自#167|ワイルドサイドをほっつき歩け・・・その④(自由note)
人間は、弱い生き物です。こちらが差別できる時は、往々にして、差別してしまうでしょうし、たとえば、イジメに直接的に加担してなくても、それを傍観してしまえば、差別している側のmajorityの一員ってことに、やっぱりなってしまいます。私は、父親がいない私生児でした。子供の頃は、当然のように差別されました。小1、2の担任には
「母親が水商売で、父親のいない家だから、こんなどうしょうもない子供になってしまったんだ」と、はっきり言われました。「どこが、どうしょうもないのか」と質問したら「教室から出て行きなさい」と、冷たく言われました。素直に教室から出て、その後は、学校に行ったり、行かなかったりと云う小中学校時代を過ごしました。
教員になって、特殊教育の研修を3年間、受講しました。ある養護学校の先生が
「あんたたちは、障害者なんだから、どうしたってイジメられる。だから、イジメに負けないように、強くなりなさい」と、子ども達を励ましている姿を見て、感動しました。「イジメはいけないし、それをやっちゃいけない」などと、道徳的なことを言うよりも、イジメに負けないだけのメンタリティを、つけさせてあげることの方が、はるかに大切だと、自分自身も差別され、イジメられた経験から、容易に理解できます。イジメや差別は、どこに行ってもあります。それに負けないメンタルの強さを、各人が努力して、身につけるべきです。
バブルの頃、イラン系の人が、大量に不法滞在し、不法就労していた時期がありました。高校生のバイト先には、普通にイラン系の若者がいました。私が知る限り、ほとんどの高校生が、バイト先のイラン人を差別していました。差別をしない生徒も、ごく少数はいました。周囲の日本人が、みんな差別をしています。差別をしないと云うことも、勇気と強さが必要です。
差別をしないと云うことを、道徳や倫理の授業で教えることは、まず無理です。アメリカやイギリス、ドイツと云った欧米系の国に、たとえば留学とかで行ってみると、大なり小なり、絶対に差別されます。差別され、被害者の立場に立てば、差別とある程度、本気で向き合えるようになります。
2004年にランカシャー州の海岸で、採貝作業に従事していた中国人移民の方々が、潮が満ちて来る時刻を、雇用主から知らされてなくて、23人が溺死してしまった、痛ましい事故がありました。移民や不法滞在の方が、ヤバい危険な仕事に従事していると云う傾向は、まあ普通にあると思います。今の日本だって、ガテン系などの3Kの仕事には、アジア系や南米系などの労働者(不法就労者も含めて)が沢山います。
ある時期、ブレイディ家の近所に、中国系の方が、二軒の住宅に大勢で暮らしていたことがあったそうです。私も、独身時代、自分の住む6畳のアパートの隣の隣のやはり6畳の部屋に、イラン人が、10人くらい暮らしていたのを、見たことがあります。仕事のシフトが違っていて、10人が、全員、一緒に寝ていたわけでもないんですが、それでも、夜、6、7人は寝ていた筈です。家財道具的なものは、たいしてないんですが、6畳で6、7人が寝るとなると、昭和の初めの頃の人口密度より高いと想像できます。ドラエモンのように、押し入れで寝てたりする人も、2人くらいは多分、いたと思います。私の近所に住んでいたイラン人は、普通の3Kの仕事をしてたと推定できます。ブレイディ家の近所の中国人は、何か、ヤバい仕事に従事させられているのかもしれません。どちらにしても、本来は、親切にしてあげるべき、立場の弱い隣人です。が、ティーンの子供たちは、平気で差別し、攻撃的な行動に出ます。子供と云うのは、考えの足りない、周囲に流される、残酷などうしようもない存在ってとこも、まあ、あります。
「チンク(東洋人に対する差別的な蔑称)は帰れ」とかと差別的な発言をしたり、中国人が住む家に向かって、石や煉瓦を投げたりする子供が出て来たりします。
スティーヴと云うみんなに慕われている地元の顔役が
「ガキどもの差別的な悪さを放置することはできない」と、パブのカウンターで、一席、ぶちます。そうすると、あっと云う間に、パトロールをする自衛団ができあがります。ティーンが悪さをしそうな時間帯に、交代で見回りをすることになります。保守党が、緊縮財政で公共サービスをカットし、緊縮で人員を減らされた警察が、貧民街を放置しているので、貧民たちは自分たちが自治する方向に動き始めているわけです。つまり、貧民街にコミュニティスピリッツが蘇って来ています。が、貧しさが限度を超えると、コミュニティ自体が、壊れてしまいます。食うや食わずの中では、コミュニティを維持することは、とてもできません。
コミュニティが形成される空間も必要です。ハイソなお金持ちたちは、会員制クラブで、それぞれコミュニティを作り上げているわけですが、貧民たちの集う空間は、パブです。が、そのパブが、今、どんどん消滅しつつあるそうです。理由は、簡単で、アルコールを飲まなくなって来ているからです。コロナ禍で、パブ離れは、一層、加速している筈です。家飲みの方が、安上がりだし、人と喋りたければ、オンライン飲み会で喋ると云う流れができてしまうと、パブは、その社会的使命を失ってしまいます。
ある日、突然、二軒の家の沢山いた中国人は、全員、いなくなったそうです。別の地域に連れて行かれて、不法就労しているのかもしれません。あるいは、見回りパトロールが話題になり、移民局に不法滞在がバレてしまったのかもしれません。
ところで、ブレグジットで国民投票する時、おそらく、イギリス国民の多くは、アイルランドの存在を忘れてしまっていたと思います。今から22年前、1998年、ベルファスト合意で、ようやく北アイルランド問題は、歴史的な和平協定を結んで、平和を取り戻すことができたんです。離脱が実施されて、アイルランドと北アイルランドの国境は、原則、閉鎖されている筈ですが、今のとこ、特に何の問題も起こってません。閉鎖と云う「てい」で、実際は、従来通りなのかもしれません。新聞や週刊誌では、報道されないので、このヘンは、池上さんの詳しい解説を聞かないと、解りません。
そもそも、イギリスは階級社会です。まず、大前提として差別ありきの国なんです。階級社会のイギリスから、差別がなくなると云うことは、理論的に言っても、あり得ないことだと思います。