『銀の匙』の泉を求めて -中勘助先生の評伝のための基礎作業 (147)氷を割る
中先生のエッセイに「氷を割る」という看病日誌があり、昭和15年5月31日から7月1日まで、末子さんの病気の様子が克明に描かれています。次に引く詩篇はそこからとりました。末子さんに寄せる中先生の心情がにじんでいます。
宿命か
げに宿命か
三十年の月日を
半痴半狂の人のみとりに
身心ともに病み疲れて
朽木(くちき)のごとく倒れし人
その比(たぐ)いなき善良さを思ひ
いいようもなき不幸の一生を思ひ
わが更生の恩をおもひ
家運挽回の恩をおもひ
ながしにぽとぽとと涙を落しながら
夜ふけの厨(くりや)に
かちかちと氷をわる
ここから先は
1,151字
中勘助先生は『銀の匙』の作者として知られる詩人です。「銀の匙」に描かれた幼少時から昭和17年にいたるまでの生涯を克明に描きます。
●中勘助先生の評伝に寄せる 『銀の匙』で知られる中勘助先生の人生と文学は数学における岡潔先生の姿ととてもよく似ています。評伝の執筆が望まれ…
期間限定!PayPayで支払うと抽選でお得
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?