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歌謡曲レコード その12 愛のNokoriga(83)/弘田三枝子 代表曲はこれだ!「人形の家」じゃない弘田三枝子

2020年7月に世紀の歌姫である弘田三枝子が逝去。ニュースではあいも変わらず「ヴァケーション」と「人形の家」のループ報道。
どちらも彼女を語る上で欠かせない代表曲なのはわかっているのだが、昭和から平成を駆け抜けた彼女に対してあんまりにも芸も知識もないない報道の内容ではないか。

稀代の名人に対してのこの手の報道にみられるある種失礼なパターン化に、この度も落胆していた次第である。
ではわたしなら彼女の追悼曲としてなにを選ぶだろうか。この哀悼報道を受けてわたしはこんなのことを考えていました。

異色の金字塔としてわたしの中で存在するのが大野雄二全面プロデュースによるキングレコード移籍アルバム「touch of breeze」からのシングルカット「愛のNokoriga」。
わたしは彼女の天性の才能とこの世に残した煌びやかな歌の数々の代表選手としてこの曲をあげたいと思う。

作・編曲は大野雄二大先生。ジャズ界の名手であり、「ルパン」シリーズをはじめ数々のTV・CMソングを手掛けるほか歌謡曲歌手への楽曲提供もしてきた現役ばりばりのメガヒットメーカーである。

ジャズ畑の大野先生と、同じくジャズ歌手としての異名を持つ弘田三枝子のタッグはこれが初めてであり、83年の時点でかなり遅かったのではと思えるほど遅咲きの素晴らしいコラボレーションである。

ジャズのフィーリングを持った軽やかな大野仕様ポップソングになっているのだが、サビ後半の半音上がるところとか節々に入る遊び心や、弘田三枝子の自由で楽しそうな歌い方が、聴き手にふんわりとした淡い気持ちを覚えさせてくれる。歌詞は悲しい内容なのに。

この歌に「人形の家」の弘田三枝子はもうない。ちあきなおみばりのドラマティックかつダイナミックな歌唱で知られてきたが、成熟して「軽さ」を得たところがかえって素晴らしい。

後期の弘田三枝子がどれだけ素晴らしいかをこの曲で思い知らされる。



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