パズル
物語というジグソーパズルを組み始めた。
・・・この物語は、ピースがデカイ。
パチンパチンとはめていったら、あっという間に完成した。
分かりやすいエピソード、迷いのない配置。
簡単に読めて、ストレスがない。
だが……。
面白みに欠ける。
なんだか物足りない。
もっと頭を使うようなものが良かった。
……次は、もう少し時間のかかるものにチャレンジしよう。
私は完成したパズルを公開した。
物語というジグソーパズルを組み始めた。
・・・この物語は、ピースが細かい。
一つ一つ丁寧につなげて、なんとか完成した。
繊細なエピソード、頭をひねって置いたピース。
読めば読むほどに、意外なつながりが心を揺さぶる。
だが……。
少しでも気を抜けば、理解が追い付かない。
難しくて、身構えてしまう。
もっと気楽に読めるようなものが良かった。
……次は、もう少し気楽に読めるものにチャレンジしよう。
私は、完成したパズルを公開した。
物語というジグソーパズルを組み始めた。
・・・この物語は、ピースが個性的だ。
ピースの常識を覆す破天荒な作りだったが、なんとか完成した。
頓珍漢なエピソード、無理やりねじ込んだピース。
よくもまあ完成させたものだと、自画自賛する。
だが……。
これは本当に物語なのかと、頭をひねってしまう自分がいる。
理解されないのではないかと、疑心暗鬼に陥ってしまう。
もっと素直に読めるようなものが良かった。
……次は、もう少し普通に読めるものにチャレンジしよう。
私は、完成したパズルを公開した。
完成したパズルを眺めながら、次回作に思いをはせる。
完成したパズルを公開し、世界に飛び出した物語を望む。
完成したパズルを回収し、ピースに戻すことがある。
バラバラになったパズルを、再び繋げることがある。
完成したパズルを、ぐちゃぐちゃにしてしまうことがある。
めちゃめちゃになったパズルを、そのまま捨ててしまうこともある。
完成しなかったパズルを、のりで無理やり固めて芸術だと言い張ったこともある。
とびきりお気に入りだったピース。
目がしょぼしょぼしたピース。
どうしてもかみ合わなかったピース。
どこかに消えてしまった肝心なピース。
なぜか余分に入っていた不自然なピース。
自分で完成させたジグソーパズルを見るたび、いろんなピースがあったことを思い出す。
自分で完成させたジグソーパズルを思い出すたび、いろんなピースがあったなあと過去を振り返る。
私しか完成させることができない、自分の生み出した、物語というジグソーパズル。
……さて、次は、どんなジグソーパズルを創ろうか。
きっかけとなるピースを、思い浮かべて。
隣に並ぶピースを、生み出して。
繋がるピースを、並べて。
今日も私は、おかしなピースに囲まれながら。
マイペースに、ハイペースで、ジグソーパズルを組み立てている。