見出し画像

『銀の匙』の泉を求めて -中勘助先生の評伝のための基礎作業 (86) 病床にて


 明治42年の秋から翌年の晩春初夏にかけての病気のおりの消息は、中先生のエッセイ「病床」で報告されています。初出は岩波書店が発行する雑誌『思想』の第43号(大正14年5月号。大正14年5月1日発行)で、のちに単行本『菩提樹の蔭』(昭和6年4月5日、第1刷発行。岩波書店)に収録されました。また、中央公論社の雑誌『中央公論』の昭和27年新年号に掲載され「先生の手紙と「銀の匙」の前後」というエッセイがあり、病床にあったときの中家の様子に触れられています。ほかにもうひとつ、「夢日記」という作品があります。

ここから先は

1,115字
中勘助先生は『銀の匙』の作者として知られる詩人です。「銀の匙」に描かれた幼少時から昭和17年にいたるまでの生涯を克明に描きます。

●中勘助先生の評伝に寄せる 『銀の匙』で知られる中勘助先生の人生と文学は数学における岡潔先生の姿ととてもよく似ています。評伝の執筆が望まれ…

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?