#91 ライバルとの遭遇

「もう、こういう時ってなんで焦ってコンタクト入んないんだよー」
ブツクサ言いながら階段を駆け下り車へダッシュ

「あ、これだ!あったあった」
そしてまた練女道場へとダッシュ

ガラガラガラ
横開きの扉を開く


?!!!


「おー!!ビックリしたぁー!!」

いやこっちもビックリしたし!

そう扉を開けて入ろうとする私と出ようとしていた人が鉢合わせ状態


「んん?なっ!!」

そうそこに立っていたのはコットンキャンディの髪の毛を右上の方で一つ結びしTシャツ短パンにジャージを腰巻きした私が勝手にライバル視しているUNIだった!!

す、すっぴん?
なんか棒付きの飴咥えてる
まつ毛長っ!目大っき!小鼻ちっさ!etcetc

これが私と同じ人間なんて、、、神様を恨むぜぃ

いやいやそんなこと考えてる場合ではない!
こっちは同期だと思っているがやはり業界的には先輩に当たる
なんか妙な悔しさもあるが私がここで挨拶をしなければ回り回って夢子さんやセカジョが馬鹿にされるかも知れない

よし!意を決した
「はじめまして!全世界女、、、」

「え!え!え!たまちゃんじゃん!!ヤバッ!」

「へ?」

「ヤバ!かわいいー!普段メガネなんだー?えー意外」
なんて言いながらUNIは私の体をペタペタと触る

え!なんなんコイツ

「観たよー!セコンドすごいカッコ良かったじゃあん!すごーいめちゃ有名人に会えたわ嬉しー」
ペタペタペタ

「え、え、写真撮ろ!」
そう言って半ば強引に肩を引き寄せられて

「はーい!ウェーイ!」
パシャッ

そして写真を確認するUNI

「えーっ!たまちゃん顔ひきつってんじゃん!もっかい撮ろ!」

ジュルッ
やばやば
一本指を立てておねだり顔のUNIのかわいさに女の私も落とされそうだ

いやいやいかん!

「あ、えー、ゆ、夢子さんが、夢子さんがこのポーチを待ってますんで!」
そう言ってポーチをUNIに見せる

「えーーっ!ケチーっ」

「あ、ま、し、失礼します!」
私は振り向き階段を上ろうとした

その時

「たまちゃーん!」
呼び止められた

振り返える私

「映像じゃさぁ細っちいなって思ってたけど、、、いい体してんじゃん!」
咥えてた飴で私を指す

その目はさっきまでのノリの軽いギャルのモノとは違い威嚇するプロレスラーのモノに感じた

私の中に走る緊張感
条件反射的にUNIを睨み返していた

だがすぐに飴をまた口に咥え
「バイバーイ!また後でね!」
とニコッとし手を振ってきた

1、2、3秒ほどUNIの顔を凝視
怒り?悔しさ?
自分でも言葉に表せない感情が沸々と湧いてきた

私は目を伏せ小声で
「、、、失礼します」
そう言って階段を上がっていった


控室代わりのトレーニングルーム
夢子さんにポーチを手渡す

「ありがとう、、、ん?何かアンタ様子変じゃない?どうかした?」

「あ、いえ、、、何もないです」

「あ、そう。まぁいいけど。でもアンタ顔に全部出てるから、、、フッ、何があったか知らないけどいいんじゃない?プロレスラーはいろんな感情を糧に生きてかなきゃならないからね」
そう言って夢子さんはメイクを始めた

「ハ、ハイ、、、」
夢子さんは何でもお見通しだ
でも試合前の夢子さんにわざわざ話すことでもないと思った

でもこの不思議な感情は一体なんだろう?
沸々、沸々

私は私でバケツに水やタオル、予備のTシャツなどを入れたりとセコンドの準備

「あ、夢子さんガウン掛けときますけど」

夢子さんは手を休めることなく
「あー、今日は持って来てない」

「え、どうしてですか?」

「ベルト持ってない時に敵地に乗り込む時は着ないんだ。別にこれっていう理由はないけどね。裸一貫で勝負したいっていうかさ」

そっか薨もそうだったけどガウンを着る着ないということにもそれぞれに意味合いがあるんだね

少しずつ普段の夢子さんからプロレスラー雨宮夢子へと変わっていく

黒くアイラインで縁取られた瞳
そのラインをさらに強調するかのような黒に近いパープルのシャドウ
見てるだけで私の心臓がバクバク鳴ってくる
そのレスラーとしての色気と威圧感
纏うオーラがもはや異次元である

セミロングの髪の毛をアイロンで整え
「よしっ!そろそろ着替えるかな」

紫のインナーの紐を入念に締め上げ鎧のような革のコスチュームに体を通す

私の目の前に初めてプロレスラー雨宮夢子が現れた

「これが雨宮夢子なんだぁ、、、」
思わず声に出す

「ん?何、アンタ今呼び捨てしてなかった?」

「い、いえいえ、そんなワケないじゃないですかぁー!!」
手を振り必死に否定
普段の感じだが800倍怖かった

そして夢子さんはコスチュームでのストレッチ

「コスチューム着て動くの久々だから入念にしとかないとね」


するとちづる選手が入ってきて
「夢子さん!そろそろ大会始まりますのでよろしくお願いします!」

「え、うん」
返事はするがそのままストレッチを続ける

その様子を見ていたちづる選手は私の横にぴょこんと近付いて小声で
「やっぱ夢子さんってカッコいいよね!」

そう言ってから
「じゃあまた呼びに来ますのでお願いします!」
一礼して部屋を出て行った


そろそろ試合始まるのかぁ
見たいなぁー
でもダメかぁ

せめてアイツの試合だけでも、、、


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集