【読書メモ】構造方程式モデリングの基礎:『心理学・社会科学研究のための構造方程式モデリング Mplusによる実践』(村上隆・行廣隆次監修、伊藤大幸編著、谷伊織・平島太郎著)第1章
構造方程式モデリング(Structural Equation Modeling:以下SEM)の教科書はいくつもあります。その多くは、ページを捲るたびに数式しか出てこない難解な書籍か、非常に平易に書いてくれていてありがたいものの実用レベルにはギャップのある入門書レベルのものです。本書は、数式は抑えながらも概念的な解説は丁寧になされていて、一つひとつのポイントの内容と理由づけがしっかりしています。そのため、決してすらすらと読めるものではありませんが、挑みがいがある内容で、少なくとも現時点での私にはフィットした教科書です。
SEMとは何か
第1章の冒頭で著者は、SEMを一文で説明してくれています。
この説明に基づいて、(1)〜(3)について第1章では説明をしてくださっています。
(1)パス図
(1)に出てくる仮説モデルとはパス図で表現されるものです。パス図で画像検索すると最初の方に出てくる、小塩先生のサイトの図を貼ります。出典も載せているので詳しく知りたい方はそちらも併せてご覧ください。
四角は観測変数と呼ばれるもので、実際に観測されるデータを指します。上記で言えば、x1は小学校の国語の成績という他者から観測できるものです。他方の楕円形は潜在変数であり、複数の観測変数から成る抽象的なものです。小学校の国語の成績と算数の成績とから「小学校の学力」という構成概念(潜在変数)が構成されるという関係性です。
(2)適合度
妥当性は適合度によって検証されます。カイ二乗検定、CFI(Comparative Fit Index)、RMSEA(Root Mean Square Error of Approximation)など、私も分析で使ったことのある適合度の指標が解説されています。
それぞれについてのポイントを学びつつ、著者の指摘する以下の内容が読み応えあります。
学術誌の論文を何本も読んでいると、〇〇の分析の場合には△△の適合度指標を使えばよいのだなと勘所を掴めるものです。では、なぜ適合度指標△△を使うのかという理由づけを第1章を読むと理解できます。何度も読み返す章になりそうです。
(3)パラメータ
SEMではパラメータを推定することが求められます。たとえばAmosで分析すると自由度というものが出てきますが、これはSEMで用いる連立方程式の数(=観測変数の分散・共分散の数)からパラメータの数を引いたものです。
本書を読むための入門書
本書も初学者のための書籍と言えますが、SEMをイメージできない場合にはなかなか読みづらいと思います。個人的には、本書を読む前に小塩先生の『共分散構造分析はじめの一歩』に目を通しておくと良いかもしれません。
上記だけでは実際にAmosやMplusを触って分析するところにまでは至りませんので、本書を読んで分析や考察を行うのがよさそうです。