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【FX】ギャンファン全解説・チャート上における角度に意味はあるのか?ギャン・ファンを通して角度へ言及していく


私が興味を持てた数少ないトレーダーの一人

ウィリアム・D・ギャン(William D. Gann)

彼がこの世を去ってからすでに70年が経っている

今回はそんな彼が残した罫線ツールである

ギャンファン・アングルの全てとそこにある

致命的な問題点を通して

チャート上における角度への言及と

高山のアングル論について話していく

■ はじめに ■

チャート上における角度を持った物と言えば何を思い浮かべるだろうか?環境認識に厳密な定義を持った波を利用している私達の場合であれば、それはやはり波であろうと思う。

波の両端は特定の座標であり、座標は(時間,価格)で表す事が出来る。二点の座標を結べば直線が生まれ、その直線の傾きがアングルを生む。

例えばトレンドラインを思い浮かべる人もいるかもしれない。トレンドラインは特定の高値・安値同士二点間に結ばれるラインであるがその二点は波と同様に(時間,価格)の座標情報を含むラインとなり、そこには傾きに応じたアングルが形成される。

これらアングル=角度情報は「チャート側」にとって意味があるのだろうか?

100年前に考案されたギャンファン・アングルの詳細な解説と、そこにある数々の問題点に触れながらチャート上におけるアングル=角度、そして「時間」について考えていこう。

■ ギャンファン(Gann Fan) ■

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ギャンファン(Gann Fan)とは、今から約100年前にウィリアム・D・ギャン(William D. Gann)によって設計されたテクニカル分析ツールであり、主に価格と時間の相互関係を理解し、未来の価格動向を予測するために用いられます。ギャンは、金融市場におけるサイクル理論や幾何学的手法を重視し、これに基づいてギャンファンを設計したとされています。

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ー ギャンファンの目的と背景 ー

価格と時間の関係を視覚化する: ギャンは、価格と時間が一定の法則に従って相互に作用すると信じており、ギャンファンはこの関係を可視化し将来の価格動向を予測するためのツールとして設計された。

市場のサポートとレジスタンスレベルを特定する: ギャンファンは、価格がある一定の角度で進むことを仮定しており、その角度に基づいて市場の重要な価格レベル(サポートやレジスタンス)を特定する事を目的としている。

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ー ギャンファンの設計過程 ー

ギャンファンは以下のような考えと過程を経て構築された

①価格と時間の対称性: ギャンは、市場における価格変動は時間軸との対称性を持つと考えた。例えば価格が時間と同じ速度で変動する場合、それは均衡状態にあると見なす等。ギャンファンの最も重要なアングル「1x1ライン」(45度ライン)は、この価格と時間の均衡を表しています。角度については後述する。

②幾何学的アプローチ: ギャンの理論は幾何学的な図形や角度に基づいている。彼は特定の角度が市場において重要な役割を果たすと考えた。このため、ギャンファンには異なる角度のラインが描かれ、それぞれの角度が市場の異なる動きを予測するために使われている。

③アングル(角度)による予測: ギャンファンの設計においては、価格の変動がどの角度で進行するかによって将来の価格動向を予測している。例えば「2x1ライン」(63.5度)は、価格が時間の2倍の速度で進行することを意味し、これは急激な価格変動を予測するのに役立つとした。通常、ギャンファンの中で重要な意味を持つアングルの事をギャン・アングルと言う。

④数学的基盤: ギャンの手法には、フィボナッチ数列やその他の数学的な比率が関係しているがギャンファン自体の具体的な計算式は価格と時間の進行に基づいて角度を設定するシンプルなものでした。例えば、1x1ラインは45度で引かれ、この角度が時間と価格の関係が等しいことを示します。

■ ギャンファンの角度の概要 ■

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ギャンファンは中心となる基準線から特定の角度で放射状に引かれる線で構成されている。これらの線は時間と価格のバランスを示し、各角度が異なる市場の動きやサポート・レジスタンスレベルを示すと考えられている。ギャンファンにおけるギャンアングル(角度)の基本的な展開様式は次のように定義・設定がなされている。

1x8 (82.5度): 価格が8単位動くごとに、時間が1単位動くことを示します。ほとんど垂直に近い角度で、非常に急激な動きを示します。

1x4 (75度): 価格が4単位動くごとに、時間が1単位動くことを示します。非常に急激な価格の動きを示します。

1x2 (63.75度): 価格が2単位動くごとに、時間が1単位動くことを示します。これは、価格の動きが急激であることを示します。

1x1(45度): 価格が1単位動くごとに、時間も1単位動くことを示します。これはギャンにとって最も重要な角度であり、「完全なバランス」を示すものとされています。価格が1x1ラインを上回ると、強気相場とされ、下回ると弱気相場とされます。このラインが基準線となる。

2x1 (26.25度): 価格が1単位動くごとに、時間が2単位動くことを示します。これは、価格の動きが遅くなっているか、時間がより重要な要因となっていることを示します。

4x1 (15度): 価格が1単位動くごとに、時間が4単位動くことを示します。非常に緩やかな価格の動きを示す角度です。

8x1 (7.5度): 価格が1単位動くごとに、時間が8単位動くことを示します。ほとんど水平に近い角度で、非常に緩やかな動きを示します。

■ ギャンアングル(角度)はどこから来た? ■

そもそも今見てきた角度はどのように算定・選定された物なのか?基本としては自然数比率。自然数(1, 2, 3, 4, 8など)を基にして設計されています。これはギャンが信じた「自然界の調和」をその価格と時間の調和に適応した物であり、基準となる45度はチャート上においてはある種普遍的な角度でもある、とギャン氏は考えていたようです。(私は完全に否定しますが)

計算方法はとてもシンプルであり具体的にはギャンアングルは「価格の単位変化」を「時間の単位変化」で割ることで計算されます。例えば、1×1の角度では、価格が1単位上昇するのに1単位の時間が必要であり、チャート上では45度の角度として描かれます。

これらの角度は、時間軸と価格軸が同じスケールであると仮定して計算されます。したがって、正確なギャンアングルを得るためには、チャートのスケール設定が非常に重要だ、とギャン氏も言っている訳ですね。

又、すべてが同じ計算過程によってアングルが計算されている訳ではないようです。例えば4x1 (15度)となっています。「1x4」の関係を示す角度は、時間に対する価格の変動率として定義されますがこれは tan(θ) = 価格の変動率 = 1/4 で求められます。この値を計算すると、θ ≈ 14.04度になります。

つまり実際には、ギャンの理論では単純な三角法だけでなく、より複雑な市場理論や経験則も考慮された上でアングルの選定が行われているという事です。その点に一貫性や再現性があるのかについてはギャンのみぞ知ると言ったところでしょう。なぜなら後に出されたいくつかの書籍の中にその点についての詳細な記述は無かったのですから。

◆ 補足説明 ◆

今紹介してきた各アングルの解説を読んで頂ければわかるかと思いますが、ギャンファンは現行スイングに対する形成ペースの評価を行っています。現行のスイング、或いはスイング内におけるトレンドの形成ペースが速いのか遅いのか、強いのか弱いのかについて。

ギャンファンはその使用時に出力元の対象となるスイングが二つ存在します。一つは現在形成中の現行スイング、そしてもう一つは現行スイングから見て一つ前に形成されたスイング。現行スイング=波の始点から展開するアングルはその形成ペースの評価のために。一つ前のスイング=波の始点から展開するアングルは現行スイングの波の行先、つまり値の先を予測するためのレジスタンスラインとして。

この使用方法に従う場合、厳密にはリアルタイムでは常に二つのギャンファン・アングルが展開していく必要がある。

現行スイングの始点から描写する現行スイングの形成ペースを評価するギャンファンと一つ前のスイングの始点から描写された現行スイングに対するサポレジを目的として利用するギャンファンの二つが。

※上記の波は厳密な定義によって描かれている

しかしそもそも形成ペースの評価は有用?

強いから/弱いからどうなのだろうか

ファン使用の主要目的は二つ。現行スイングの終点になり得るラインを予測。形成ペースの評価。

だとするなら形成ペースの評価は無意味である

なぜなら二つの目標のうち、一つが到達地点=ラインの予測であり、その到達ラインの選定に形成ペースの評価が関係するという考え方なら考慮すべきであろう。しかし、そうではない。どの予測ラインにまで到達するのかはランダムである。となると形成ペースが速い=強い、遅い=弱い、を知ったところで意味はないのである。

強いから二本目、或いは三本目までは到達するであろう、と考えたとしてもそれは単純な主観による希望的観測であり根拠とはならない。仮に相当期間の検証結果の中で統計的に明らかに大きな偏りをもって傾向が分かれるという事であれば考慮する価値はあるかもしれなが実際の所そのような精度は確認できず又、ギャン氏自体もそのような事は言葉に残してはいない。

以上の理由をもって以下ギャンファンの説明は現行スイングに対する値の先を予測する価格レベル出力を目的とした解説をして行きます。

■ ギャンファンの使用方法 ■

①ギャンファンを使用する際には、まず重要な価格の高値または安値を基準点として選択します。そこからギャンアングルを引くことで、将来的な価格の動きの範囲や、サポート・レジスタンスとなり得る価格レベルを予測します。

②例えば、ある安値を基準としてギャンファンを引いた場合、価格が1x1のラインを上回れば、今後も上昇傾向が続くと予測されます。一方で、1x1のラインを下回れば、価格が下降傾向に入る可能性が高いとされます。

また、価格が特定のアングルに接近した際に反発することが予想されるため、そのポイントでエントリーやエグジットの戦略を立てることができます。

③ギャンファンの角度は、価格と時間の関係を示すため、トレンドの強さや持続期間、逆転ポイントを予測する際に使用されます。また、ギャンは、これらの角度が市場の主要なサイクルやイベントと連動していると考えていました。

④ギャンファンとギャンアングルは、過去の価格動向に基づいて未来の動きを予測するため、相場の変動が極端に変わる場合や、市場のボラティリティが高い場合には、その予測精度が低下することがあるとしています。また、価格のスケーリング方法が適切でないと、ギャンアングルの角度が正しく描けない場合があるため、正確なスケール設定も重要とも言っています。

このスケール設定という点がタイムフレームを指しているのが描写するプラットフォームにおける縮尺について言及しているのか明確には不明ですが恐らくは後者だと思われます。だとするなら角度を取り扱う場合においてこの前提は致命的な問題点の一つと言えるでしょう。

~ ギャンファンは構築段階で破綻している?

チャートを使って描写解説を行っていく前にギャンファンの基準線となる「重要な高値・安値の選定」についてより詳しく見ていく必要があるでしょう。

ギャンファンは重要な高値・安値があり、高値安値に対して基準線を描き、その後の動向を観測する事で優位性の判断をまとめ構築されたツールであるはずです。

しかしこの「重要な高値・安値」の選定が完全な再現性の担保された観測基準で無いとしたら恣意的に選択された都合の良い選定となり、環境認識の段階で破綻している事からその上に積まれた検証データの全ての価値が失われます。

ではウィリアム・D・ギャンは「重要な高値・安値の選択」についてどのような基準を設けているのでしょうか?以下がそのガイドラインとなります。

1. トレンドの確認

  • まず現在の市場のトレンドを確認。市場が上昇トレンドにある場合、重要な高値は直近の明確な頂点になると考える。一方、下降トレンドでは重要な安値が直近の底だと考える。

  • これを行うためにチャートの時間軸を広げて(例えば、日足、週足、月足など)、大局的なトレンドを確認する。広い視点でトレンドを確認することでノイズの影響を減らし主要なトレンドのピークや谷を特定しやすくなると言っている。

2. スイングハイとスイングローの特定

  • スイングハイは、周囲の価格よりも高いピークを形成しているポイントであり、これが高値の候補になります。逆に、スイングローは、周囲の価格よりも低い谷を形成しているポイントで、これが安値の候補になります。

  • スイングハイ/ローを特定するには、複数のバー(ローソク足)を観察し、その中で明確に突出した高値または安値を選びます。具体的には、スイングハイは直前の数本のローソク足の高値よりも高く、かつその後の数本のローソク足の高値よりも高い点を指します。スイングローはその逆です。

3. サポート・レジスタンスレベルの確認

  • 重要な安値や高値は、過去に強力なサポートやレジスタンスとして機能したレベルであることが多いです。これらのレベルは、価格が何度も反発したり、突破に苦労したりしているポイントです。

  • チャートを見て、価格が何度も触れているが突破できない水平線を引き、これをサポート・レジスタンスラインとして使用します。このライン上のピークや谷が、重要な高値や安値として選定されることがあります。

4. ボリュームの確認

  • 価格が形成されたときの取引量(ボリューム)も、重要な高値や安値を選定する際に役立ちます。一般的に、取引量が多いポイントで形成された高値や安値は、重要度が高いと考えられます。これは、多くの市場参加者がその価格レベルに注目しているため、サポートやレジスタンスがより強固になるからです。

5. 時間の要素の考慮

  • ウィリアム・D・ギャンは、価格だけでなく時間も重要視していました。重要な安値や高値を選定する際には、その価格が形成された時期も考慮します。例えば、過去のサイクルと一致するタイミングで形成された高値や安値は、より重要であると考えられます。

  • 時間の要素を考慮するために、フィボナッチリトレースメントやギャンの時間理論(例えば、重要な高値や安値からの3日、5日、7日後など)を活用して、潜在的な重要ポイントを特定します。

6. ファンダメンタルズとの連動

  • 市場の高値や安値は、しばしば重要なニュースや経済指標の発表と連動しています。例えば、決算発表や金利政策の変更など、重要な経済イベントの前後に形成された高値や安値は、通常よりも重要とされることがあります。

7. 複数の時間軸での確認

  • 選定した高値や安値が、本当に重要なポイントかどうかを確認するために、複数の時間軸で再確認します。例えば、日足チャートで選んだポイントが、週足や月足でも明確なピークや谷として確認できる場合、それは非常に信頼性の高い重要な高値や安値である可能性が高いです。

8. 直感と経験

  • 最後に、選定の際にはトレーダーの経験と直感も重要です。市場は理論通りに動かないことも多いため、チャートを観察して得られるフィーリングや過去の経験が、どの高値や安値が本当に重要であるかを判断するのに役立ちます。

ウィリアム・D・ギャンの言う「重要な高値・安値の選択」基準はいかがだったでしょうか?最後の8番目はジョークでしょうか?これだけの項目がありながら一つも厳密な定義や再現性が存在しない選択基準とは一体何なのでしょうか。

少なくとも今見て来た選定基準を100人に見せたとして100人が都度同じ高値安値を選定出来る可能性が高いか低いか或いは著しく低いか想像に難くないでしょう。

観測における基本単位が明確でない、という事は観測結果は「人による」という事になります。この場合、観測した結果=検証結果には繋がりません。観測基準が一定でなく再現性が無いのであれば得られるデータに客観性が無いのだから。

しかしこの問題は後にまた言及するとしてまずは実際のチャート上においてギャンファンの描写過程を解説して行きます。

◆ チャートを使用して解説 ◆

⓪MT4においては標準装備でギャンアングル・ギャンファン・ギャンラインが利用可能です。

状況確認:現行スイングは2024/08/02-15:00高値を始点とした下降スイングとします。この波は厳密な波の定義によって2024/08/02-17:00から発生している状態です。

又、通常基準となる45度を定めてギャンファンを描写してもスケールの固定をしない限り縮尺に応じて「角度」はズレてしまいます。故に任意のスケールに確定させる必要があります。そしてスケール自体も絶対的なスケールというものが存在しない以上、絶対的な角度もチャート上には存在しない事になります。

この時点でアングル有りきのアプローチは破綻しているのですがそれではギャンファンの解説不能に陥ってしまいますので、スケールを一旦確定させた状態で描写を開始していきます。

- 余談 -
ズレないギャンファン等が有料ツール等で販売されているケースもありますが、これも今お話した絶対的なスケールが存在しないためズレるズレないの問題以前に前提段階で破綻しているので購入する必要はないでしょう。

②-1

ギャンファンの描写:ギャンファン又はTREND BY ANGLE等を使ってギャンファンを作成していきます。ギャンファンのパラメーターにスケールとありますが、これは角度の事ではないので注意して下さい。

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又先程も言った通り、各プラットフォームにおけるチャート上において絶対的な角度というのものは存在しません。全て各プラットフォームの構造上における固有の比、任意の縮尺に依存しています。

あるスケールでの45度
あるスケールでの45度

ですがギャンファン中央1x1(45度)ラインを生成しなければギャンファンは描写出来ないためまずはチャートのスケールを固定します。

検証のため再現性と一貫性を担保するためにスケールの固定は描写元の波の高値・安値とここではしていきます。

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生成手順はまず現行スイングに対するサポレジ・到達目標ラインを生成するためには一つ前のスイング・波を使って生成します。チャート上の青の上昇スイングがそれにあたりますので、今回はこの青上昇スイングの安値・高値をスケールの上限・下限に合わせて固定。

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チャートのスケール確定後・TREND BY ANGLEを青上昇スイング始点に合わせて、45度を生成。尚、TREND BY ANGLEの始点はスイング始点安値に正確に合わせる必要がありますがこれは角度ありきのアプローチ等で二点目角度に関与しないので適当で構いません。

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次にギャンファンを呼び出し、中央1x1(45度)ラインを今生成してきた45度ラインに合わせれば描写完了となります。

ギャンファンと価格を観察:チャートの観測や検証は前提・目的・一貫性が担保されなければ意味がありません。今回の目的を再度整理してからチャート・ギャンファン・ファンへの価格の応答を見て行きましょう。

前提:絶対的なスケールが存在しないためギャンファン出力元の波の始点・終点高安値をスケールの上限下限に設定している。


但しこれは「正しい波」を前提に描かれる場合一定の傾向を確認出来たスケールの決定方法のため主観的な設定と比べて大きく優位性を持った決定方法だと伝えておく。

目的:ギャンファンの展開目的は現行スイングの終点を予測するためのラインとして利用している。

評価:評価については例えば特定のプライスアクションを説明する時、私の次点トレード理論内の波の定義等に触れてしまうためこの投稿上に記載出来ませんが、生徒さんについては1時間足ベースでの波の発生及び、終値内側収束による評価の二つをもって可否による統計データの取得が容易に可能であるはずです。検証を楽しみたい方はそのように。

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では改めて観察して見ましょう。現行の下降スイングは縦軸・黒・破線ライン上から発生しています。この発生地点より右側でギャンファンは有効化されます。赤枠1つ目は発生後のリターンムーブを綺麗につけています。終点に関しても同様。評価基準も満たしているためここでは可が2つ。より細かくみるならオーバシュートの数値も取れるでしょう。

では同様の手順で何本かさらに出力して見ましょう。果たして最初の例のように機能しているのでしょうか?

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ちなみにアングルを下方向に45度で描写したい場合、TREND BY ANGLEの角度表記は315度となっていますが-45度と打ち込んでも描写する事が出来ます。

③-3
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この上昇スイングは黒破線から発生し、最後の赤枠高値が終点となります。(厳密な波の定義によって描かれる波であり主観的に描いている波ではない)波発生後からラインに対してのアクションはどうでしょうか?

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連続した3つの波・場面について描写して来ました。あなたの目にはどう映ったでしょうか?

あまり良質なラインに触れてこられてない方にとってはよく機能しているように見えるかもしれませんね。その辺にいる商材屋さんが商売の道具として使う分には十分かもしれません。が、私の評価としては実務に耐えられるレベルではないという判断です。

またそれなりに機能しているかのように見えたかもしれませんがこれはギャンファンが素晴らしからなのでしょうか?ここで一度よく考える必要があります。

ギャンファンは罫線ツールであり、道具です。ギャンファンはギャン氏自身も認めているように主要な高値・安値の「選定」が必要だと言っています。つまり、正確な環境認識ありきという事です。適当に描いた波ではなく「チャート側にとって意味のある一貫性を持った波」に対して描いて初めてその効果を検証する事が出来ます。

フィボナッチ然り、ダウ理論然り、エリオット波動論しかり、サイクル理論然り、全てに共通して言えるのは単一解釈の厳密な再現性を持った「チャート側にとって意味のある単位」があって初めて検証する事が出来る。そして今上げたすべての理論がそれらを備えてはいないという事実。

そう考えた時一つの根本的な疑問が浮かびませんか?

ウィリアム氏がどのようにギャンファンのアングルの有効性を確かめてギャンファン各アングルの設定を定めたのか?という事です。

どういうい事か。ギャンファンは罫線ツールです。ツールを使う本体は環境認識における高値・安値つまりは波です。

ウィリアム氏の遺した言葉の中にあるのは特定の主要な高値・安値を基準として生成するという事。そしてその選定基準は先述した通り、一貫性・再現性を持ち合わせていません。

そこがもっとも大切なポイントなはずです。それが無いとしたならば機能している所を恣意的に選び出し、見たいように見て、信じたいように信じているだけの盲目の羊的思考の延長にギャンファンが生まれた事になります。

ウィリアム氏が残したギャン理論にはどこを探してもこの主要な高値・安値に対する具体的で再現性の担保された観測基準も選定基準も書かれてはいません。

そう、ダウ理論やエリオット波動論やサイクル理論と同様に、です。ではどうやって各アングルの有効性を「検証」出来たというのでしょうか?

そこに疑問を持つ事が出来たなら、仮にあなたのトレードが現状不確かな物であったとしても今後取り組むべき問題をあなたは手に入れた事になる。具体性の無い目的をもってチャートを眺めても何も気づきはないでしょう。

目的が決まれば手段を検討出来る。手段が決まれば実行に必要な物を把握する事が出来る。その二つが揃ったなら検証する事が出来る。

検証が失敗に終わったならエラーを拾う事が出来る。拾ったエラーは次に取り組むべき問題を明確にする。

広く大衆に知られた既存の理論やツールは長期政権の下で常識として居座っている。しかし大衆とは多数派であり、相場においての多数派は9割と言われている結果の出せない人々であり、常識とはそれら多数派達の物である。

しかしだからと言って学べる事が無い訳ではない。一つの理論、ツールについて言及していく中で矛盾や問題点を見つける事が出来れば発想の起点にする事が出来る。わからないから否定する。わかるから肯定する。これが大衆とくくられる人々の性質。

対して大衆の外から観察する人々は理解した上で指摘し否定する。理解した上で同意し肯定する。あなたはどちらでしょうか。

◆ チャート上における角度に意味はあるのか ◆

さて話を戻しましょう。結局の所、チャート上における「角度」という物に意味は無いのでしょうか?

実際の所、意味はあります。しかし角度、ではなくラインの傾きと考えた方が良いでしょう。先程も見てきた通りチャート上における絶対的に確定された角度という物はありません。プラットフォームの構造・縮尺・タイムフレームに依存するからです。

角度ではなく傾きと考えるというのは角度主体のアプローチが間違っているという事です。しかし角度=傾きを座標間ベースでアプローチするならプラットフォームの違い、スケールの違い、タイムフレームの切り替えによる違い、それら全ての問題の干渉を受けずに再現性と一貫性の担保された「傾き」を利用する事が出来ます。

トレンドラインを描写する際、2転換の座標(時間,価格)を確定させて出力しますね?その時、傾きが生まれますがズレは生じません。

ではここで一つの可能性をお見せしましょう。これから見せるラインは「何度も引き直したり、都合よく描写したライン」ではありません。この赤のラインは並走する青のスイングに対するトレンドラインのような役割を持ったラインであり、黒の縦線で記した時刻から生成可能です。

これは特定の波のブレイク(波の定義を崩し次の波が生まれる事)を早期発見する事を「最初から目的として」対象となる波から機械的に情報を取り出し、予め決まった計算式に当てはめて出力したラインです。(興味のある生徒さんは動画を作ったので計算式等の解説はそちらをどうぞ)

▼ 生徒さん向け動画解説 ▼

皆さんお分かりだと思いますが、傾きのあるラインはわずか1pipsのズレの誤差であっても、その末端(チャート右側に行けば行くほど)においては非常に大きなズレに繋がる事は理解できるかと思います。

それがこの精度で機能する。少なくとも傾きに意味がある事を私は知っています。が、しかしです。

この強い意味を持つ傾きを持ったラインは私の個人的なトレードである予測トレード(過去記事参照)においても私が考案し生徒さんに提供している次点トレード理論においてもその内容には組み込んでいません。それはなぜか?

◆ 傾きを理論に組み込まない理由 ◆

先述したギャンファンの二つの役割の一つ、その波の形成ペースの評価については実用的な役割を担わないという理由で解説から外しましたね。それと同じです。どういう事か?

傾きを持つ斜めのラインの場合、それがその波のブレイクを目的とした物であれその波に対するサポレジ・到達目標としての性質を持ったラインだとしてもその到達地点に注文を置いておく事が出来ない。

ブレイクにしろ到達にしろリアルタイムで目視していないと対応出来ない。もしかしたら小さいタイムフレームであればスキャル的に利用できると考えるかもしれないが、過去の記事でも書いた通り「チャート側」意味のある時間足というのは決まっているのです。

※ 参考 ※

小さな足で描写した所でその足の波にもラインにも意味がない以上精度も機能も生まれはしません。

理論内では水平ラインを用いています。私個人のトレード予測トレードにおいてもそうです。水平ラインの精度が一定水準を超えているなら押し・戻りを見るにしろ到達地点を見るにしろそれだけでいい。故に利用はしていない、特に利用する必要性が無い、という事です。

また傾きを持ったラインは時間を含んだラインです。私個人的にはまだ到達出来ていないので断言出来ませんがチャート上における時間とは「いつ」に対する意味合いが強く、先程見てきたような強い意味を持ったラインであってもその傾きは副次的な恩恵であると考えます。

◆ 最後に ◆

個人的な予測トレードにおいて到達レベルの価格予測は現状満足いく水準に到達出来ましたが、「いつ」到達するのかまで予測可能かどうか私は知りたい!それが現在の私の研究テーマでありライフワークの一貫となっています。現在「いつ」に対する研究は3年目に突入しました。

明確に覚えていませんが次点トレード理論の構築時は2年弱だったでしょうか、予測トレードに関しては価格レベルの予測の計算過程を確定出来るまでに丸2年かかったと思います。

そして現在取り組んでいる個人的な研究テーマ「いつ」に対する研究はまだまだかかりそうです。しかしそれもまた楽しみであり苦ではありません。仮に10年かかったとしてもそれはそれで10年楽しめたと思える私が想像出来るのだから。

さて、本日見て来たギャンファンはあなたの目にどう映ったでしょうか?ギャンファンがいかに独創的なアプローチであり、仮に選定されたアングルに優位な傾きがあったにしろ、それらは大前提として「どこに描くのか」という問題があり、それはつまり環境認識の事を指す。そしてその点について厳密な定義と再現性(ここで言う再現性は100%)が存在していないとしたら観測から得られる結果には一貫性が無く観測データとしての価値はない。

結果としてその傾きに対する優位性を測る事は出来ない。そう、ささやかな検証一つ行う事が出来ないのである。

その事の重大さにどれ程の人が気づけるだろうか

そして私達にはそれがある。恣意的に切り出した波ではなく「チャート側にとって意味のある波」を出力する方法が。故に調べる事が出来る。これらの傾きに意味があるのか無いのかを確かめる術がある。それでは波を楽しんで。高 山

O M A K E

ここまで読んでくれたあなたにオマケとしてウィリアム・D・ギャン自身について少し話しておこうと思う。私は彼が好きだが彼を手本とはしなかった。その理由が少しわかるかもしれない、そんなお話。

■ ウィリアム・D・ギャンが重要視した物 ■

彼は単なる価格チャートの分析にとどまらず、数学、幾何学、占星術、聖書の研究までをその分析に取り入れていた。

例えば彼の逸話にこんな物がある。

彼は惑星の動きが市場のサイクルに影響を与えると信じ、その理論をもとに取引を行っていました。

たとえば、ギャンは「火星が逆行しているときは市場が荒れる」などと述べたとか。普通のトレーダーがチャートを見ながら「これは買い時だ」と判断する一方で、ギャンは星空を見上げながら「土星が冥王星に近づいている…今が売り時だ!」なんて事を考えていたわけである。

この独特なアプローチに対して、彼の同僚たちは時に困惑し、時に笑いを禁じ得なかったという。実際のところ彼のこのアプローチの結果が上手く行ったという話は残っていない。

私、高山は論理性を重視し現実に観測可能なチャートの中だけに存在する物を重要視している。よって占いの類や宗教的アプローチをチャートに用いる事はあってはならないと考えるし、それらはダウ理論やフィボナッチツール等も同様の物と考えている。

そんな私の事を知っている方からすると占星術や聖書の研究を市場分析に持ち出していたウィリアム・D・ギャンをなぜ?と思うかもしれない。

しかし私が彼を好きな理由は常識に囚われない自由な視点と発想、そしてその奥にある自分だけの哲学を持っていた点にあります。そして哲学を持っていない人間に信念は無い。

教義や流派に縛られず自由な発想の根底にはそれを支える哲学と信念の二つの柱があってこそ。彼が遺した発想からそれを感じる事が出来たから私はウィリアム・D・ギャンに興味を持ち、手本とする事はなくても彼の発想に触れる事を楽しむ事が出来たのかもしれません。

▼ K2次点トレード理論概要 ▼

☝ 理論概要は上記をCLICK ☝

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