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新卒採用の”7つの不都合な真実”と”対策”。(新卒採用の教科書 #2)

現在、都内の採用・組織コンサルティングファームにてコンサルタントをしている奈良高志です。本記事では、中小ベンチャー企業の新卒採用活動における「不都合な真実」、言い換えるならば「真実だと認めると、特定の人にとって不都合となるような真実」を7つご紹介していきます。また、それらの不都合な真実を受け入れながらも、どのようにして中小ベンチャー企業が新卒採用活動というゲームを攻略していけばいいのか、その具体的なアプローチについて、これまで社員数数万名のグローバル外資企業の採用戦略策定から、社員数10名未満の地方中小企業の採用伴走支援まで、50社超の採用プロジェクトを歴任してきた私の成功と失敗にもとづく経験をベースに語りたいと思います。

今回、この記事を書こうと思った背景は3つあります。

1. 昨今の新卒採用市場の大きな変化の中で、従来の考え方や固定概念に囚われていることはリスクであり、過去の「当たり前」を捨てる勇気を持つことが大事だと感じているため。

2. 具体的なアクションの伴わない指針は机上の空論になりかねないため、一社でも多くの企業の採用活動が具体的なアクションや変化を通じてよくなり、学生と企業の双方がWIN-WINになれる採用活動を実現してほしいと思っているため。

3. わたしの志が「情報と機会の格差をなくし、”最高の命の使い方”と”人生への決断”を日本中に広める🔥🔥🔥」(突然の絵文字w)というものであり、学生の出口であり社会人の入り口となる採用活動を本質的かつ効果的な活動にすることが、自分の志の実現にも通じているため。

また、本記事は具体的な内容にも触れつつ、あくまで指針となるものを示しています。そのため、ぜひこれらの指針をベースに、みなさまの会社に眠る魅力や強みを掛け合わせ、変化の激しい新卒採用市場において自社ならではの採用活動を確立していただく一助になれば幸いです。

本記事は、主には中小ベンチャー企業の
1)経営層の方(経営者/CXO)
2)人事担当者の方(人事部/採用責任者/リクルーター)

を想定読者に執筆しております。

気合が入り過ぎて1万字を超える超大作になってしまいましたが、ぜひお付き合いいただければ幸いです(汗)また、こちらの記事は「無料記事」としています。その理由は、先ほどあげた記事を執筆した背景にある通り、一社でも多くの企業と学生の双方がWIN-WINになれる採用活動を実現してほしいという想いからです。お読みいただき価値を感じられた場合は、ぜひ「スキ❤️「チップで応援する」、Xでの拡散などでリアクションいただけると嬉しいです!

それでは、レッツゴー!



不都合な真実①:候補者を「選べる」とは限らない。

時代は、空前の「売り手市場」

ご存じの方も多いかもしれませんが、今、新卒採用の市場は空前の「売り手市場」へと変化してきています。特に、今回のメインターゲットでもある中小ベンチャー企業を従業員数300名未満と仮定すると、以下のグラフにある通り、大卒求人倍率は「6.50倍」であり、コロナ禍前のピークである2019年卒の「9.91倍」、2020年卒の「8.62倍」に次ぐ非常に高い水準。過去15年程度をさかのぼっても、非常に売り手市場であり、コロナ禍以降右肩上がりでその傾向が続いています。

『第41回 ワークス大卒求人倍率調査(2025年卒)』より

また、新卒採用に限った話ではありませんが、マクロな視点ではよりこの流れは加速するものと思われます。パーソル総合研究所・中央大学のデータによると、2035年には今の倍以上、労働力が不足する未来が予想されており、労働力不足による企業経営の悪化、および倒産、ひいては日本経済のさらなる停滞にまで大きく影響が波及していく見込みです。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC178CZ0X11C24A0000000/ より

すなわち、すでに候補者を「選ぶ」時代から、候補者に「選ばれる」時代へと変化してきており、「選ぶ」発想で待ち構え続ける会社から淘汰されていくような未来がすぐ先に待っていると言えます。

では、具体的にこの事実を受け止めたうえで、どのような発想で採用活動をデザインしていけばよいのでしょうか?

「売り手市場」でとるべき2つの発想

まず1つ目の発想は、「大企業とは異なる動き方をする」ということです。理由は単純明快。大企業と同じ時期に動き、同じような採用活動をしていたら、比較競争の勝負に巻き込まれ、勝率は低いからです(ただし、大手が狙いたいような優秀人材を採用することが前提である)。実際に、「毎年大学4年生にアプローチして採れていたから」という理由で採用をおこなったものの、市況の変化の中で学生が採りきれず、アクティブな学生も少なく挽回もできなかった企業様も目にしてきました。

であるならば、とるべき動きは「大手が動かない時期に」「大手ができないアプローチで」学生に接触を試みること。たとえば、
〇 大企業よりも先にインターンの広報を行い、参加してもらう
〇 早期のうちから「逆張りの発想」を啓蒙し、学生の考え方を広げる
〇 大手ではできない経験があり、独自の魅力があることを認知してもらう
〇 機械的対応でなく、個別性と粘着度の高いコミュニケーションで心を掴む
〇 条件だけでなく、価値観や理念ビジョンなどの本質への共感醸成を行う

などの動き方や、採用全体のデザインをしていくことが必要となる。

そして、もう1つの発想は「リスクヘッジをきちんとする」こと。非常に高い辞退率にもなりつつある昨今。母集団数が少ない状態だと、途中から打ち手を講じたり掘り起こしを試みることも難しくなるため、ある程度の母集団数を確保してリスクヘッジをすることが必要とある。ただ、その先の出口にある内定に向けて抑えておかなければならないのが、「どのような状態で内定を出すか」ということ

よく内定辞退を恐れて「志望度は高まっていないが、他社が先に内定を出して辞退される前に、ウチが先に内定を出そう」という考えのもと、内定出しをおこなう企業を目にします。しかし、私が多くのケースを見てきた中で、このパターンで内定を出して承諾されるのは30%程度、高くて50%といったところです。このようなギャンブル的な承諾数のコントロールはあまり本質的とは言えないし、学生にとっても企業にとっても腹の探り合いになる構図が生まれるため、お互いに気持ち的にもしんどい。そして、そもそも「片思いになってしまっている」という内定辞退の根本的な理由に対して、効果的なアプローチになっているとは言い難いです。

であるならば、発想を変えるべきです。とるべき発想はシンプル。「相思相愛になった状態で、内定を出す。」これに尽きます。このように書くと、「相思相愛にするのはむずかしくないですか…」という声をもらうことがあるが、先ほど書いたように、内定を先に出してしまうとお互いに腹の探り合いになるため、そもそも内定を出した後に相思相愛になる方が難しいと言える。確率的にも、先に相思相愛を目指す方が勝率は高いと言えるでしょう。また、先に相思相愛を目指しやすいのにはもう一つ理由がある。それが、「純粋な応援者」の立ち位置を企業側が取りやすいからだ。特に、面接官が別におり、学生フォローを採用担当やリクルーターが行っているケースは、中立的な立場から「その学生が就活で最善の意思決定をするための応援者」という立ち位置で伴走しやすいのです。時には、自社の最終選考に向けた壁打ち相手やアドバイザーになってもよいでしょう。内定出しの後に関わろうとしても、承諾への引力が双方に働いてしまうため、この中立性を保ちながら伴走できるのが大きな強みといえます。

また、このように内定出し前にしっかりと相思相愛を目指すためには、企業側にある程度の「心の余裕」がないと難しいです。そのため、話は戻るが母集団数を確保し、ある程度の余剰数を抱えた状態でリスクヘッジも講じられる状態を整え、クロージング対象者を増やすことが大事なのです。

「選ばれる」ためには、学生の感情ゴールから逆算したコンテンツ準備がすべて

ここまで発想について触れてきたが、どれだけ「大手が動かない時期に」「大手ができないアプローチで」「リスクヘッジ」をしたとしても、大事になってくるのは学生の「感情(気持ち・志望度)の変化」をいかに創るかという点です。採用活動は、目に見える商品を売る活動ではなく、候補者の人生の物語の中に、自社で働くというストーリーを見せていく活動。すなわち、選考を通じた体験を通して、自社で働くというストーリーが他社に入ることよりも魅力的に感じてもらうことが最も大事なのです。

また、新卒採用活動のメリットは、学生が価値を感じたら「口コミ」が発生することです。良質な選考体験は、良質な口コミを生みます。逆に、ネガティブな選考体験は、ネガティブな口コミを生みます。そして、口コミはコストもかからず、学生の参加率も非常に高いため、「最強の集客・営業」と言えます。ですから、選考での体験をどのようにデザインし、どのように良質な感情を生み出していくかが「選ばれる」上では非常に大事なのです。

では、具体的にはどのように考えていけばいいのでしょうか?わかりやすく簡略化したイメージがこちらになります。

まずは感情ゴールを設定します。(ここではわかりやすく「入社したい!」と簡略化して表現していますが、より精緻に自社が選ばれたい理由を言語化できるとgoodです。)そのうえで、感情ゴールを実現するために、どのような感情変化(①②③)を踏めばその感情ゴールへと到達できるかを想像していきます。そして、それらの感情を生むためには、どのような選考体験を提供すればいいのかをブレストし、言語化していきます。ここに一貫性とストーリー性が乗ってくれば、概ね筋の良い選考体験がデザインできると言えるでしょう。そのうえで、最後にコンテンツを考えていきます。どのような内容をどの社員からどのように伝えるか、または学生にどのような体験をしてもらうか。緻密に設計をしていきましょう。

どのような感情を乗せてコンテンツを作っていくか?

これはその会社がどのような人材を求めるか次第ですが、多くの企業は選考でのさまざまなコンテンツを通して学生に「楽しかった」という感情を届けたいと考えることが大半だと思います。しかし、わたしはもう一つ大事な感情があると考えています。それが「悔しかった」です。候補者となる学生たちは、「自分がどの会社であれば成長でき、未来が最も切り拓かれるのか?」という点を無意識に意識し、判断しています。「悔しかった」という感情は、裏返すとその会社で成長できる余地があることを示します。誰でもできる簡単なコンテンツを体験し、「楽しいけど、この仕事は誰でもできそうだな」という感覚を持たれることは、むしろ意欲的な学生たちには志望度を下げる要因をなりえます。ですから、各コンテンツを考えていく際は、「時間」「難易度」「担当社員」「フィードバックレベル」「(グループワーク形式の場合は)チーム構成」の調整・設定が非常に肝になります


不都合な真実②:「ブランド力」のない企業はそもそも応募が少ない。

「ブランド力」とは何か?

「ブランド力のない企業は応募が少ない。」これは自明の理だ。大手企業の方が応募数が多いのも疑いようがありません。しかし、あきらめるのは時期尚早です。「ブランド」と言っても、「企業ブランド」と「採用ブランド」は似て非なるものだからだ。また、もう少し踏み込んで表現するのであれば、「採用ブランド」を通して、その会社の「企業ブランド」を進化・浸透させることもできる。どういうことか?

まず、「企業ブランド」とは、「〇〇っぽい」「〇〇らしいね」「〇〇と言えば」という類のものだ。たとえば、「サ〇バーエージェント=若手活躍組織」「オー〇ンハウス=超体育会組織」だ。ここまでエッジが効いていると、むしろ合わない学生が応募してくる可能性はグッと減り、むしろ自社にマッチした人材が採用しやすくなると言えます。中長期的にはこのブランド状態をつくることを、企業としては目指していきたいところです。

しかし、中小ベンチャー企業は、そこまでの企業ブランドの認知にかけられる予算やリソースはないことが多い。であれば、どうするべきか?それが「採用ブランド」への投資だ。特に、新卒採用は先輩から後輩へ情報やイメージが連鎖していくのが特徴の1つ。つまり、ある種の「資産」として、年々学生の就活市場に自社の「採用ブランド」を蓄積していくことができるのだ。裏を返すと、一人でも多くの学生を集め、選考体験を通じて「採用ブランド」を広げていくことができれば、中長期的にはマーケティングコストを少しずつ浮かせていくことも目指せなくないということだ。

理想的な口コミから逆算した「採用ブランド」の設計が肝

また、もう一つ大事になるのが、どのようなイメージが口コミされるか、そこから逆算した「採用ブランド」の設計です。たとえば、「あの会社のインターンや選考はめちゃくちゃ学びになるよ!」「あの会社に集まる人はめっちゃレベル高いから一度行くといいよ!」など、どんな感じでもOKです。理想的な口コミ状態から逆算し、自社の魅力や強みを掛け合わせ、ターゲットに刺さるメッセージへと昇華させていくことができれば、「企業ブランド」がない会社でも、「採用ブランド」という土俵で学生を集め、マッチした人材を採用していきやすくなるのだ。諦める前に、まずできる手前の「採用ブランド」の見直しと、地道な浸透から考えていくのが大事だ。

さらには、話は広がるが、仮に新卒採用時に自社に入社をしなかったとしても、その候補者の中に残るイメージが強く残れば残るほど、第二新卒や中途採用としてまた自社に舞い戻ってくる可能性もあるのです。その意味でも、自社の「採用ブランド」を明確に打ち出していく企業ほど、長い目で見ても強い採用力を手にすると言えるでしょう。恋愛と同じで、中途半端で印象の薄い人は誰からも気にされないです。(←ビシッと格言風に締めてますが、そこまで恋愛経験豊富ではありません。すみません…汗)


不都合な真実③:採用の成否は、「どの社員を候補者にあてるか」で決まる。

「人事担当者自身が採用活動に自信を持てていない」ケース

多くの企業で目にしてきた現象が、「人事担当者自身が採用活動に自信を持てていない」という状況です。それもそのはず。社長や経営陣から指名され、訳も分からぬまま採用担当にアサインされるケースや、中途で入社し自社への理解度・共感度が浅い中で採用活動をせざるを得ないことも多いからだ。この問題に対して、まず間違いなく言えることは「採用する側の自信や確信次第で、採用の成否は決まってしまう」ということだ。

布陣を変えると、結果が変わる

であればやるべきは1つ。すぐに布陣を変えることだ。具体的には、学生との接触が多いポジションに、自社や自分自身への自信や確信度の高いメンバーをアサインすること。それも、好意的に採用活動を捉えているメンバーだとなお良い。これが最も効果的だ。一言でいうのであれば、「自社のことが好きで、仲間集めに前向きな社員」を入れるべきです。

なぜか?そもそも学生は、前で登壇して話す社員を通じて、その会社へのイメージや、自分が入社してからどんな社会人になれるのかを想像します。裏返すと、学生を惹きつけ、憧れの対象となり、自社への志望度を高められるメンバーが出れば効果的にもなるが、自社への確信や自信が欠如したメンバーが出れば逆効果にもなるのだ。また、選考フェーズによってもアサインする社員は変えるほうがいいです。初期段階は若手メイン。学生が働くイメージをより身近に持てるからだ。後半段階はベテランが登場だ。中長期の視点や自社の価値観をより深く訴求しつつ、「こんな人たちの下で一緒に働いてみたい」という無意識に働きかける必要があるからだ。そして、ベテランの関わり方が、クロージングの効き具合にも影響してくる。

また、なるべく採用活動に前向きな社員をアサインすること。面白い事例を1つ紹介しましょう。私が聞いた話だが、ある会社で、採用チームの立ち上げにあたり手上げ制で希望者を募った。その年、希望者を中心に、採用チームが組成された。1年後、結果は新卒採用本格始動にもかかわらず過去最高の人数のマッチした人材を厳選して選んだ後に採用することができたのだ。しかし、翌年度以降はその後は手上げ制で希望者を募るのではなく、経営陣が決めたメンバーが採用活動を担うようになった。結果はどうか。採用に苦戦し始め、採用数は半分近くに。この事例からも分かるように、どのメンバーで採用の布陣を組むか、自社のドリームチームを組成することから、採用活動はスタートする。お金をかけずとも、布陣を変えるだけでガラッと結果は変わることもあるのだ。

経営陣が自社への自信や確信がないケースは?

では、経営陣が自社への自信や確信がないケースはどうしたらいいのだろうか?これは、採用の手前の問題だとも言えます。経営陣、特に社長は、中小企業の採用コンテンツにおいては最も強力に惹きつけられる武器と言える(便宜上、武器と表現させていただくことご容赦ください)。その経営陣に自信や確信がない場合は、社員も同様の可能性があり、採用活動よりも、まずは全員で自社の魅力を考えたり、改めて自社への理解度を深めるなどの機会が必要です。そして、社長自身がどんなビジョンに向かっていきたいか、根本から向き合い、社員にも打ち出していく必要があると言えます。


不都合な真実④:「理想の人材」はほとんど存在しない。

「ペルソナ」は作成する意味があるのか?

採用活動はマーケティング活動であるため、よく言われるのが採用したい理想の人材の「ペルソナ」を作成したほうがいいという話です。(ペルソナについて知りたい方は以下サイトが分かりやすくまとまっているのでぜひご覧ください)


私自身、ペルソナの必要性については異論はありません。しかし、本当にそんな人材がいるのでしょうか?答えは「いるかもしれないし、いないかもしれない。むしろ、いない可能性の方も高い(笑)」ということです。なぜか?それは(これを言ったら元も子もないが)ペルソナが架空の人物の想像であるからです。では、「ペルソナを作成する意味がないじゃん!」とツッコミたくなるが、そうとも言えないのがおもしろいところなのです。

ペルソナとは、道しるべである

私なりの表現になりますが、ペルソナとは「自社が採用すべき人材への道しるべ、すならちコンパスの指針」であると考えています。

私が男子高出身なので、(わかりやすいかはさておき)例えを用いて考えてみましょう。皆さんは女子学生です(男性の方も女性の気持ちでお願いします。異論は認めません。)。理由はいろいろあると思いますが、あなたは男子高校生と出逢いたいとします。その場合「女子高に行く」か、それとも「男子校に行く」か、どちらに行けば男子高校生と出逢えるでしょうか?答えは明白、男子校のはずです。では次に、男子の中でもサッカー部のゴールキーパーと出逢いたいとします。「サッカー部がある男子校」か、「サッカー部がない男子校」か、どちらに行くべきでしょうか?これも答えは、「サッカー部がある男子校」のはずです。

つまり何が言いたいかというと、本当にそこにいるかは行ってみないと分からないが、そこに行くまでの過程で自社がどのような選択をしてターゲットに会いに行くかの道しるべになるものが「ペルソナ」なのです。
採用活動はどこまでいっても会ってみて話してみないことには、どんな人材なのか、自社にマッチしているのか、は判断できません。ただ、中小ベンチャー企業のリソースは限られている中で、誰でも彼でも会えばいいというわけでもないのが実情。とするならば、効率的に確率高く自社が求めるターゲット人材に出逢えるところにいる人たちと出逢って話す方が良いと言えます。また、仮にそこに行ってみたものの理想の人材がいなかったとしても、仮説をもって動いた結果であれば、次年度に向けたPDCAを回すための参考材料にもなります。この世の中で「100%確実」なことなどありません。理想の人材はいるかもしれないが、100%会えるということも保証はない。だからこそ、採用活動は不安に駆られることもありますが、大事なことは自分たちが信じた道を進み続けること。そのために、信じられるペルソナを指針にすることが、不確実性の高い長期戦の新卒採用活動をおこなう上では大事なのではないでしょうか。

理想の人材を「引き寄せる」という発想

話は変わりますが、私は「引き寄せの法則はある」と考えています(笑)このあたりの話を説明すると、量子力学やスピリチュアル的なエッセンスも入ってくるので詳細は割愛しますが、これまでの経験上、確実にあると断言できます。実際に、この世の中は、目に見えない素粒子の粒から成り立っています。これらの粒がどのように振動し、震えるかで、現実が変わっていきます。たとえば、街中でオーラがある人を見かけてつい目で追ってしまう現象や、人だかりができるお店に人が引き寄せられていく現象はまさにそれです。

つまり、「理想の人材」というテーマに即してお伝えするのであれば、「いかに引き寄せるか」という視点も合わせて持つべきだと考えています。そして、引き寄せるためには、よい波動で、よいムードを生み出すことが大事です。ムードの良い会社には、人が集まります。逆に、しけた顔をして、あきらめムードの会社には、いい人材は引き寄せられてきません。

大事なことは、「いい人材がこない」のではなく、「いい人材を自分たちが引き寄せていない」という考え方も持つことです。ムードがいいと、ポジティブな発想で、ポジティブな行動も生まれやすいです。そして、ポジティブな行動はポジティブな影響を与え、ポジティブな結果を生み出します。理想の人材を引き寄せていくためには、目先のやり方や結果といった「Doing」の前に、自分たちの在り方「Being」を整えていくことも非常に大事だと言える。「みなさんの会社、そして採用チームは、いいムードですか?」

※おまけ※
引き寄せの法則などが気になった方はぜひこちらをご覧ください。わたしも書籍を読んだりセミナーに参加させていだき大変共感し学びを得ている村松大輔先生のセミナー動画になります。ご興味ある方はぜひ一度足を運ばれてみるとよいかと思います♪


不都合な真実⑤:評価の「バラつき」はゼロにはできない。

「面接官によって評価バラバラ問題」の前提とは

「面接官によって評価がバラバラで・・・」というお悩み相談をよくいただく。でも、それはそうです(笑)人によって価値観は違うし、学生との相性もあります。最後の最後はどうしても俗人化せざるを得ないし、100%明確に評価を揃えることはまず不可能です。そして、まずはその事実を受け入れ、この前提に立つ方が建設的ではないかなと思います。そのうえで、いかに評価を揃えていくかという努力を続けるが大事だと思います。では、具体的にどのような取り組みをすればいいのか、3つに絞ってご紹介したいと思います。

評価内容の言語化

やるべきことの1つ目は、「評価内容の言語化」です。たとえば、「明るくコミュニケーションができる」という評価基準があったとします。しかし、これでは人によって「明るいコミュニケーション」の定義や解釈も異なるので、評価が割れるのは目に見えています。
ここで決めるべきは、「明るくってどいう発言やエネルギーや振る舞いをしていること?」「コミュニケーションはバーバル・ノンバーバル、どこまで含めて?」「できるというのは、自発的に?それともこちらからの促しに対するリアクションも含めて?」など、一つ一つの丁寧な言語化です。そして、このイメージを面接官と共有することが必要なのです。

評価基準の定義

2つ目は、「評価基準の定義」をするとよいです。たとえば、先ほどの評価内容にもとづき、100~0点までの評価がつけられるとします。しかし、人によってこの100点の定義やイメージが異なれば、同じ学生を100点とする人もいれば、90点とする人も出てきてしまいます。ですから、評価をする際の基準も言語化し、定義を揃えていくことが必要なのです。

ラストワンマイルは泥臭く

そして最後3つ目は、(これが一番大事ですが)「都度フィードバックをし、すり合わせていく」ということです。結局、1つ目と2つ目の取り組みをして面接官に評価を丸投げしても、基準が合うことは稀です。なぜか?面接官も暇じゃないからです。であるならば、人事や採用チームが主導権をもって、面接前後の認識合わせやフィードバックの時間を設け、一回一回の面接でのすり合わせをしていくことが必要です。属人性のラストワンマイルをカバーしにいく動きが人事部には求められます。仕組をつくったら問題が解決するという甘い幻想は抱かない方がいいです。採用とはどこまでいっても人に依存するからこそ、泥臭く向き合い続けることが採用チームには求められます。ここから逃げない。これが一番の特効薬です。


不都合な真実⑥:高い「採用コスト」に見合わない成果もありえる。

コストと成果が連動しづらい時代

新卒初任給の引き上げにはじまり、母集団が集まりづらい時代になっているからこそ、各社採用コストが増大しています。つまり、採用単価が上昇しているのです。そのような中でコストと成果はどの企業も重視するポイント。しかし、以下の点にあるように、コストと成果が連動しづらい市況にもなってきていると言えます。

①母集団形成の成果が出づらくなってきている

  • 受け身でも内定がもらえる市況

  • 合同説明会からのつながりが低くなっている

  • Offerboxなどスカウトサイトも企業も学生も飽和状態

  • 説明会参加数は年々減少している

②大手と中小ベンチャーの間での「情報の非対称性」

  • 大手のマーケティングや認知活動が強化、SNS広告なども増加

  • 学生の動きも既存のナビサイトや合同説明会主体の動きから、SNSや口コミサイト、WEBサイトを閲覧したうえでの応募へと変化してきている

  • すなわち、中小ベンチャーよりも広告や広報活動への予算が大きい大企業に分がある市況

  • 最近だと学校に頼らずに就活をする学生が増えてきているため、大学のキャリアセンターも頭を抱えている状況

  • 結果、安パイな選択肢としての大手への志望学生も増えてきている

コストと成果が連動しづらい時代に、どうすべきか?

このような状況の中でどうしていくべきか?まずは「お金ではなく、知恵と工数で成果を出しに行く」ということが大事です。

知恵については、(営業でも同じだが)たとえば「紹介」という最もコストがかからない集客手法を確立できないかを模索するなどがあります。その場合、自社のイベントに「学生が学生を呼び込む構造」を生み出す発想が必要になります。プログラムの中で副次的に知り合いとのコミュニケーションを設ける時間を入れるなどあらゆる策を講じていく必要があり、ここに対して知恵を出すなどができることになるでしょう。

工数という面においては、大学1~2年生向けのインターンや、長期インターンや勉強会などの成長機会の提供などにリソースを当てていくということです。ただし、これらはリソースや企業体力の問題もあるため、社長と人事だけで採用活動をしている企業には難しい可能性が高いです。そのためにも、全社で採用活動を行うカルチャーづくりをしていくことも大事になります。

自社だけでPDCAを回そうとしない。

そして、もうひとつ大事なことが、自社だけでPDCAを回そうとしないということです。外部のコンサル会社、ナビ媒体の販売企業、他業界の経営者や人事など、他社の成功事例やホットな情報をリアルタイムで仕入れていくことが大事です。なぜならば、特に新卒採用活動は結果が分かるのが1年後、つまり年1回しか大きなPDCAを回せないため、自社だけで採用活動を内製化し、クローズドな採用活動をすればするほど、ドツボにハマっていく構造になっているからです。

また、外部とのつながりが生まれることで「共催」「コラボ」といった新たな発想で採用活動を広げやすくもなります。どの会社も人材確保には困っています。共に学び、共に協力し、共に成果を出す。そのようなWIN-WINな構造を創り出すことができれば、成果に一歩前進していけると言えるでしょう。他社をライバルでなく、味方につける。それくらいの器で採用活動を考えていけると、知恵や工数の面でもグッとできることの幅が広がり、景色が変わってくるはずです。


不都合な真実⑦:内定後のフォローでは「辞退率」は改善しづらい。

本質的な内定辞退防止とは?

多くの企業が、内定辞退を防ぐために「内定を出した後のフォローをどうするか?」を考えている様子をしばしば見かけます。もちろん必要なことなのですが、しかし、これはあまり本質的ではないと言えます。

たとえば、あなたが好きな人に告白をして、相手の反応がいまいちだったとします。その後のフォローでどこまで相手の反応を変えていけるでしょうか?おそらく難易度は高いはずです。なぜなら、初期接触のファーストインプレッションや、その後の会話やデートのコミュニケーションの積み重ねが、そのいまいちな反応の原因であるからです。つまり、告白をする前に、勝負はおおかた決着がついていることが多いのです。恋愛で例えましたが、これは企業の営業活動も同様です。営業の後半戦よりも、実は序盤戦で勝負がついていることもあるのです。

営業系の書籍をいつも読ませていただいているTORiX高橋様の資料より引用(以下リンク)
https://www.torix-corp.com/blog20220816/

つまり、「内定後」ではなく、「内定前」にこだわることが、本質的に内定辞退を防止するためのポイントなのです。では、具体的にどの点にこだわる必要があるのか?今回は特に大きな3つのポイントに絞って解説をしたいと思います。

「ファーストインプレッション」にこだわる

まず1つ目にこだわるべきが、「ファーストインプレッション」です。なぜか?それは自社の「ポジショニング」が決まってしまうからです。

たとえば、不動産営業の会社があったとします。現在の事業を押せば、世の中にはあまた同じような事業の会社は存在し、「あぁ、よくある不動産売買の会社ね」となってしまいます。しかし、その会社にはテックサービスを展開して、世の中の不動産売買をなめらかにしていきたいというビジョンがあったとします。そこで「我々は不動産売買の会社ではありません。将来的にはテックサービスを展開し、世の中の不動産売買の煩わしさをなくす世界観を目指している会社です。」とメッセージをすれば、不動産売買の会社というタグを外すことができます。採用においては、いかに「他社と勝負しない」かが大事です。勝負せずに勝負に勝つという孫子の兵法ですね。勝負になれば比較がはじまり、比較がはじまると基本的には大手企業や自社よりも先を行く企業の方が、学生には魅力的に映りやすいと言えます。ですから、勝ち筋のある自社のポジショニングで勝負をする。ファーストインプレッションでのメッセージに、ポジショニングのイメージを作れるかは懸かっているのです。

「接触密度と信頼形成」にこだわる

また、次にこだわるべきが「接触密度と信頼形成」です。基本的に、中小ベンチャーの勝ち筋は大手ができない泥臭い戦い方にあると言えます。あまり接触をせずにスマートに採り切れることはまずありません。特にほしい学生であれば20-50時間程度は接触時間は確保はしたい。そうすることで、どの会社よりも一人一人の学生と接触し、どの会社よりも本音で話せる関係性をつくることで信頼が形成され、「内定を出したら承諾してきてくれるな」という確信のもとにこちらも内定を出せる状態をつくることができるからです。だからこそ、時には一歩踏み込んで学生に本音で感じていることを伝える場面も必要になるし、自社に入社するしないに関わらず、「その子の人生がどうなると理想に近づくのか?」という問いに、採用担当は向き合い続ける必要があります。表面的な関わりの先には、薄っぺらい内定しかありません。逆に、深い関わりをすることで、双方覚悟をもった内定出し・内定承諾が待っています。心と心がいっちゃん大事ということです。

「クロージング」にこだわる

そして、最後にこだわるべきが、「クロージング」です。長期的な採用成果を出すのであれば企業ブランドを高める必要がありますが、短期的な成果を出すのであれば、特に即効性が高いのが「クロージング」です。

他社との比較、本人の理想との比較、さまざまな点から「なぜ自社に入社するとその学生の人生にとって最も価値がある選択になるのか?」という点を、ストーリー性をもって魅力的にプレゼンし、伝えきることが大事になります。口頭で伝えるだけでもよいですが、可能であれば簡単な資料にまとめて配布してあげるだけでも、候補者からの印象と理解度は大きく変わります。


おわりに

最後までお読みいただき誠にありがとうございます。少しでもここまでの内容がみなさまの採用活動のヒントになればうれしいかぎりです。わたし自身もまだまだ勉強中の身なので、ぜひみなさんの意見や感想、さらには「こんなやり方もあるよ!」みたいのがあれば、ぜひコメント欄やXでのツイートで教えていただけるとうれしいです!ありがとうございました!


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