休み明けに不登校が増えることを、おそれなくていい
学校に行けなくなるのは、怖いですか。
子どもが集団生活に馴染めないことは、不安ですか。
不登校になるって、悪いことですか。
「休みが子どもをダメにする」のではない。「休みに子どもがダメだと気付く」のです。
「長期休み明けには不登校が増える」と言われています。
実際、文部科学省が不登校の小中学生に対して「学校を休み始めた時期」を聞いたアンケートでは、29.1%が「7月~9月」と回答しました。そのうち約1か月は夏休みのため、やはり長期休暇前後に不登校になる割合が高い、と考えられます。
現在、全国の公立学校へ休校要請があり、事実上、子どもたちは長い春休みに突入しました。
それを受けてか、SNS上で「休みが長引くとその後登校リズムが崩れ不登校が増えるのでは」といった旨の意見を見かけました。
実際「長期休み明けには不登校が増える」というデータがありますし、特に今回は十分な準備もできないままでの休校です。たくさんの不安や焦り、混乱があったと思います。
健康面の心配もある中で突然生活スタイルが変わって、不安や困惑を抱えるのは、悪いことではありません。むしろ当然です。誰だって、こんな状況てんてこまいになります。
何かうまくいかないことがあったとしても、ご家庭や保護者の方、先生方に責任があるのではありません。
ただ、ひとつだけ知っておいてほしい。
子どもたちは「休みがあるから行けなくなる」のではないのです。「休みがあるから、行けない自分に気付ける」のです。
「明日は学校どうしようか」なんて大人たちは聞いてくれない
子どもたちはいま、「学校に行くのが当たり前」の世界で生きています。不登校やホームスクーリングへの理解は一昔前と比べたら格段に進んできましたが、それでも尚、「学校に行かないのは特別」なのです。
だから子どもたちは、「明日も学校に行きたいか」なんて考えません。
だって、学校に行くのが普通だから。
理由もなく「学校休みたい」なんて言っても受け入れてもらえるはずがないから。
学校に行けない・行かない子に対して世間がどういう目を向けているのか、知っているから。
嫌なことを言われても、勉強が苦しくても、居場所が無くても、ほとんどの子どもは学校へ行きます。
「明日は学校どうしようか」なんて考える余裕があったら、宿題を1ページでも多くこなさなければならないからです。
習い事に行かなければならないからです。
そんなことを考えてもいいだなんて教えてくれる大人はいないからです。
長期休みは、子どもたちが普段封じ込めている「本心」「心の声」に耳を傾けるための貴重な時間になります。
勉強も部活も授業もなにもかも一切気にせず、朝から晩まで好きなことをして過ごす。「宿題は後でやればいいから……」なんて友達と笑いながら、普段行けないようなところへも行ってみる。
そういう日々の中で、気付くのです。
「学校に行かないとこんなに気持ちが楽になるのか」
「わたしの身体はこんなに疲れていたのか」
「自分のやりたいことをやる時間を取るってこんなに嬉しいのか」
明確に言葉で説明できる子もいれば、そうでない子もいます。「休みはずっと楽しかった。学校が始まってから、なんか分からないけどモヤモヤする」というような。
その場合、その子自身より先にその子の身体が気付きます。
「学校が再開した途端に身体が動かなくなり、ギブアップする」という現象が起きるのです。
これは、子ども自身も無自覚だった「悲鳴」に身体が気付いたということです。
春休み明け、「あ、ダメだ」と思った
わたしは二度、不登校になったことがあります。
一度目は、中1の6月くらい。入学早々受け始めたいじめや、担任の先生への不信感などが影響して、最終的には「靴まで履いたのに玄関から一歩も外へ出れない」という状態になりました。
二度目は、中2の5月。中1の3学期から学校に復帰したのですが、春休み明けに不安やストレスが限界に達し、クラス内でのいじめが再発したことをきっかけに自ら不登校を選びました。
「あ、ダメだ」って気付くんです。
授業を受けていても先生の話がまるで日本語に聞こえなくて。
30分以上宿題に取り組んでいるのに一問も進んでいなくて。
トイレの鏡に映った自分の顔がひどく青くて。
通学路の途中でたまらなく学校とは反対側に走り出したくなって。
自分の身体と心が、とうの昔に限界を超えていたってことに、気付いたんです。「学校に行かなくていい」長期休み期間を過ごして、初めて。
わたしは休み中に学校がしんどくなったんじゃありません。休み明けに休みが恋しくなったのでもありません。
休みに入るずっとずっと前から、苦しくてたまらなかったんです。その気持ちに蓋をして、やり過ごすしかなかったんです。
休み明けの「行きたくない」を甘えだと断じないで
休み明けに「学校に行きたくない」と突然言い出したり、学校に行き渋ったりする子がいたら、それを甘えだと断じないでください。「どうせ、休み中に生活リズムが崩れたんだろう」なんて見過ごさないでください。
その子の心は、もう磨り減りすぎて穴が空いてしまっているのかもしれません。冗談っぽく「行きたくないな~」と駄々をこねているのは、その子なりのSOSかもしれないのです。
もちろん、大人へ甘えたい故の反応や、生活リズムの変化による一時的な崩れもあり得ます。
ただ、その場合は「休んでいいよ」と伝えたところで不登校にはなりません。学校に行きたくないわけじゃないから。学校に苦しみを抱えているわけではないから。
3日~1週間程度休んで、大人がきちんと甘えさせてくれることを理解できれば、生活リズムが落ち着いてくれば、自分から学校に行き始めます。1日中家の中で過ごすって、家族としか会わないって、予想以上に退屈でしんどいものです。
子どもが「学校に行きたくない」と言うのには、必ず理由があります。
「甘えだ」「そんなの許さない」「学校に行くのが当たり前」と言ってしまえば、子どもは学校に行くかもしれません。大人に逆らうことなんてできないから。
でも確実に、その子は傷を抱えます。
「嫌な場所に行くしかなかった」という傷です。
「周りの大人に自分の声は届かない」という傷です。
「大人たちの目に映っているのは“苦しんでいる自分”ではなく“世間体”だ」という傷です。
甘えたっていいじゃありませんか。少しくらい崩れたっていいじゃありませんか。学校に行けなくなったっていいじゃありませんか。
それでその子が、気持ちよく生きられるのなら。幸せな毎日を過ごせるのなら。
その子が笑顔でいてくれるなら、それでいいじゃありませんか。
歩き続けるしかない世の中だから
今、子どもたちはずっとずっと歩き続けなければいけない世界で生きています。
立ち止まったらすぐに置いていかれる。立ち止まったらもう追いつけない。
あまりに歩き続きすぎるのです。寄り道できなさすぎるのです。止まるきっかけが、余裕が無さすぎるのです。
人生って、そんなに味気ないものでしたか。
少しでも遠くの、少しでも高いところへ行くことだけが、人生の目的なのですか。
放課後に友達と自転車で海に行くとか、学校がある日に家族で遊園地に行くとか、一日ぐうたらベッドの上で過ごすとか、そういう道草があるから、人生はカラフルになっていくのではありませんか。
歩き続けるしかない世の中だから、どうかご家庭だけでも、子どもたちがゆっくり座れる場所であってください。
子どもたちが歩みを止めることを恐れないでください。しゃがみ込むことを否定しないてください。ルートから外れることを拒まないでください。
子どもたちには、自ら歩き出す力があります。立ち止まってもしゃがみ込んでも、元気が出てきたらすくっと前を向いてまた進み始めます。
子どもたちの可能性を、信じてください。
子どもたちの人生を、子どもたち自身に委ねてください。
子どもたちの選択に、マルやバツや点数をつけないでください。
これからを生きていくのは、わたしたちではないのです。
子どもたち自身なのです。
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このnoteは、3月10日に投稿した以下の連ツイをもとに執筆しました。
たくさんの方から共感や応援などの声をいただき、嬉しい限りです。有難うございます。
「休みが長引くとその後登校リズムが崩れ不登校が増えるのでは」と見かけた時、モヤモヤで心がいっぱいになりました。
今回の長期休みは予定になかったし、春休みだとしても予定よりずっと前倒しです。子どもたちも周りの大人も心の準備ができなかった。特に小学6年生・中学3年生・高校3年生の卒業生は複雑な心境だと思います。
もちろんそれ以外の学年の子どもだって、部活が中止になったり遊びに行けなくなったりして、鬱々とした気持ちで過ごしている子も多いはず。
だから、フォローは必須です。子どもたちに対してだけではなくね。
少しでいいから外出する、オンライン講座を使って勉強する、友達とSNSでだけでも交流する……。そういう活動やリフレッシュは、休み中の子どもたちの支えになるし、休み明けの子どもたちを救うものにもなり得ます。
ただ一方で、必要以上に「学校に戻れなくなるのでは……」と不安視するのは避けてほしいのです。大人の不安は子どもに伝わります。
休みを無理に肯定的に捉えなくてもいいです。急な休み、失敗やゴタゴタがあったりストレスがたまったりするのは当然。
抱えた不安は、はやめに吐き出してください。できれば、カウンセラーや教育支援センターのスタッフなどの専門家と繋がれると良いです。場所へ行きにくければSNSやネットを使う方法もあります。わたしでもいいです。
どうか一人で抱え込まないで、どうか子どもたちを追い詰めてしまわないで。
しんどい状況だからこそ、小さな幸せを見出して。子どもたちの笑顔に目を向けて。
大丈夫。大丈夫です。あなたが思うほど事態は悪くなりません。世の中、意外とどうにかなるもんです。