『銀の匙』の泉を求めて -中勘助先生の評伝のための基礎作業 (153) 匂い菫の押し花に寄せる(その3)
「余生」からの引用を続けます。末子さんもまた山田さんと同じく誠実善良な人で、それゆえにたやすく山田さんを理解することができました。山田さんも末子さんもどこか凡俗の理解をこえた天真と無垢の持主でした。中先生は自分のことを、「曲げられ、歪められ、暗黒汚濁のはうへと鞭打たれ、駆り立てられた」というのですが、そんな中先生を保育し、教導したのが山田さんと末子さんでした。高等学校の生徒のころの中先生の実際の姿はともあれ、中先生の心の中で日々繰り広げられた苦悩と再生の物語が、このような言葉に反映しているように思います。
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中勘助先生は『銀の匙』の作者として知られる詩人です。「銀の匙」に描かれた幼少時から昭和17年にいたるまでの生涯を克明に描きます。
●中勘助先生の評伝に寄せる 『銀の匙』で知られる中勘助先生の人生と文学は数学における岡潔先生の姿ととてもよく似ています。評伝の執筆が望まれ…
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