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【FX】61.8%は本当に特別なのか。相場に持ち込まれたフィボナッチの真実。

◆ 本日のテーマ ◆

「相場に持ち込まれたフィボナッチ」

本当に61.8%に意味はあるのか

そこにある恣意性と

リトレースメントの評価基準の問題

フィボナッチ比率それ自体の優位性

そもそも機能しているとは何か?

理論の妥当性に多角的に言及する

◆ あなたへ ◆

「フィボナッチリトレースメントの使用法を知っていますか?」そう聞かれたらあなたは答える事が出来るかもしれません。しかし次の質問に対して、あなたは明確にその理由を根拠を持って述べる事が出来るでしょうか。

相場分析においてフィボナッチ比率は多くのトレーダーに利用されて来ました。フィボナッチリトレースメントやエクスパンションを用いて価格の反転ポイントを予測しようとする手法は広く一般的に用いられているように思います。しかしこの手法は、

本当に理論的に妥当なのでしょうか?
それとも単なる思い込みに過ぎないのでしょうか?

何気なく利用しているツールが実は何の根拠も有していなかったとしたら。或いはなんの優位性も持っていなかったらとしたら…。

リトレースメントの一般的な展開方法

フィボナッチリトレースメントは特定の誰かが考案した物ではない。よって厳密な使用ルールは定義されていないが概ね共通した使用ルールが主張されている。そこには「多くの疑問・矛盾」が含まれるがまずは一般的に主張されている基本手順を見て行こう。

(1) 主要な高値と安値の特定

参考)次点理論の波チャート
  • トレンドが明確な相場において、直近の重要な 高値(ピーク) と 安値(ボトム) を決定する。

  • 上昇トレンド では、直近の 安値 を基点(0%)、直近の 高値 を終点(100%)とする。

  • 下降トレンド では、直近の 高値 を基点(0%)、直近の 安値 を終点(100%)とする。

【考えよう】重要な高値・安値とは一体なんだろうか?環境認識における一貫性を持った明確な観測基準がないままこのルールは定められている。100人が100通りの高値・安値を選択する可能性を否定出来ないこのアプローチは客観性を持つだろうか?その妥当性をあなたはどう思うだろうか。

(2) フィボナッチ比率の展開

参考)次点理論の波チャート

主要なリトレースメントレベル

  • 0.0%(起点)

  • 23.6%(数列の隣接する数の比率に由来)※

  • 38.2%(フィボナッチ比率)

  • 50.0%(数列には関係ない)※

  • 61.8%(黄金比)

  • 78.6%(0.618の平方根)

  • 100.0%(終点)

※数列とはフィボナッチ数列を指す

補足:本投稿が伝えようとしている本質は各種フィボナッチツールの違いは関係ない。主にリトレースメントを持ち出して説明していくがそれがフィボナッチ・エクスパンションでもフィボナッチ・ファンでもアークでも同じである事をここにお伝えしておく。

リトレースメントの一般的な使用目的

〇 一般的に主張されている使用目的 〇

参考)次点理論の波チャート

1.押し目買い・戻り売りのポイント特定

・上昇トレンド中に価格が調整(下落)する際、どの価格帯で反発する可能性があるかを測定。
・下降トレンド中の戻り(上昇)において、再下落が始まる可能性のある価格を予測。

2サポート・レジスタンスの可視化

・過去の価格動向に基づき、フィボナッチ比率の各レベルが 支持線(サポート) や 抵抗線(レジスタンス) となる可能性を判断。

3.エントリー・エグジットの基準設定

・エントリータイミングを 主要リトレースメントレベル(38.2%、50.0%、61.8%など) で決定。
・損切り(ストップロス)の目安として活用。

〇 一般的な主張されている比率解釈 〇

  • 0.0%(起点)

  • 23.6%(浅い調整)

  • 38.2%(一般的な調整)

  • 50.0%(慣習的なレベル)

  • 61.8%(深い調整、重要)

  • 78.6%(トレンド転換リスクあり)

  • 100.0%(終点、トレンド全戻し)

【考えよう】各レベルに対してその戻りの評価が付されているが、その根拠はどこから来るのだろうか?

〇 一般的に主張されている実践方法 〇

  1. エントリーポイントの判断

38.2%、50.0%、61.8%でエントリーを検討。価格がリトレースメントレベルで反発する動きを確認した後にエントリーする。

2.損切り(ストップロス)の設定

61.8%ラインより下(または上)に損切設定。78.6%を超えた場合はトレンド転換の可能性があるため再考する。

3.利確(利益確定)の判断

一部利確を 23.6%や38.2%のレベル で行う。
長期のポジションなら、トレンドの終点(100%)付近まで引っ張る。


フィボナッチ比率の恣意性

フィボナッチリトレースメントで採用されている比率は、数学的なフィボナッチ数列から導かれるすべての比率を網羅しているわけではなく、特定の数値のみが選択されており、明らかな恣意性が認められる。

「 0.500 」

50%リトレースメントはフィボナッチ数列とは直接関係がありません。これは ダウ理論 に由来しますがその採用根拠は、相場がトレンド方向へ継続する際に半値戻しが起こりやすい という「経験則」に基づいていると主張されています。

「 0.786 」

これは厳密なフィボナッチ比ではなく、0.618の平方根を元に導入されたもの。この比率の採用根拠も実際の市場で機能しやすいという「経験則」から来ていると主張される。

【考えよう】「経験則」は根拠になり得るだろうか。それは単なるアポフェニア(Apophenia)。無関係な情報の中にパターンや意味を見出してしまう認知バイアス。端的に言えば「意味のないものに意味を見つけてしまう現象」ではないだろうか。

フィボナッチ数列には 23.6%、38.2%、61.8% 以外にも多くの比率 が存在します。19.1%(13/68)47.6%(34/71)85.4%(55/89)

これらの比率は数学的に導き出せますが、フィボナッチリトレースメントには 採用されていません。その理由を問えば次のような主張が返ってきます。

「市場での反応が少ない」または「他の比率と大きく変わらないため不要」というものです。しかしこの主張は根拠とは言えません。なぜならリトレースメントの描写・展開ルールをもう一度思い出してください。

フィボナッチリトレースメントの比率選定、展開様式における恣意的な選択は基本的に「経験則」をベースにしています。

経験則は根拠になり得えるのか?この問題はフィボナッチリトレースメントの描写ルールについて考える事で答えを出す事が出来るでしょう。

 主要な高値と安値の特定

リトレースメントの描写ルールのステップ1は主要な高値と安値の特定とあります。「トレンドが明確な相場において、直近の重要な 高値(ピーク) と 安値(ボトム) を決定する」必要があると。

この場合、トレンドが厳密な定義と出力ルールを持ち、トレンドを形成する波一辺、その両端の高値・安値に言及出来る言い訳の出来ない完全な再現性をもった観測基準が存在する必要があります。

この時はじめて観測結果には客観性が備わり「観測データ」として処理する事が可能になります。しかし現実のルールではそれらが定められていません。各比率の優位性や選定が一貫した評価基準の元に行われていない事は明らかです。

それでは例えば比率選定において除外されたフィボナッチ比率に対して「市場での反応が少ない」または「他の比率と大きく変わらないため不要」との判断はどのように行ったのかという指摘に繋がる訳ですね。

だからあなたはいつもどこに描くべきか
「考える」必要が生じてしまう訳です

つまり第一の疑問・問題点は「相場に持ち込まれたフィボナッチ」はその比率の選定において問題がある以前に、チャート上におけるフィボナッチ比率の優位性について客観的な観測によって確かめている訳でなく「事後的」にそう見える場面を抽出して当てはめていたに過ぎない可能性が非常に高いという事です。

「経験則」は二つ存在する

私は「経験則」それ自体を否定している訳ではありません。経験則は二つ存在すると考えます。一つは特定の基準を通して蓄積される経験則。こに場合、基準の厳密性が高い程根拠としては強く、逆なら弱くなります。

対してもう一つは基準の無い経験則。チャートを例に言えば、価格変動に対して自分が見たいように見て、解釈したいように解釈しているに過ぎない根拠と言うにはあまりに貧相な経験則を指します。

「相場に持ち込まれたフィボナッチ」に関しては明らかに後者でしょう。ところでなぜ、そもそも既存の理論やフィボナッチリトレースメント等のツールはフィボナッチ比率やその他の比率を採用したのでしょうか?

エリオット波動論やフィボナッチリトレースメント等、理論やツールにフィボナッチ比率を組み入れた理由を彼らは何と主張しており、そこにはどのような根拠があるのでしょうか?

 〇 エリオット波動論の場合 〇

1. エリオット波動論の概要

エリオット波動論は、ラルフ・ネルソン・エリオット(Ralph Nelson Elliott)が1930年代に提唱した市場の価格変動パターンに関する理論です。この理論によれば、市場の価格は以下のような「波動」を形成します。

<基本的な波動構造>

  • 推進波(Impulse Wave):上昇(または下降)トレンドに沿って形成される5つの波(1, 2, 3, 4, 5)

  • 修正波(Corrective Wave):トレンドの調整局面で形成される3つの波(A, B, C)

この 5-3 の構造が繰り返され、より大きな時間軸でも同様のパターンが形成される「フラクタル構造」になっていると彼は主張します。そしてフィボナッチ比率はその波動の長さや調整の度合いを測るために用いられます。

エリオット波動論においてフィボナッチ比率が重要視されるのは、エリオット自身が「市場の価格変動パターンを観察し、その波動構造がフィボナッチ数列と密接な関係を持っている」と考えたためです。

▽ エリオット波動論で利用される ▽
- フィボナッチ比率の根拠 -

①自然界におけるフィボナッチ数列の普遍性

フィボナッチ数列は、自然界のさまざまな構造に見られる規則性として知られています。よく挙げられる例として以下の物があります。

  • ヒマワリの種の配列

  • 貝殻(オウムガイ)の渦巻き

  • 銀河の渦

  • 人体の比率(黄金比 1.618)

エリオットは市場の価格変動も自然界の法則の一部であり、その背後にある心理的な動きがフィボナッチ比率に支配される可能性があると考えました。

【考えよう】フィボナッチは自然界において本当に普遍性を持った比率なのだろうか?この点については次の章で言及していく。

②市場に対する経験則

エリオットは市場データを観察する中で、特定のフィボナッチ比率が頻繁に現れることを確認と主張しています。

  • 第2波や第4波のリトレースメント

  • → 38.2%や61.8%に収束傾向

  • 第3波のエクステンション

  • → 1.618倍、2.618倍、4.236倍になることが多い

  • A-B-C修正波におけるC波の長さ

  • → A波の1倍または1.618倍に傾向有り

ただしこれらの観測結果は、統計的な分析というよりも、彼の経験に基づく帰納的な法則である主張されています。科学の世界では観測に基づく帰納的な法則によって新しい発見や発展につながる事は多々あります。

しかしエリオットの場合はこの「帰納的な法則」に該当するケースでは無いと考えるべきでしょう。

なぜなら確かに帰納的な法則は経験則に頼る部分もありますが実際には観測精度がもっとも重要視され、その高い再現性や一貫性が有る程度保証された中で有効と言えるアプローチです。

ですが彼の理論の場合、波一辺対する普遍的な出力ルールを持っていません。故に100人がエリオット波動論を同じチャートに実践しようとした場合、その観測結果は1つに収束しません。

100通りの結果に分岐してしまう可能性がある訳です。観測精度という観点から言えば、これは完全に机上の空論であると言わざるを得ない。

事後的にフィボナッチ比率をチャートに当てはめているにすぎずこれを根拠と言うのは無理があるでしょう。

〇 フィボナッチリトレースメント 〇

フィボナッチリトレースメントについては誰か特定の人物が考案した物ではありません。20世紀後半からテクニカルトレーダー達によって広く普及しました。よって採用根拠がどこから来たのかは完全に不明です。

しかしよく主張されている事としてはフィボナッチ・リトレースメントが広く使われる理由、それは数学的な厳密さというよりも、市場心理と経験則に基づいているとされます。この点についても次の章でより問題を具体化して行きます。

【考えよう】今見て来たようにフィボナッチ比率を採用している根拠は、その理論あるいはツール考案サイドの「経験則」と言われる物で占められています。しかしながらそこに優位性を測る明確な基準も定義も存在していなかった事をあなたはどう考えるだろうか。

みなさんは感じませんか?フィボナッチ比率に対するある種の信仰を。特別な比率であると多くの人が考えているように思います。特にフィボナッチ数列それ自体を学んだ事が無い人の中に多いのではないかと考えます。しかし残念ながら、

フィボナッチ比率は特別では無い

この点について自然界、市場この二つの世界に照らしてその理由を説明して行きましょう。

◆ 自然界において ◆

フィボナッチ比率が自然界に
「厳密に」現れるわけではない

フィボナッチ比率(0.618 や 1.618)が自然界のさまざまな形状やパターンで見られると言われますが、それらのほとんどは 厳密な一致ではなく、単なる近似値 であることが多いです。たとえば、

  • 巻貝(オウムガイなど)の螺旋 はよく黄金螺旋と関連付けられますが、実際の成長パターンはロジスティック成長に近く、対数螺旋の一種であっても黄金比に正確に一致するわけではありません。むしろフィボナッチ螺旋よりも「一般的な対数螺旋」のほうが正確です。


  • 銀河の渦巻き もフィボナッチ螺旋に似ていると言われますが、銀河の渦状腕の形状は 重力相互作用や星の分布によって形成されるものであり、フィボナッチ比とは関係ない ことが分かっています。


  • 人体のプロポーション(指の関節の比率など)が黄金比に近いとされることもありますが、実際の人体は 個体差が大きく、黄金比に正確に一致しないケースのほうが多い です。

つまり、これらの例は「都合の良い事例だけを集めている」可能性が高く、自然界の普遍的な法則としてフィボナッチ比率が存在するとは言えません。

進化の産物として偶然そう見えるだけ

(1) 自然界の形状は物理法則や
生存戦略に基づいている

自然界におけるパターンは、数学的な理論ではなく 進化や物理法則によって決まることがほとんどです。例えば、

  • 植物の葉の配置(フィボナッチ数列が見られる場合)

    • 太陽光を最大限に受けるために、葉が特定の角度で配置される。

    • その角度がたまたま黄金角(約137.5度)に近くなることがあるが、それは単なる成長最適化の結果であり、フィボナッチ比率に従うように進化したわけではない。


  • 松ぼっくりやヒマワリの種の螺旋配置

    • 発生過程で細胞分裂が一定の割合で起こり、成長の過程で対数螺旋が形成される。

    • これは単にエネルギー効率の良い配置であり、フィボナッチ比率が特別に選ばれたわけではない。

つまり、進化の過程でたまたま全体の一部にフィボナッチ比率に近い構造ができることがあるだけで、フィボナッチ比率自体が自然界における特別な法則ではない のです。

(2)多くの比率が存在する

〇平均比率:人間の体や動物の体には、およそ 1:1.5 の比率 が多く見られるが、これは単なる成長の結果であってフィボナッチ比率は関係ない

〇二等分比(1:2):多くの生物や構造物に見られる基本的な比率。動物の体長と体高の比率(犬や猫などの四足動物)。その他多くの鳥の翼の大きさが 1:2 に近い。葉の長さと茎の長さの比等。

〇三等分比(1:3):木の枝分かれや樹木の成長パターンでよく見られる。人間の指の比率も 1:3 の比率を持つことが多い(第一関節、第二関節、第三関節の長さの比)。

〇ルート比(√2、√3、√5 など):多くの虫の翅(はね)や動物の体長と体高の比が √2 や √3 に近いことがある。

✅このようにその他多くの比率が溢れている。 フィボナッチ比率が自然界に見られるのは事実だが、それだけが特別な比率ではない。
✅ 実際には、1:1.5、1:2、1:3、√2、√3、√5、e(2.718…)など、さまざまな比率が存在する。
✅ 成長、物理法則によって、最適な比率は生物や環境によって異なる。

◆ 市場において ◆

1. フィボナッチ比率は後付けで見つけやすい

多くの人が「フィボナッチ比率が現れる」と主張する場面では、後からデータを見て「ここにフィボナッチ比率がある」と認識することがほとんどです。たとえば、チャート上でフィボナッチリトレースメントを使う人がいますが、特定のポイントがフィボナッチ比率に近づいた場合のみ注目し、それ以外は無視される傾向があります。これは 「選択バイアス」 の一種です。

2.フィボナッチは無限に作れる

フィボナッチ数列は再帰的に定義される数列であり、その比率(黄金比)も数学的に導かれるものですが、それが市場の法則として機能しているわけではありません。フィボナッチ数列は「前の2つの数の和」という単純なルールで無限に生成されるため、多くの数値と似た関係を持つ形がチャート上に現れても不思議ではありません。

3. 人間の認知バイアスが影響している

フィボナッチ比率が自然界で特別であるとされる背景には、人間の認知バイアス が強く影響しています。

  • パターン認識の偏り

    • 人間はランダムなデータの中にも意味のあるパターンを見つけようとする傾向がある(アポフェニア)。

    • そのため、フィボナッチ比率に近いものを発見すると、それが普遍的な法則であるかのように誤解してしまう。

  • 後付けの解釈

    • 全てがフィボナッチ比率に従うわけではないが、フィボナッチに近い比率のものだけを取り上げて「フィボナッチ比率がある!」と主張することが多い。

    • 実際には自然界にもチャート上にも多くの異なる比率が見られるが、それらは注目されない。

しかしまだもしかしたらフィボナッチ比率を信仰する人々は反論の余地が残っていると思うかもしれません。その領域は市場参加者の「心理」です。

「市場参加者が特定の比率を意識することで、実際にその比率に該当する価格帯で反応することが多くなる」との主張があります。

この問題についてはここまでの流れの中ですでに少し触れていますが掘り下げて見ましょう。

市場参加者の集団心理としてのフィボナッチ比率

フィボナッチ比率が機能すると主張する人々の根拠の一つは、「市場参加者がこれを信じて取引するから」というものだ。故に、

>多くのトレーダーがフィボナッチリトレースメントを活用し、意識することで実際にその水準で価格が反応しやすくなる。

>これは一種の自己成就的予言であり、特定の価格帯で売買注文が集中することで実際にサポートやレジスタンスとして機能する。

しかしここには重要な問題が存在する。

異なるスケールの価格変動
統一されていないルール

フィボナッチリトレースメントを「どの範囲で」「どの起点で」適用するかはトレーダーによって異なる。

例えば、1時間足の短期トレーダーと日足のスイングトレーダーでは、フィボナッチを適用する価格帯が全く異なる。
よって、同じ23.6%や61.8%を意識するとしても、彼らのフィボナッチレベルは一致しない。

「どの範囲で」「どの起点で」適用するかはトレーダーによって異なる理由はどの高値・安値を基準にするかについて出力ルールが統一或いは定義されていない。そのため個々のトレーダーの裁量に依存している。

一部のトレーダーはある時間足のある高値・安値から引くが、別のトレーダーは別の時間足の直近の目立つスイングから引くという事が参加者の分だけ起こり得る。

これにより、同じフィボナッチ比率を使っても、異なる水準が導かれる。

フィボナッチ比率が「機能する」という意味

フィボナッチ比率が相場で機能するのは、客観的な法則ではなく、あくまで市場参加者の思い込みによるものだと考えるべきでしょう。

しかし、もし市場の大半がこの比率を信じ続ける限り、それが「ある程度の自己実現的効果」を生むことも否定できません。しかしそれはいつも事後的なのです。

「信じているから機能しているように見えるが、それは事後的な後付けに過ぎない」という事です。

もちろん参加者の全員が高値安値に言及出来る厳密な出力ルールを定め、全員が同じ通貨ペアの同じ時間足のチャートを同じ時間に見て、参加者のうちの少なくとも1割以上が同時に同じタイミングで注文を出す事が出来るなら明らかな観測可能な現象としてそれは市場に現れるでしょう。しかしそれは現実的には不可能です。

市場参加者の集団心理はそれ程単純ではない。個人的にトレードにおいては「心理」を出したら終わりと考えている。確認しようのない観測手段の存在しない概念を持ち出してもそれは単なる願望であり妄想以外の何物でもない。

統計的な裏付けはあるのか?

フィボナッチ比率が「本当に機能するのか?」という点について、統計的な分析も行われています。しかしランダムウォークモデルとの明確な差は確認されていないという研究が多いです。

つまり、フィボナッチ比率が事後的に機能するように見えるのは「心理的要因」と「自己実現的な現象」によるもので、数学的・統計的な優位性があるわけではないということになります。

ではなぜ利用する人々が多いのか

一言でかたずけてしまうなら単純に盲目の羊であるからに他なりません。今日、私はフィボナッチ比率の疑問についてみなさまと言及して参りましたが多くの市場参加者の方々はこのような事まで「考えない」のです。

フィボナッチリトレースメントを使いたいと思ったら手軽に検索して描き方と簡単な見方だけを調べて終わる。リトレースメントそれ自体に言及等しないのです。その他考えられる理由としては、

(1) コストの低さと「錯覚」

フィボナッチ比率は 「簡単に引ける」 ため、多くのトレーダーにとって 「とりあえず使いやすい」 指標になっています。つまり、思考停止の産物 とも言えます。

また、人間の脳はパターンを見つけるのが得意 なため、ランダムなデータでも「意味があるように錯覚してしまう」ことがあります(アポフェニア)。

➡ 多くの人がフィボナッチを使う理由は、単に「簡単だから」と「使っているとそれらしく見えるから」。

(2) 学習バイアスと伝統

トレーダーは 「過去の成功体験」 に基づいて学習します。例えば、フィボナッチ比率を使ってたまたま成功した人は 「これは機能する!」 と考え、他のトレーダーにも教えます。

これが繰り返されることで、フィボナッチ比率が 「伝統的な知識」として根付いてしまう のです。

➡ フィボナッチは統計的に優位性がなくても、一部の成功体験が「機能する」という誤解を生む。

◆ まとめ ◆

フィボナッチ比率に特別性はあるのかについて言及してきた今回。あなたにとって今後もフィボナッチは相場に持ち込む価値を残しているでしょうか?ここで今回の本当の目的をお伝えしましょう。

それはあなたを「フィボナッチの呪縛」から
自由にする事でした。

私もフィボナッチツールを利用していた時期がありました。使いやすく「目安になっている気がする」感覚に依存してしまっていた事もあります。しかし簡単な問いを立てる事でその物の本質に言及する事が出来ます。

信仰心を否定はしません。しかし投資においては信仰心ではなく論理で臨む物だと思います。相場の価格変動に絶対は無い。

「絶対」が存在しないのならリスク管理のようのに自分でコントロール可能な物においては「絶対的」な基準を持って臨まなければならない。

論理性によって道を描き選択し、理性によって実行する。この二つの性から離れないで下さい。

最期にあなたに御守りを贈りましょう

もしあなたが今、いずれかのコミュニティや誰かにトレード指導を受けていた場合。或いはダウ理論やエリオット波動論やハーモニックパターン等、既存理論を学習していた場合。

そのどちらでも構いませんがその情報の「正しさ」に自信が持てない時には以下の質問をその情報元に向ける事でそこに留まる意味があるのか無いのか知る事が出来ます。

例えば「61.8%が重要です。」「意識されます」というような発言に遭遇したら試しにその方に次のような形で問を向けてみて下さい。

なぜ61.8%が重要なのですか?

A<いくつもの検証と経験から意識される事が多い事を確認したからです。

なぜ意識されているとわかったんですか?

A<私の理論や手法を通して観測した結果です。

ではどのような観測基準で意識されているか否かデータを収集し、そしてどのような基準で評価したのですか?

A< …。

その観測基準を教えて下さい。
再現性はもちろんありますよね?

A< …練習や経験も多少は必要です。

え?練習や経験が介在する程曖昧な基準なのですか?

このような簡単な問いを立てるだけでもあなたを誤った情報から守ってくれる事でしょう。

もし観測基準が厳密な出力ルール及び再現性がある場合、その理論や手法と今後も向き合う余地はあるでしょう。せめてその物を深く理解し、客観的に評価を下せる段階までは向き合うべきです。

もし観測基準に厳密に存在しない場合、その場所はすぐに離れた方が良いでしょう。時間の無駄です。あなたの時間は有限なのだから。

OMAKE

最期に次点トレード理論の直近の波にフィボナッチリトレースメントやエクスパンションを当てはめてみた物を見て見ましょう。(補足:私の理論ではフィボナッチは利用しません)そこに付随する問題をあなたに投げかけて本投稿の最後としたいと思います。

どうでしょうか機能してそうでしょうか?それとも機能していなそうでしょうか?どちらにせよその解釈には次のどれに当たるかよく考える必要があります。

フィボナッチが「機能していた」場合

・フィボナッチに優位性があり、加えてそれは描く対象となった波が「正しい」から機能していた。

フィボナッチが「機能してない場合」

・描く対象の波は正しかったがフィボナッチそれ自体に優位性がない
・フィボナッチに優位性があるが、波が正しくなかったから機能していない

この検証が一人の人間によって行われた場合、最期のフィボナッチの優位性があるが、波が正しくなかったから機能していない。という解釈は実際には存在しません。なぜならフィボナッチに優位性があると確認出来ているならその対象となる波の描き方もすでに把握している訳ですからね。みなさんはここに並んだ解釈に何を感じるでしょうか?それではまた。

高 山

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