【ゲイ恋】キミはボクの宝物
俺がまだ20代前半の頃、てつという4つ下の子と付き合っていた。
てつは寝る前にCDをセットして、それを子守唄代わりに眠りに落ちていた。そのCDは槇原敬之の3枚目のアルバム「君は僕の宝物」だった。
当時、俺はマッキーにさほど興味は無かったし、BGMを聞きながら眠る習慣はなかったので寝入るまで結構時間がかかっていた。それでもすやすや眠るてつの頬にキスをして幸せを感じていた。
それから月日は流れ、俺のわがままで別れることになった。「もう出会った頃のように好きじゃなくなったんだ。本当にごめん!」こんな自己中な俺の言葉を黙って聞いてくれて、てつは「今まで本当にありがとう。元気でね。」と言ってくれた。
それから1週間後、突然、本当に突然、「君は僕の宝物」を無性に聴きたくなって、どうしても聴きたくなってCDショップに車を走らせた。
そして何度も何度も聴いた。毎日繰り返し聴いた。宝物に出来なかったてつのことを想いながら。
どうしてなんだろう?振ったのは俺の方なのに。どうして感傷的に、切なくなるんだろう?どうしてこんなに胸が痛いんだろう?答えを探すように、心の隙間を埋めるように「君は僕の宝物」を聴きまくった。
そして今ではマッキーは俺の大好きなアーティストの一人になった。
今でもときどき思い出す、てつのことを。どこかで誰かとマッキーの「桃」のようなあたたかい関係を築いているように祈っています。
※初出はポッドキャスト番組•Podcast プログラム ねえねえなになに Ep16