ECにおける定期縛り問題について考える
EC業界では定期縛りと呼ばれる、1回購入した時点で、複数回の購入をしなければいけないという販売手法があります。
定期縛りというのは、法律で禁止されているわけではありませんが販売ページで明示しなければいけないと消費者庁より指導されるケースが増えてきました。
定期縛りの具体的な内容
定期縛りについてもう少しどういうものが具体例を出して示していきます。初回480円のサプリメントが売っているとします。1ヶ月分が約500円でお得なので購入するとします。
翌月、7980円の請求書とともに次の商品が届きました。定期購入だということはわかっていたけど解約するのを忘れていたので、コールセンターに電話をして解約を申し出ました。
すると、コールセンターのオペレーターから次のような返事が来ます。
「お客様はお得な定期4回コースにお申し込みをされていますので、4回分は受け取っていただく形になります」
ここで気づきます。販売ページを見直すと、小さい文字で、4回分、合計24,420円はお支払いいただきます。途中で解約する場合は違約金として差額分をお支払いいただきます。
と書かれていることを。
こうして多くの人は諦めて24,420円を支払う形になります。
一部の諦めない人が消費者庁に通報し、毎日電話をかけて責任者を出せ、返金しろと粘った結果、お金が帰ってくることがあります。
しかし、実際に返金まで粘る人はごく一部です。そして、諦めた人の一部は、メルカリやラクマを使って、少しでも損を取り戻そうとがんばります。
以上が定期縛りの事例です。どのように感じるかは人それぞれだと思います。販売ページには明示してあるので、販売会社の言い分もそのとおりですし、文字が小さいし購入するときには全然見えなかったという購入者の意見もそのとおりです。
もう少し定期縛りについて、深く考えていきましょう。
定期縛りをなぜ行うのか
定期縛りを行う理由は、一言でいえば儲けるためです。先程の事例では、24,420円を確実に獲得できるので、1000人に売るだけで、約2,500円の売上になります。
サプリメントは原価も安く、輸送コストも安くネコポスを利用できるので、4回配送しても輸送費込みの原価で4,000円です。つまり2万円は粗利となってきます。
この粗利を高いと思うか、低いと思うかは人それぞれだと思いますが、獲得広告費を15,000円くらいまではかけれることになり、ビジネスとしては強いビジネスといえます。
また定期4回で購入してもらったあとも、続けて購入してくれる人、さらに解約を忘れる人がでてくるので一人あたりの購入平均単価は3万円を超えてくる可能性もあります。
定期縛りは、PL予測が確実になる安定したビジネスと客観的に見ると言うことができます。
定期縛りを正当化する理由
そもそも消費者にとって不利な定期縛りを企業側はどうやって正当化しているのでしょうか。
サプリメントなどは効果がでるまでに3ヶ月ほどと説明して、3ヶ月は飲まないといけないので、効果を実感してもらうために複数回購入いただいておりますと説明をしてきます。
では、最初は3ヶ月分まとめて送ったらいいではないかという形になりますが、まとめて大サイズにすると購入単価が下がってしまいますので、分けて購入させることで累積での購入単価をあげる形になります。
増えてくる行政指導
最近は薬機法、景品表示法などで罰金や指導を受ける企業も増えてきました。
最初は消費者庁から注意や警告が来るので多くの企業はこの段階でなおします。
大体のパターンはお客様からのクレームです。もちろん、企業側もしっかりと説明しているにも関わらず、お客様が見落としたと主張することで企業側がやや理不尽と感じる注意もあります。
悪徳業者がいるせいでクリーンにやっている会社も、過度な消費者保護によって痛手をくらうこともあります。
定期購入以外での効果効能の部分やアフィリエイトなどでの指導が多いですが、定期購入に関しても最近は注意がはいっています。
特に、「500円チャレンジコース」などと銘打ったバナーをクリックすると実は定期縛りで、累計で2万円を払わないといけない購入だったということも珍しくありません。
行政指導ギリギリのところを狙い、うまく指導されずに生き延びている会社もあります。
解約の際は通話のパターンが多いですが、回線をつながりにくくして、指導されないギリギリのところをついている会社もあって、悪いことながら逆に感心したこともありました。
定期縛りブランドは悪評が溜まったらブランドごと無くす
定期縛りをしているブランドはアットコスメやGoogleのレビューに悪い口コミがたまっていきます。
@コスメは、サンプリングを行うメニューを彼らが販売しており、それを利用するとサンプルを配り、自社に有利な口コミを作ることができるので、星が1つや星1つもついていないものをチェックしましょう。
解約の不便さと、定期縛りということでクレームを書いている人が多く見られます。
慣れている会社は、悪評がたまったタイミングでブランドリニューアルと称してブランドをなくすか、完全リニューアルしてパッケージや名前を変えていきます。
本来ブランド名を変えて、リニューアルするコストは高いのですが事前に準備しておいて、かつ慣れてくるとコストを最小限におさえてできます。悪評は少なからずビジネスに影響しますので、その悪評がなくなるほうがビジネスに有利だと判断しているためです。
よくブラック企業と揶揄されている企業が社名をかえたことによってレビューが消えるため、新たな門出をきっていけるのと同じです。
今後、定期縛りは厳しいのでまっとうな商売になっていく
定期縛りは表記を注意しても、今後注意が厳しくなっていくでしょう。いつでも解約OKのビジネスモデルが増えている昨今ですが、定期縛りをメインにやっていた会社も今後やり方を変えていくはずでしょう。
実際に変えている会社もあります。新しい巧妙な売り方については別途紹介させていただきます。
定期縛りの次は解約方法にメスが
定期縛りについては規制がでてくる可能性がでてきましたが、次は解約方法にメスが入る可能性が高いです。
マイページからも解約できるようにして電話以外も解約OKにするといったことや電話の解約対応時間についての指示などがでてくるかもしれません。
特に20代~30代向け商品は、LINE解約など柔軟性をもったほうが消費者にとってはありがたいものです。
定期縛りはやめたほうがいい
今後ECをはじめようと考えている方もいるかもしれませんがビジネスモデルとして定期縛りを採用しないと成り立たないビジネスはやめましょう。
規制が入ることと、消費者庁や消費者からのクレームがきて顧客対応の社員が疲弊するので、少しでもクリーンなやり方を心がけましょう。
商売なので100%完全に清廉潔白でやるというのは難しいかもしれませんが、明らかに消費者側からみておかしいことはやらないほうが長く続きます。
単純にお金を稼ぐという目的なら別のビジネスでもっと原価のかからないビジネスをおすすめします。
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