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『銀の匙』の泉を求めて -中勘助先生の評伝のための基礎作業 (154) 中家の建て直しをめざす

 末子さんが亡くなってから中家には中先生と兄の二人だけが残されました。明治4年6月4日の生れの兄は昭和17年の時点で71歳になります。14歳年下の中先生は57歳。病気を抱えて言葉が不自由な兄と二人で、これからどのように暮らしていったらよいのでしょうか。末子さんの病中は中先生が主婦の代役を果し、お見舞いに来てくれる親戚や中島さんの好意に頼ってなんとかしのいできましたが、いつまでも続くものではありませんし、続けるべきものでもないというのが中先生の考えでした。中家はこのままではどうにもならないという行き詰まりに立ち入ってしまったのでした。

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中勘助先生は『銀の匙』の作者として知られる詩人です。「銀の匙」に描かれた幼少時から昭和17年にいたるまでの生涯を克明に描きます。

●中勘助先生の評伝に寄せる 『銀の匙』で知られる中勘助先生の人生と文学は数学における岡潔先生の姿ととてもよく似ています。評伝の執筆が望まれ…

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