働くってなんだろう。
先日、仕事の打ち合わせをしていたら「仮にすべての職業が同じ給料だとしたら、どんな仕事をしたいですか?」という質問をもらった。
咄嗟に答えが出なかった。なんとなく「うーん、小説家かな」と適当に答えていた。
帰り道、ふとその受け答えが引っかかった。小説家という職業が、読んでくれた人や観てくれた人からの対価で成り立っているのであれば「同じ給料」であることは創作活動の熱量を殺すことではないか、と。いや、それ以前にそもそも働くことの対価は相手があって初めて成立するはずではないかと、今更ながら気付いて少し恥ずかしくなった。
働くってなんだろう。
先日、友人たちと給料の話になった。毎日残業続きでストレスフルな仕事だけど給料がいいことで溜飲を下げている人もいれば、給料は安定しないのは不満だけど、いくつかの仕事をかけもちしながら自分で仕事も遊びもコントロールできる働き方の方が楽でいいという人もいた。
話の結論はでなかったけれど「自分にフィットする働き方を選べばいいよ」という一言が印象に残っている。
働くってなんだろう。
先日、電車に乗っていたら、「はたらいて、笑おう」と満面の笑みで声をかけてくるお爺さんがいた。とある人材紹介会社の広告だ。電車の窓にベッタリと貼りついたその笑顔と言葉に居心地の悪さを覚えて、思わず目を逸らした。
毎日笑ってるんだけどなぁ。そう思ったものの、笑えない状況にいる人も(たぶん)いるんだよな、だからこの広告があるのか、と思うとやり場のない気持ちが湧き上がってきてなんとも言えない気持ちになった。
働くってなんだろう。
先日、参加した友人の結婚式のスピーチで、どこかの企業の社長が「我々の会社は古いと言われます。みなさんが忘れかけた恩義・忠義を大事にする会社です」と言っていた。言っていることはたしかに古いし、恩義はそうやって上から押し付けるものではないだろう?と少し鬱陶しさを感じた。
そう思う一方で、人に恩を感じることはたくさんあるし、それを返せているかと言われれば(現時点では)ノーだ。恩を返せる場所を会社でなくていいからほしいと思った。そういうあたたかさが集まった場所で働いてみたいな、とも思った。
一体、働くって、なんなんでしょう?
最近では、働くということに対して前向きな言葉を感じるようになってきました。「多様な働き方を認めよう」「どこで仕事をしてもいい」という言葉たちはキラキラして楽しそうに見えます。
10年位前まで「働く」ことで言及されていたのは「給料」が大半を占めていたように思います。求人広告もほぼ「年収アップ」「大手求人」を前面に打ち出していました。
でも今では、(表向きは)働くことの選択肢が増え、働くことの意味合いが「どのように生きるか」とほぼ同じになってきているように思うんです。まさに「はたらいて、笑おう」のように。
それはそれで良いし、僕も賛同はします。働くことがポジティブなものになるというのは、とても素敵なことです。とは言え、そんな前のめりな言葉に煽られたり、乗せられたりして疲れ始めている人もいるんじゃないかとも思うんです。
そんなことを考えるようになったのは、ここ最近、年齢問わず、20代中盤の若い人から40代に差し掛かった年上の方まで(時に切実な声をともなって)相談されるようになってきたからなんです。「平山さん、働くってなんなんでしょう?」と。
僕は転職歴が2回あるだけの、ただのサラリーマンです。人に何か示唆を与えられるだけの華々しい実績もありせん。おそらく相談してきた方たちも僕には答えを求めていないように思います。彼ら彼女らは、誰かに話すことで、働くことについて自身と向き合い、考え始めるきっかけがほしいようにも見えました。
僕にできることは、向けられている声にしっかりと向き合い、言葉を拾い、彼ら彼女らがその中からヒントを見出すことを手伝うことで、仮に僕から差し出せるものがあるとすれば、これまでの社会人生活で「何を学び何をつかんでこれたか」をなるべく飾らずに伝えることなんだと思っています。
なので、少しだけ今日はそんな話を(前置きが長過ぎましたね)。ちなみに今日は働くうえでのノウハウなど「お役立ち系」のものは一切出てきません。そして長くなります。
1社目でつかんだ「正直さ」の有効性
僕は新卒で入社したweb制作会社の営業を6年間務めた後、出版社に転職し、とある旅行ガイドブックのweb版のプロデュースを5年ほどやって、今ドリンクメーカーのデジタルマーケティングを担当しています。
新卒で入社したweb制作会社は、規模は小さく、僕が入社した時はインターネット広告事業を始めたばかりで、入社した翌日には飛び込み営業をするような環境でした。
なぜ、そんな会社に入ったのか。そのあたりは、以前書いていますのでそちらをご参考ください。
大手代理店と比較して圧倒的に弱いのは知名度と実績。会社名を言っても会ってもらえないし、実績がないからコンペで負けるし、となかなかはじめはしんどかった気がします。
そうなってくると工夫するしかないんですけど、新入社員だからその術もわかならい。前途多難な船出だったんですけど、入社して3年経った頃には30社近くのお客様をもち、在籍中は1社も切り替えられることがありませんでした。
その間何をやったかをここで細かく書いてしまうとだいぶ文字数を使ってしまうので省きますが(本題はそこじゃない)、ひとつには正直でいたことだったように思います。
Webマーケティングという言葉が出始めた頃です。お客さんも何をどう決めたらいいかわからない。そもそも有効かどうかもわからず「流行り」だからやってみる、という声もありました。
ただお客さんも違和感は感じています。新しい広告手法が出る度に「これってこんな数字が本当に出るの?」とか「その手法って効果はあるの?」と。
広告代理店としては受注できればいいので売れるものは「見栄えをよくして」売り込めばいいのですが、僕はそれが性格上どうしてもできませんでした。単純に売り込むだけの理論武装ができていないこともあったと思いますが。
その代わり、聞きました。とにかく話を聞きました。インターネット広告に限らずいろんな悩みを聞きました。そして答えました。なるべく正直に。持っている知識を総動員してベターな答えを提示し続けました。
はじめは売上につながりませんでした(上司に散々罵倒されたなぁ)。ただ、不思議と2年位経つとお客さんの方から「お願いしたい」と指名が入るようになりました。3年目以降はほぼ営業成績は「トップクラス」にいたように思います。
正直であるということは、ただ自身の「やりたいこと」を伝えることではありません。相手の声に耳を傾け、自分の立場を超えて真摯に応えることです。
その結果として、お客さんのひとつから声がかかり2社目に転職することになりました。広告代理店からメディアへの転職でした。
2社目でつかんだ「外に出る」有効性
旅行ガイドブックを生業とする出版社に入りました。広告代理店から出版社に入るにはそれなりの理由がありましたが、ここで語ると長くなるので今回は割愛します。
出版社でしたが、やったことはwebメディアのプロデューサーでした。編集経験もライター経験もなかったので、任されたときは嬉しい反面途方に暮れました。
社内に答えを探そうにもそこは出版社です。webメディアについての知見はほぼゼロでした。外に答えを求めるしかない。なので必要に迫られる形で外に出ることにしました。
「外に出る」と一口で言っても、それは業界のセミナーに参加して情報をアップデートしたり名刺交換をするだけではありません(もちろんそれもある程度は有効でした)。
「外に出る」というのは、つたない知識を入れながら、自分なりの正直さで伝える場をつくり、その発言をきっかけにしてつながる人を増やし、自身の思考を深めて、また外に向けて発信すること。端的に言えばこの繰り返しです。
僕の場合、伝える場のひとつがTwitterでした。そこで出会った人が僕の考えに共鳴し、そこから新しいアイデアが生まれ、社内に還元する、そんな好循環が生まれ、ある程度は機能しました。
つながりを作っていく上でも大事にしたのは1社目で獲得した「正直さ」。ありがたいことに出会った人がまた新しい出会いを紡いでくれ、新しい共感の輪が日々年輪のように少しずつ大きくなっています。
つながった人からの後押しもあって、昨年の春に次のステップに進むことになりました。
今から獲得するものは何?
正直わかりません。むしろわからないから楽しみでもいます。ひとつだけ言えるのは、僕自身が学んだ「正直さ」と「外に出る」ことが今いる場所に運んできてくれたことと、それによって「将来どうなるんだろう」という不安がどんどん薄れてきて、自由すら感じられているということです。
何を仕事にするか、どんな働き方をするか、それもとても重要な問いだと思います。でも働くことを通して学ぶ姿勢を忘れずに動き続けてさえいれば、何歳になっても「次」の扉は開いて待ってくれていると思うんです。
僕が好きな言葉に哲学者内田樹さんの「仕事というのは突き詰めればやりとりでしかありません」というものがあります。僕はこの言葉がとても好きです。僕がやってきたこともやりとりそのもののような気がします。正直なやりとりが共感を呼び、次の場所へ誘ってくれているような気がしています。
みなさんの「働く」を教えてください
働くってなんだろう、ということについて、自身を振り返ってみました。正直なところこの壮大なテーマに対して、僕個人の経験だけでは回答に辿り着けそうにありません。
それならば、立場のまったく異なる人たちと話してみるともう少しヒントが与えられるかもしれません。昨年末から始めたライブ配信「あっ、なんの話だっけ?」の中で話すことにします。
はい。告知です。
株式会社Waseiという新しい働き方を提案する経営者でありながら「隠居系男子」のブロガーでもあり、「WASEI SALON」のオーナーでもあるストレートアイ鳥井さん、「サイボウズ式」の編集長でありながら、副業でマーケティングまわりや編集周辺で新しい関係値を構築しているサウナ―藤村さん、メンバーの中で唯一会社勤めをしたことがなく、世界を放浪した後にライターを軸に活躍されているハイボーラー阿部さん、こんな多種多様な人たちから聞ける「働く」は面白そうです。
そんなわけで2月13日19時半から、こちらのFacebookページからライブ配信を行います。
僕らの中でも「働く」に対して明確な答えは持っていません。みなさんが思っている「働く」についての想いや疑問や悩みを頂戴しながら有意義な場にできればと思っています。当日Facebook上で直接投げかけてもらってもいいし、事前にTwitterで「#waseisalon」をつけて投稿してもらえれば、可能な限り当日お答えする予定です。
それでは、明日、お楽しみに。