あの日見た緋色の空は、今も変わらずそこにあった
昔から空が好きだった。空の色も好きだった。
その中でも、緋色の空は僕にとってちょっと特別だ。
中学3年生の時、僕はあるアニメと出会った。
『灼眼のシャナ』という、原作をライトノベル小説に持つ作品だ。
これは僕のオタク人生の始まりであり、バイブルである作品でもある。
そして、そのOP(オープニング)主題歌として流れていたのが、川田まみさんが歌う『緋色の空』という曲だった。
ちなみに読み方は本来であれば「ひいろのそら」となるが、この曲においては「ひしょくのそら」と読む。
この曲を初めて聞いた時、魂を揺さぶられた気がした。
メロディーや歌詞はもちろん、曲の持つ独特の雰囲気や世界観は僕を今まで知らなかった世界に連れて行ってくれた。
そして紅 紅塵(こうじん)を撒き夕日を背に今始まる さあ
この曲の歌詞の中でも、特に好きな部分だ。
この曲を聴き始めてから、僕は緋色の空が本当に好きになった。ふと空を見上げた時、緋色に染まっているのを見るとそのたびにこの曲を思い出していた。
辛い時や苦しい時、元気が出ない時にこの曲に何度も励まされてきた。
あれから15年が経ち、灼眼のシャナという作品は完結し、川田まみというアーティストは歌手活動を引退した。
この2つの終わりは、僕のオタク人生と青春のストーリーに終止符を打った。
年齢的に言えばこれらは20歳の時に終わっていたのだが、心の中にわずかに残っていた小さな灯も、これを以て完全に消え去った。
もっとも、それは全く悲しいことではない。何事にも終わりはあるもので、1つの時代が終わったということは新しい時代が始まったということでもあるし、次のステージに進むために必要な通過儀礼だったのだ。
それでも今なお、『緋色の空』はこの世に残り続けているし、僕は今日もこの曲を聴いているし、きっと僕以外にもこの曲を聴いている人がたくさんいる。
15年前に初めて聴いた時と何も変わらず、色褪せることなく、大切な曲であり続けている。
昨日、スーパーでの買い物の帰り道、ふと上を見上げるとそこには鮮やかな緋色の空が広がっていた。
緋色の空はこれから夜を迎えるという合図であり、そこから世界は闇に包まれ、そしてしばらくした後、爛々と輝く朝日が出てくる。
そういう意味で、緋色の空はまさに全ての始まりなのだ。
相も変わらずこの世界は毎日バタバタしていて、喧騒は絶えることなく、今日もどこかで何かが起きている。
しかしそんなものに臆する必要はない。根拠も無い周囲の言動や行動に振り回されず、自分の軸をしっかり持ち、強く強く生きていこう。
何事にも必ず終わりは存在し、それと同時にまた新しい何かが始まっていく。
その始まりの世界を笑顔で迎えられるように、心も身体も強く研ぎ澄ませていこう。
そして紅 紅塵(こうじん)を撒き夕日を背に今始まる さあ