『テレシー』の特許から見るテレビCM効果の分析方法

以前、ノバセルアナリティクスの特許に関する記事を書きました。

その競合サービスである『テレシー』も2022年に特許を取得(特許第7112816号)したので、テレシーについても内容を見てみたいと思います。

書いている人

マインディアというマーケティングDX SaaSを扱う会社でマーケティングをしています。
前職ではグノシーというニュースアプリでCM出稿を含むマーケティングをしていました。

  • テレシーを使ったことはないので、実際のプロダクトのアルゴリズムとは異なる部分が含まれているかもしれません。

  • 法律・特許に関する専門的な知識はないので、特許の内容の読み解き方が間違っているかもしれません。

何か気になる点があればお気軽に下記twitterまでご意見ください!
twitter @takahirostone

特許の概要

過去のデータを参考にCMの効果と言えるコンバージョン(CV)数を推定する、というのはノバセルと同じですが、方法が少し違います。
※ ここで言うCVは、いわゆるCVだけではなくマイクロCVやセッションなども含めた概念で、何かしらの計測可能なKPIを指します。

細かい計算式は省きますが、テレシーでは以下のような方法でCV数を推定しているようです。

  • CMを放映していないエリア(非放映エリア)のデータから、放映エリアでCMを流していなかったとしたら時間帯ごとに何件のCVになっていたかを予測する

    • 非放映エリアがない場合は任意のエリアで1番CVが少ない時間帯(多くの場合は朝4時前後など)のデータを参考にする

  • その予測値と、実際に発生したCV数の差分をCM効果CV数とする

  • CM効果CV数を1時間ごとに分割する

  • その時間帯におけるCM効果CV数をCM放映枠に割り当てるために、残存率をもとに係数を算出する

  • その係数から時間帯別のCM効果CV数のうち、それぞれのCM放映枠ごとの貢献CV数を算出する

  • 貢献CV数を放映枠ごとに足し合わせると、最終的に1本のCMから発生したCV数が分かる

    • 後半の残存効果が絡む部分は少し分かりづらいと思うので図も引用し後述します。

という仕組みです。

ノバセルとの違い

特に大きく違うのは「CMの残存効果」についてです。ノバセルの場合は、CM放映後n分以内のCV数を過去のデータと比較することで効果を測っていました。
一方テレシーは、CM効果CV数を時間帯別に算出し、残存効果も見積もることでもう少し長いスパンでCVが発生するものとして扱っています(残存効果は一定の期間でゼロになるとされています)。残存効果は枠によって一定ではなく、例えば深夜の放映だと残存が長い(朝になってから思い出してCVすることがあるので)ことや、キャンペーンの前半で流したCMの残存を長く見る(フリークエンシーが高まっている後半の方が単発のCMでの効果が高くなるのでその分を前半のCMに割り当てる)ということなども言及されています。

その特徴によって、テレシーは放映枠ごとのCV数が実数で定義されるので、放映枠(番組や流した素材)に対するCPA計算が容易であると推測できます。
※ ノバセルでもサービスサイトではCPAが分かるという記述があるので、特許には記載のない何らかの方法を使って計算しているんだと思います。

残存効果について

残存効果は

CM効果の残存期間、CM効果の残存率及びCM効果のピークが生じるタイミング

特許第7112816号の特許公報より

の3つのパラメータのうち少なくとも1つを使って計算されます。
これらのパラメータを任意に変更し、実際のCV数と最も近くなるものを採用して残存効果を測るようです。

残存効果の計算方法については言葉ではややこしいのですが、特許公報の図16、図18あたりを見ると分かりやすいです。

特許公報 図16より。時間帯別のCM効果をどの放映枠に割り当てるかの係数を出しています
特許公報 図18より。係数をもとに放映枠ごとの貢献CV数を算出し、最後に横に足すことで放映枠のCM効果を出しています

気になったこと

非放映エリアのデータから、放映エリアのCV数を予測する計算方法についてはあまり詳しく記載されていませんでした。非放映エリアがない場合に4時台などCVの少ない時間帯のデータから計算する場合も「逐次的に計算する」としか記載されていません。
機械学習を用いて算出されているので単純な式で表せるようなものではないのかなと思いますが、書いていないということは特定の方法に絞っていないということなので、その分広く権利を主張できるということかなと思います。

CMと他媒体の比較

ノバセルの方の記事でも同じことが気になっていましたが、例えばWebなどの他媒体とのCPA比較はどうやっているのでしょうか?

テレシーの場合は放映枠ごとのCPAを出すことが比較的簡単だと上述しましたが、残存効果も見ている分WebのCVと重複で計上してしまっている部分がそれなりにありそうだなと感じています。
その部分をどうやって解決しているのか、詳しい方いらっしゃればぜひ教えてください。

最後に

こういったことに興味がある方はお気軽にtwitterで絡んでいただくか、meetyしましょう!

twitter @takahirostone

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