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『銀の匙』の泉を求めて -中勘助先生の評伝のための基礎作業 (20) 小野寺直助の日記より

 福岡医科大学時代の金一さんの話になりましたので、これからしばらくの間、金一先生、稲田先生と呼ぶことにします。この両先生の講義ノートを拝見して、実在感というか、このお二人は本当にいたのだなあという不思議な感慨に襲われました。実に大きな収穫でしたが、ほかにもおもしろいことがわかりました。それは金一先生の名前が出てくる2冊の本のことで、講義ノートを見つけた図書館の司書さんに教えていただきました。その司書さんは図書館そのものみたいな人で、未整理資料の発掘も医学図書館をあげての企画というわけではなく司書さん個人の熱意の発露でした。中先生に関心を寄せていることをかねがね承知していて、このようなものが見つかったと親切に教えていただいたのでした。
2冊の本のひとつは

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中勘助先生は『銀の匙』の作者として知られる詩人です。「銀の匙」に描かれた幼少時から昭和17年にいたるまでの生涯を克明に描きます。

●中勘助先生の評伝に寄せる 『銀の匙』で知られる中勘助先生の人生と文学は数学における岡潔先生の姿ととてもよく似ています。評伝の執筆が望まれ…

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