タテ書きの本がなくならない理由
ふだんの暮らしの中で日本語をタテに書くこと、あまりしなくなりました。
最後にタテ書きしたのはいつだったか覚えていますか?
私はたしか先月。俳句を投句用紙に清書して同人誌に郵送した時でした。
「もう何年もタテ書きしていないよ」「年賀状くらいかな」そんな人もいるかもしれませんね。
タテ書き文化はこのまま静かに光を失っていくのでしょうか。演歌や民謡のように片隅の棚へ追いやられていく運命?
いいえ。
そうはならないと思います。タテ書き文化を死守してくれる力強い守護神が私たちにはついてますから。それは……
マンガです。
(河野大樹さん、画像お借りしました!)
マンガがこれまで通りページを左へめくり、コマを右上から左下へ読むスタイルであるかぎり、日本語文芸のタテ書きは永遠に不滅です。
活字嫌いの人もマンガは読みますよね。タテ書きのセリフを目で追いながら子供たちは異世界や疑似恋愛、涙や笑いの時空間へ旅立ちます。そんなマンガで育った私たちが成人し、タテ書き文芸作品へ愛着を感じてゆくのはごく自然な流れだと思うのです。
ということは、逆に言うと。
もしマンガ業界がヨコ書き、ページ右めくり、コマを左上から右下へ読むスタイルへ方向転換したら、文芸作品のヨコ書き化もいっきに進むのでは?
それは回避したいなぁ……
がんばってほしいです、マンガ。
ところで、いま話題の『ブス界へようこそ』(河野大樹著)もう読みましたか。noteでも無料連載してますよ(上のスクショからも飛べます)。
音楽に喩えるならこのマンガはヘヴィメタルの名曲。
冒頭から大音量にたじろぎますが、すぐに慣れます。主題が美しい。展開に息を飲む。言葉が泣ける。もしもあなたが過去何かに挫折し、あきらめ、その気持ちを今も引きずっているなら年齢性別問わずおすすめします。このマンガが火をつけてくれるかもしれません。私もそうでした。
さて、マンガ業界は今後もタテ書きのままでいてくれるでしょうか。
ちょっと不安もよぎります。
だってヨコ書きに変えたほうがお金儲けしやすいじゃないですか。外国語で出版しやすい。これは大きなポイントです。
1995年頃買った『風の谷のナウシカ』英語版。絵が左右反転されていて驚きました。なるほどこうすれば海外の読者が「左上から右下へ」読みくだせるよなぁ。でも、ちょっと待った。風の谷に左利きの人が激増しとるやん。
その後、鳥山明氏が絵を左右反転しないことを条件に翻訳出版を許可し、元の絵にそのまま横文字を入れるスタイルが世界に広がっていったそうです。ヨコ書きなのに「右上から左下へ」。うーん、これはこれで頭が混乱しそう。
というわけで、満を持して縦スクロールの出番です。
スマートフォンの画面で読む縦スクロールマンガなら、「左上→右下」か「右上→左下」かをさほど気にせず描きやすい。読みやすい。つまり、横文字化しやすい。
2015年にnoteで『カナシベリー』を連載した時、じつは英語化にも挑戦しようとしてました。
どうです、違和感ないでしょ?
残念ながらSORROWBERRIES は途中で断念しました。私の英語力では難しすぎた(笑)。一緒に英語版を作ろうよという人が現れたらいつか再開するかも。
縦スクロールでマンガや絵本を創作したい人は、国際市場も頭の片隅に置いてみると良いかもしれません。コマわりをちょっと工夫するだけでグローバル仕様にできるんじゃないかと思います。
では、きょうはこのへんで。