大腿筋膜張筋(Tensor Fasciae Latae)
今回は股関節にも膝関節にも影響が大きい、大腿筋膜張筋について。
筋から連続している、腸脛靭帯についても合わせて解説していきます。
大腿筋膜張筋、腸脛靭帯は股関節疾患や膝関節疾患にはかなり高い確率で関わっています。
周囲の筋との関係性なども整理しておきましょう!
大腿筋膜張筋の起始停止
(Visible bodyから引用)
起始:上前腸骨棘
停止:腸脛靭帯を経て脛骨外側顆
支配神経:上殿神経L4~5
作用:股関節の屈曲・外転、膝関節の伸展/屈曲・外旋
(基礎運動学第6版)
起始:上前腸骨棘と大腿筋膜内面
停止:腸脛靭帯を経て脛骨外側顆の前面の粗面
支配神経:上殿神経L4~5
作用:大腿を前に上げ、かつ内旋、伸ばした下腿を固定(伸展作用)
(分担解剖学1総説・骨学・靱帯学・筋学)
起始:上前腸骨棘および大腿筋膜
停止:腸脛靭帯を経て脛骨ガーディ―結節、
腸脛靭帯は外側広筋の伸筋腱膜と合して大腿骨外側顆と腓骨頭に付着
支配神経:上殿神経L4~5、S1
作用:股関節の屈曲・外転・内旋、膝関節の伸展・外旋
(オーチスのキネシオロジー第2版)
大腿筋膜張筋は股関節と膝関節をまたぐ二関節筋であり、
その作用も多いですね。
その中でも股関節の屈曲・外転作用や下腿の外旋作用は
多くの下肢疾患に影響を与えています。
筋機能
大腿筋膜張筋の特徴は、筋断面積は小さい一方で大きな外転モーメントアームを有していることです。
股関節の屈曲モーメントアームも腸腰筋よりも大きいと報告されています。
しかし、運動の際の最大筋力は腸腰筋の約16%、中殿筋の約12%にすぎません。
そのため、単独での筋力低下や麻痺による歩行やその他の運動への影響はそれほど多くないと言われています。
むしろ問題となるのは、大腿筋膜張筋の緊張がある場合です。
可動域としては、股関節の伸展・内転と膝関節伸展位での股関節外旋が制限されます。
一般的な大腿筋膜張筋の緊張を評価するテストとしては、
オーバーテスト(Ober’s test)が知られています。
オーバーテストは骨盤、股関節、膝関節を適切な位置で行わないと正確な結果が得られないので、注意して行いましょう。
腸脛靭帯炎(ランナー膝/ランナーズニー)についても簡単に解説してみます。
腸脛靭帯炎とは、腸脛靭帯と大腿骨外側上顆が何度もこすれ合うことで炎症が生じる疾患です。
膝関節屈曲30°付近で腸脛靭帯が大腿骨外側上顆を乗り越えることが知られており、その付近の角度のときに痛みが再現されます。
痛みとしては走行時の立脚相で訴えられることが多いです。
また、膝前方の痛み(AKP:Anterior Knee Pain)にも大腿筋膜張筋が関与していることがあります。
メカニズムとしては、腸脛靭帯の一部が膝蓋骨の外側にも付着していることに関係しています。
大腿筋膜張筋や腸脛靭帯が緊張することで、膝蓋骨を外方に引きアライメントが崩れることで膝蓋腱や膝蓋下脂肪体にストレスが集中しやすくなります。
腸脛靭帯炎やAKPの治療戦略としては、まずはなぜそこにストレスが集中しているのかをちゃんと評価しましょう。
大腿筋膜張筋が緊張していることがほとんどですが、
なぜその緊張が起こっているのかまで考えていくことが重要になります。
股関節の可動域やアライメント、足部からの影響、股関節伸展位での筋出力、荷重、などなど。
色々な視点から評価してみましょう。
筋膜連結
大腿筋膜張筋は筋膜連結としてはラテラル・ライン(LL)とスパイラル・ライン(SPL)に含まれます。
(中略)⇒大殿筋⇒大腿筋膜張筋⇒腸脛靭帯⇒腓骨筋
大腿筋膜張筋が緊張しているときは、ラテラル・ラインの短縮が起こっていることが非常に多いです。
特に腓骨筋や大殿筋。
この辺りはぜひともチェックしてみてください。
また側腹部へもつながっていくので、側屈制限などが関わっているときもあります。
もう一つは、スパイラル・ライン(SPL)です。
(中略)⇒外腹斜筋⇒内腹斜筋⇒大腿筋膜張筋⇒前脛骨筋⇒(中略)
こちらの筋膜ラインでは腹部で対側へクロスします。
そのため、緊張している大腿筋膜張筋の対側の影響も考慮していく必要がありますね。
腹斜筋を介して前鋸筋までつながっていくことからも、
肩関節の影響が反対側の大腿筋膜張筋の緊張につながっていることもあるということです。
経絡
胆経はラテラル・ラインと似た走行をしています。
外側を足部から体幹部まで走行しています。
筋肉としてはラテラル・ラインと同じように考えてほとんど問題ありません。
詳細は前鋸筋でも解説していますので参考にしてみてください。
大腿筋膜張筋の周辺組織
(Visible bodyから引用)
大腿筋膜張筋は大腿外側の表層に位置しているので、基本的には周辺の筋肉を整理してみます。
起始部付近では、中殿筋と隣接しています。
そこから下肢を下っていくところでは、起始部付近では大腿直筋と、膝に近づくほど外側広筋に乗るように走行しています。
治療においてはこの周辺組織から大腿筋膜張筋と腸脛靭帯を丁寧にリリースしていくことが必要になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
実際に治療対象となることも多い大腿筋膜張筋と腸脛靭帯について解説しました。
解剖や筋機能などの具体的なところを整理して、痛みやアライメントが崩れている原因を考えていけるようにしましょう。
それではまた来週!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
各種SNSでも情報発信しています。
ご興味あれば覗いてみてくださいね!
トレーナー仲間で日々の気付きをブログにしています。
ご興味あれば覗いてみてください。
《心のストレッチ》ブログ
心と身体のつながりを日々検証し、共有するオンラインサロン、
《心のストレッチ》心身相関Labもぜひご覧ください。