マル経(マルクス経済学)の先生もいましたが、マル経を学んでいる人は、ほとんどいなかった筈です。とにかく必修は、近経(近代経済学)でした。
サミュエルソンが書いた、経済学の本がテキストでした。早稲田の古本屋街を廻って、サミュエルソンのテキストを買いました。が、読んでも理解できません。グラフが図示され、微積を使って最大最小値を求めます。私は、高校時代、文系で、数ⅡBまでしか学習してません。微積は、数Ⅲのカリキュラムでした。数Ⅲの全部は必要ないと思いますが、微分積分を学習しない限り、経済学は理解できません。高校で数学を捨てたツケが、早々と廻って来たと言えます。ただ、理論経済Ⅰ、Ⅱの担当は、仏のI先生と言われている方でした。取り敢えず、いっぱい書いておけば、最低限の成績は確保されると云う噂でした。数学の勉強をするか、噂を信じるか。大学生ですから、楽な方を選びます。噂を信じました。この年は、試験はなくてレポートでしたが、理論経済には関係なく、古典主義経済学から、近代経済学までの歴史を、gdgd書いて(文章をgdgd書くことは得意技です)結果、「良」を貰いました。私以外にも、仏のI先生に救われた学生は、numerous いる筈です。
先日のアエラに「数学を捨てるな」と云うタイトルで、特集記事が巻頭に掲載されていました。地方の県立高校は、国立志向なので、数学は捨てません。安直に数学を捨てるのは、首都圏の中堅校の生徒たちです。まさに、私の目の前にいる生徒たちって感じです。私自身、数学を捨てた人間です。「数学を捨てるな」と、声高に言うのは、正直、抵抗があります。が、今、結構、数学はトレンドなんです。
データサイエンス、ビッグデータと云った言葉が、大流行して、数学がもてはやされて、猫も杓子も数学に向かうみたいな流れが、一部に起こっているんだと思います。日本人って、流行とか流れに、すぐに乗っかってしまいます。本当に数学が必要かどうかを見きわめないで、うかうか流行に乗せられてしまっていると云うとこもあります。ビッグデータを扱うのに、特別な数学知識は、おそらく必要ないと私は思っています。ソフトを構築するエンジニアには、数学的な素養は、もちろん必要です。が、使う人は、データを見て、使えばいい訳で、データの分析は、おそらくソフトがやってくれる筈です。
私が卒業した早稲田の政経学部は、来年の入試から、数学が必修になります。大学入学共通テストも必須にしています。そこで、英語・国語・数ⅠAを必修にして、選択科目で地歴・公民・理科・数ⅡBの中からひとつ選ばせます。数ⅠAを必修にしたら、どうしたって、選択科目は数ⅡBを取ります。数ⅠAをやって、世界史・日本史を選択すると云った大変なことを、私大受験生は、やりません。社会を選択する生徒は、ほぼいなくなると思われます。受験生は、おそらく半減する筈です。今までですと、重箱の隅を、徹底的に引っかき廻した、社会の細かい用語を覚え込まなきゃいけなかった入試から、しごくまともで、平凡、素直な国立型の入試科目にchangeしました。「熱くてヤバいやつらは、要らない。素直で従順な受験生、来て下さい」と云う学校からのメッセージです。東大型の秀才の方が、ITやデータサイエンスとは、親和性が高いと判断した上での大改革だと思われます。
御三家と言われているような難関私立高校の生徒には、数学を捨てると云った空気感はない筈です。数学を捨てた時点で、ゲームを終わりで、負け組です。つまり、難関私立高校の目線で言うと、中堅校で、数学を捨てているのは、最初からゲームにエントリーしてないことになります。実際、私だって、自分の教え子が、難関国立大学や国立大医学部に、進学すると云ったことを、想定したことは、一度もありません。今の学校は、たまに突然変異のように、東工大に現役で進学したりするんですが、私の教え子ではありません。数学的な地頭が、すばらしくいいので、数学を捨てた空気感が蔓延している高校で過ごしていても、勝手に勉強して合格するんです。
中学受験生は、計算と漢字は、徹底的に鍛えます。これは、毎日のルーティーンのようなものです。小4から、毎日、3年間も鍛えられていれば、計算は、1ミリも苦ではなくなります。コペルニクスが、どれくらい苦労して、地動説を計算で割り出したのかは解りませんが、20年くらいは、計算に明け暮れていた筈です。中学受験生は、3年ですが、毎日やってますから、365×3=1095回です。それぐらいやっておけば、即座に計算に取り掛かると云う姿勢は、身に付きます。数学は計算すれば解けます。数学を捨てるとか、論外です。
大学入学共通テストを、大学に入学するための資格テストにしてしまって、数学を必修化すれば、すべての生徒が数学を学ぶことになります。まあ、これは法改正を伴う抜本的な改正ですが、もうそこまで踏み切らない限り、学力低下のトレンドは、押し止められない所まで来ていると推定しています。数学については、良く解りませんが(私自身、数学の問題が解けないので判別できないんです)国語力の低下は、結構、ヤバい感じです。本が読めない。漢字を知らない。文章が書けない。これが、きちんとできる層と、できない層とで、貧富の差が拡大しつつあると想像しています。