娘はなんで誰もいないところでひとりで喋るのか、娘はなんで叫ぶのか、娘はなんでエラそうなのか
USキーボードのChromebookでの日本語入力云々、色々と考えて設定を変えたらほぼキーボードのまま入力できるようになりました。大昔、漢字トーク以前のMacを思い出すようないくつか問題はありますが私には許容範囲です。よかった。設定などは仕事関係のnoteに書きました。ご笑覧ください。
今日の午前中は上記のnoteを書いたりなんだりで時間が潰れました。娘は昨夜から今朝にかけては叫んでいませんでした。落ち着いたのかなあ。そうだといいなあ。
娘を起こしてしまうのも面倒なので私も朝食抜きです。娘がいつ起きても大丈夫なようにご飯だけは炊いておきました。
起きてきました。眠そうです。薬だけでいいそうです。
「バナナ食べる?」
「食べる」
「ヨーグルト食べる?」
「食べる」
「コーヒー飲む?」
「コーヒー飲む」
コーヒーにはシナモンを入れました。シナモンフレーバーのコーヒー、嫌いじゃないみたいです。
部屋に戻った娘は小さい声で喋り続けています。ノンストップです。叫んではいませんが、ちょっと嫌な感じです。
お昼過ぎにまた出てきました。なにか食べるそうです。
「シラス丼でいい?」
「いい」
この場合の「いい」は食べるという意味です。同じ「いい」でも食べないという意味の時もあります。(元)妻も私も娘のこういうニュアンスを許容しすぎなのではという気もしないでもないです。
玉子焼きとぬか漬けと味噌汁とシラス丼。玉子焼きには大根おろしを乗せて。ぬか漬けも大根です。玉子2個の玉子焼きの他にシラス丼にも黄身を乗せました。
食後、部屋で静かにしているのかと思ったら出し抜けに絶叫。絶叫。また絶叫。「死ね」と叫び続ける娘になんと声をかけたらよいか迷っているうちに悲しくなってきました。
「パパ、買い物に行ってくるね」
そう言って出かけました。娘の叫びを聞きたくなかったのです。
髪が伸びたので床屋にでも行くかとあちこち覗いてみましたが、お安いところはどこも混んでいました。年末に床屋、考えることは皆同じか。
新しいノートPCをリュックに入れてきたのでWiFiが使える環境なら長居できます。喫茶店にでも行くか。でもひとりで喫茶店に行く習慣が失われてからあまりに長いので一向にそんな気分になりません。あれだ、モバイルバッテリーでも買いに行くか。なんかそれも面倒。スマホも買い替えのタイミングだからショップに行くか。それはもっと面倒だ。
結局、いつもよりグルっと大回りしてから帰りました。そういえば午前中から回していた洗濯乾燥機もそろそろ回り終わるし、やっぱり帰って正解だな。
娘は部屋で喋っています。叫んではいません。落ち着いたのかな。そうだといいな。
娘が出てきました。
「なんか食べたい。お昼」
「え、お昼ってもう夕方だし、さっきお昼食べたじゃない」
「あれは朝で今がお昼」
「わかったよ。ミニチャーシュー丼でいい?」
「チャーシュー丼でいい」
チャーシューを買っておいてよかった。適当にタレを作ってご飯に乗せた刻みネギとチャーシューの上からかけます。
「食べ過ぎだから、これぐらいで」
無言で完食でした。
砂糖がきれてしまいました。娘の風呂上がりのアイスもありません。買いに行かねば。
暗い中、滅多に行かないスーパーへ。そうか、ここはアイスが安かったのか。砂糖は高いな。
帰宅。すぐに娘が出てきました。
「なんか食べたい」
「え、また食べるの?」
娘はカップ麺を物色しています。
「ダメだよ。あるから。用意するから」
昨日買っておいた明太チーズパンを焼きます。これぐらいでいでしょう。私も食べるからふたつ焼くか。
焼き上がりました。飲み物はジャスミンティー。
テーブルに着いた娘のヒソヒソ喋りがひどいです。
「喋るのやめ
「あっち行けッ」
「あっち行くけど喋るのやめてね」
もちろん娘はやめません。
風呂にも入るそうです。風呂で叫ぶつもりだな。
案の定、風呂に入ってすぐに絶叫。
「お風呂で叫ぶのやめて〜」
私の頼みも虚しく絶叫。絶叫。絶叫。
風呂上がり、アイスを探そうとしているようです。
「なんでお風呂で叫ぶの? なんか聞こえるの? なんで誰もいないところでひとりで喋るの?」
「うるさいッ」
殴られました。
「なんで叩くの。それよりなんで喋るの。誰もいないのにどうしてひとりで喋ってひとりで叫ぶの。頭の中に誰かいるの。誰かに喋れさせられてるの」
「うるさいッッッッッッ」
怒りで顔を真っ赤にした娘に何度も何度も殴られます。殴られながらも「なんで叫ぶの」「なんで誰もいないのにひとりで喋るの」「なんで死ねって言うの」と聞き続けます。目が飛び出しそうな娘がキャスター付きの椅子を持ち上げようとしています。激しく怒った娘が椅子を振り回したことは何度もあります。椅子が壊れたこともあります。椅子を叩きつけられたらこちらが大怪我です。なんとか椅子を持ち上げるのはやめさせます。手が空いた娘はわけのわからないことを叫びながら私を殴ります。私はそれでも「なんで殴るの」「なんで叫ぶの」「なんで死ねって言うの」と聞き続けます。その間ずっと殴られています。
アイスは諦めたのか、娘は駆け込むように部屋に戻ります。それを追いかけい、部屋の中でも「なんで叫ぶの」「なんで誰もいないのにひとりで喋るの」「なんで死ねって言うの」と聞きます。
「死ねッ」
娘は明確な殺意を持って私を殴っているようです。
「なんで死ねって言うの」
「今すぐ死ねッ」
「なんで今すぐ死ねって言うの?」
「自殺しろ」
「なんで自殺しろって言うの?」
「自殺保険で自殺しろ」
「……自殺保険ってなんだよ。わけわかんねえよ」
「出てけッ」
「なんでエラそうに命令するんだよ。エライのかよ。もう何年も家にこもって誰もいないところでひとりで喋って死ねって叫んでエラそうに命令して」
「死ねッ」
「もう何年も何もしないでひとりで喋ってるだけだってわかってる? なにもしないでだれもいないところで喋って死ねって叫んで。もう何年も何もしないでひとりで喋ってるだけだってわかってる?」
「うるさいッ、出てけッ」
会話だけしているようですが、この間も娘にボコボコに殴られています。
「もう何年もテレビも見ない本も読まない、たまにパパと会話してもなに話してるんだかわからなくてわけわからないことしか言わない。それでいてだれもいないところでひとりで喋って死ねって叫んで
「もうさ、中学高校の同級生なんかはちゃんと働いて、もしかしたら結婚して子供がいたりするかもしれないのに、誰もいないのにひとりで喋って死ねって叫んで。ご飯だって自分でなにか用意するわけじゃなくてパパが用意したのを食べて飲んでトイレに行ってお風呂に入って誰もいないところでひとりで喋って死ねって叫んで。なにもやってないよ。なにもしてないんだよ」
「うるさいッ、出てけッ」
「頭の中に誰かいるの? 誰かに喋らさせられてるの?」
「誰もいない。死ねッ」
娘が少し泣きそうです。
娘にそんな感情が残っていたんだ。でも感情で泣いているんじゃなくて気持ちがたかぶって涙が出てきてるのかもな。考えてみると、娘が心の底から悲しいと思っているのは小さかった頃を除いて見たことがありません。娘は腹を立てることはあっても悲しんだり反省したりということはないです。少なくとも病気になってからは記憶にないです。
「出てけッ」
「なんでエラそうに命令するんだよ」
「命令してないッ」
「命令してるじゃん」
「これは命令じゃない」
「命令じゃなくてなんなんだよ。頼んでくれたら出ていくよ」
「出てけッ」
「頼んでないじゃん」
「頼んでるッ」
「出てってくださいって行ったら出てくよ」
「……出てってください」
……言えるんだ。
なにも言わずに部屋を出ました。
そのあとも部屋でひそひそ喋る声が聞こえる度に「なんでひとりで喋るの?」「誰もいないのにどうして喋るの?」と声をかけています。
娘に病識はありません。
病識はないです。
◇ ◇ ◇
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