脚本家 × 作詞家 × 漫画家 × アナウンサー 対談⑧ 作家性と人間性について〈前編〉
学生時代からの知り合い同士だからこそ語ることが出来る作家性と人間性について〈前編〉
ちょいちょい小山が飛んでいる。
高瀬:みんなの創作する作品や仕事ぶりを見ていると、作家性やその人らしさを感じるのですが、みんなもそう思うのか知りたいです。例えば、小山でいうと先程話した馬鹿で……
小山:馬鹿でエロい!
高瀬:そう! その馬鹿でエロいを感じます。オリジナルはもちろんそうですが、原作ものでも小山を想像してセリフからも小山を感じながら作品を見ちゃいます。
平井:見ていると、ちょいちょい小山が飛んでいますよね! 小山がいるって思います。
小山:それが出ないようにするというプロの仕事もあるじゃないですか。出ちゃうときは凄く嫌だったんですけど、今になったら今度はそっちの方がいいじゃないかと元に戻したいけどなかなか直らないという…。
平井:他の2人もそうなのかしれないですけど、ジャンルが違うものなのに表現できるのが凄いなって思います。刑事ものとか恋愛ものとか。
小山:あのときは、「駄目、やり直し、駄目、やり直しの連続の中でしょうがない……出来ることをやるしかないんだ」という中で書いていったので、受け手の人がそういう風に受け取ってくれたのかなと思います。
高瀬:私の場合は、ドラマが凄く大好きでいっぱい見ていたので、今まで見てきたエンターテインメントの作品があって、それを使い分けが出来て色んなジャンルの歌詞が書けるじゃないかなと時々思うことがあります。
小山:引き出しが多いということですね。
高瀬:学生の頃にそれなりに勉強して、日常生活の中で体験することにそれなりに真面目にそれなりに取り組んできて、例えば、アニメだと日本史に関係する作品も多いじゃないですか。原作を読んで初めて知ることも多いけど、あぁ徳川家康ね……みたいに入ってくるものがある気がします。だから今まで見てきたものが活きていると思います。
小山:確かにクリエイターになっていわゆる普通っぽい生き方をしていて良かったなと思うこともたくさんありますよね。1%の人が通る道も素敵だけど、99%の人が通る道も素敵だなぁと思います。
平井:きっと作品を見る人のほとんどが99%の人ですもんね。
小山:共感値もそこで作りやすいですね。
ぎりぎり綱渡りのような状況の中で全部のキャラクターを好きと思わせるのは人間性
高瀬:村田さんに関しては、ラジオ番組の制作サークルのときに村田さんがシナリオを書いたラジオドラマを作っていたじゃないですか。そのときの作品が家族もので、今も家族ものが多くて通じるものがあって。凄く覚えているのが、本当にちょっとしたときのエピソードなんですけど、一緒に食堂にいたときに「僕、食事だけは大事にしているんです。食事には拘りがあるんです。ご飯だけはちゃんと食べるんです」と話してくれたときがあって、食事のシーンが印象的な漫画が多いから、漫画から村田さんらしさがにじみ出ていると思います。あとは、人と人の温かさとか、村田さんの人の良さが作品に出ていると思いますね。
小山:村田さんのことを嫌いという人は聞いたことがなく、好きっていう人が多くて。人間嫌いの友達も「村田くんは凄いんだよ」って話していて、今回僕と村田さんだけしっかり話すのは初めてなわけですが、当時は会話したことがなかったので、こんなに好感度が高いってどんな人間だよって思っていました。作品を読んでいて思ったのが、作品に出てくるキャラクターが一歩間違えれば読者から嫌われる危険性を背負っているじゃないですか。例えば、小学生の妻がいる男性がいて、そういう中でその男性を狙っているOLがいて。だけど、このぎりぎり綱渡りのような状況の中で全部のキャラクターを好きと思わせるのは人間性だと思うとこれは書けない、凄いと思いました。
村田:めっちゃ嬉しい……。
高瀬:さすが話すことが脚本のプロですね。
平井:私は、村田さんの作品は触れられたくないところに触れてくるなと思いました。村田さんの『となりの熊沢君』という作品が大好きで、作品から孤独感を感じて……孤独感というのは恐らく多くの人が感じているじゃないですか。私が13~14歳くらいの頃だったら読めないなと思っていて、大人になった今だから読めるような気がします。孤独感と向き合うには自分にそういう寂しいところがあるというのを認めないといけないじゃないですか。そこをついてくるのがズルイなぁと思います。
高瀬:人間の中でも本当に重要なものがテーマの作品が多いですよね。家族の大切さとか学校の中での孤独感とか。
最初歌詞を読んだときに「愛虹さんだ!」と思った
小山:愛虹さんの歌詞については、僕は『Have a nice MUSIC!!』の“キミならできるさ、キミだからできるんだよ”というのが最高の歌詞だと思いました。さっき前向きという話をしていて、学生時代を振り返ると愛虹さんってなんだかんだで委員会活動していた同級生の中で1番俯瞰で見れていて1番現実的でありながら前向きな人なんじゃないかなと思うとやっぱりこういう言葉が出てくるんだと思いました。やっぱり生きたものが出るんだなと思いました。
平井:私は、代表作が色々ある中でも『乙女の恋は蝶結び』が好きなんですよ。
高瀬:メジャーデビュー作品ですね!
平井:言葉選びが好きです。私は、昔からメロディーに乗っている歌詞を音として聴くだけではなくて、歌詞カードを見ながら文字で歌詞を見るのが好きで。和歌と書いて“うた”と読むとか、そういうのがいいなと思います。なぜ、このような視点を取り入れられたのでしょうか?
高瀬:……私がそういうのが好きだから取り入れているんだと思います。自分の好きなものを取り入れればCDを買った人にもこの歌詞を好きと思ってもらいやすいのかなという気持ちがそうさせているのかもしれないです。
平井:抽象的な表現かと思いきや、歌詞の描写から私は主人公になりきりました。こういう子なんだろうな……私に似ているところがあるんだろうなって思いました。
村田:僕が覚えているのは、大学のときに僕が作った曲に作詞してくれたじゃないですか。最初歌詞を読んだときに「愛虹さんだ!」と思ったし、言葉のチョイスが想定外だったけど逆にハマるなって思って、完成した後も何度も聴き直して、めっちゃ歌詞がいいなって思って、自分でも歌ったりしていたんですよ。だからあのときから才能が光っていて作詞家になったときも愛虹さんだからそうだよねって思いました。
高瀬:サークルで初めて、みんなで曲を作ってみんなでレコーディングをするということをしたんですよね。全部自分ひとりで1から楽曲を仕上げたことはあったけど、自分じゃない誰かの曲に作詞をしたのも初めてで。サークルに入ってなかったらそういう経験もしなかったままだったかもしれないです。その頃は明るい曲の歌詞をそんなに書いたことがなくて、アイドルソングを作ろうとなったから初めてアイドルソングを意識した歌詞を書きました。それで道が拓かれた気がして、明るい歌詞もいいのかなと思って、人に見せたときもサークルで作っていたような明るくて面白い感じの歌詞がいいねと言われて……だからサークルでの音楽制作はでかいですね。
対談⑨へ続く
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