不正
父が私達の運動会に参加したのは
姉が幼稚園の年長さん、私が年小さんの時が最後だっただろうか?
私が年長さんになった時にはお店を始めていたので来なかった
幼稚園の運動会では恒例の演目があり
体育座りをして顔を伏せてる園児達の中からお父さん達が我が子を探し出し
おんぶしてゴールを目指すと言う親子共演の徒競走があった
姉は運動会前日
父に自分の見つけ方を伝えていた
「お父さん、私の靴。右足の小指のところ穴が空いとるけん!靴ば見て私を見つけて」と
そして運動会当日
競技が始まる前に念押しで
穴の空いた靴を見せ父に確認させた
姉のような策士な園児を私は見た事がない!
園児は純真無垢な存在でなければならない
しかし、姉はすこぶる負けず嫌い
勝負事にはシビアなのである
これは血筋なのかもしれない
徒競走が始まり
数名のお父さん達と共にスタートした父
純粋な園児達は顔を見せないように下を向き自分のお父さんが探していても頑なに顔を伏せていた
我が子を必死で探すライバルのお父さん達を尻目に
うちの父は娘の穴の空いた靴を秒で見つけ
姉の腕を掴み肩にしょってダッシュ
ぶっち切りの1位だった
不正で得た1位とは誰も知らない
不正親子誕生の瞬間である
そして、父は運動会を引退
次の年、私の幼稚園最後の運動会は
2軒隣の幼馴染のお父さんが
父の代わりに親子競争に出てくれた
顔を伏せたよその子を探すなんて出来るはずもなく
幼馴染のお父さんは私の名前を呼び
私は顔を上げ軽く会釈
この年は見つけた子供をおんぶではなく肩車をするという
いらんこと難易度が上げられており
私は高身長の幼馴染のお父さんに肩車され
慣れない高さの肩車で
あまりの恐怖におじさんの髪の毛を手綱のように握りしめていた
ちなみに結果は1位ではなかった
私の不正は軽く会釈した程度
可愛いもんである
姉の園児らしからぬ不正には勝てない勝てない(笑)
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