見出し画像

【詩】おっちゃん

きょうも団地に消防車と救急車が来た
おっちゃんがまた火の玉を見たのだろう
おっちゃんは定期的に火の玉を見る

パンツ一丁で団地内を歩く
おっちゃんの部屋は窓が全開で一人暮らしだけど
何やら女のひとのえっちな声が響いている

おっちゃんはきっと
さみしいのだ

ある日おっちゃんは
何やらわめきながら、と同時に口から血をダラダラ流しながら
天神橋筋商店街を駆けて行った

ここは日本一長いアーケード商店街
振り向くひと、振り向かないひと
血だらけのおっちゃんぐらいで日常は何も変わりはしない

おっちゃんはきっと
さみしいのだ

だけど
僕らとこのおっちゃんと
いったいどれだけの違いがあるというのだろう

おっちゃんはさみしい
僕もさみしい
にんげんはみんなさみしい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?