【読書メモ】心理尺度構成のための統計手法:『心理尺度構成の方法 基礎から実践まで』(小塩真司編)
『心理尺度構成の方法 基礎から実践まで』の8章のタイトルは「心理尺度構成のための統計手法」です。いくつかの手法が紹介されていますが、個人的に良い復習になるので探索的因子分析と確認的(確証的)因子分析の2つに絞ってまとめます。
そもそもなぜ統計分析が必要なのか?
ある概念に精通している研究者や、現場における事象に詳しい実務家であれば、この概念はこの尺度で測ればOKですよ、というように尺度を提示したくなる気持ちを持つこともあるでしょう。統計分析を行うのは慣れるまでは手間ですし。
8章の冒頭で、このような読み手が持ち得る感情に対して、統計分析を行う必要性を端的に提示してくれています。
前半から中盤の主観と客観、トップダウンとボトムアップという部分は端的な必要性に関する説明でわかりやすいですし、最後の文章では統計分析を行うことによって尺度をより良いものにすることができるという大きなメリットが書かれています。必要だよ!と頭ごなしに言うだけではなく、それによって何ができるのかというメリットが書かれているのは良心的な記述に思えます。ちゃんと尺度構成しないとですね。
探索的因子分析
学部や修士で行われる統計の授業で因子分析として習い、SPSSで少し触ってみることが多いのは探索的因子分析でしょう。すごく乱暴に言ってしまえば、複数の設問項目をいくつかにグルーピングできるという手法です。
8章では探索的因子分析の目的を以下の2つに絞って説明してくれています。
端的にポイントを提示してくれるありがたい表現です。なぜ探索的因子分析を行うのかをわかりやすく説明してくれています。著者はここからさらに深掘りして、ではなぜ因子数を確認して単純構造になっている尺度にすることが大事なのかを以下のように解説しています。
つまり、現場にお届けする実践的示唆を提供するために探索的因子分析によってきちんとした尺度を作るということです。心理尺度なので教育や臨床といった言葉が並んでいますが、組織におけるサーベイでも同様と考えられます。
もし、大規模なサーベイを行う項目について探索的因子分析すらせずに、担当者の主観あるいは経営を忖度した項目をもとに因子構造を設定しているのであれば、それは科学的アプローチを放棄している態度にしか思えません。実践的な示唆もずれてしまうわけですから、調査のための調査になってしまっているとも言えます。ピープルアナリティクスがここまで流行っているのですから、そうした杜撰な対応をしている企業組織はきっとないと信じています。
確認的因子分析
続いて確認的因子分析です。Confirmatory Factor Analysis(CFA)の訳として確認的因子分析となっていますが、確証的とも取れるので確証的因子分析とも呼ばれます。こうした細かい差異があるので、両者は異なるものなの??というような疑問を統計を学び始めた当初は戸惑いましたが、結論は一緒です。
ではなぜ、尺度開発を行った後に探索的因子分析を行うだけではなく確認的因子分析も必要なのでしょうか。探索的因子分析の必要性やメリットは前項で挙げましたが、以下の2つの不十分な点が出てきてしまうためだからと開設されています。
この2つを押さえておけば十分と言えますが、さらにマニアックに深く理解したい方向けに著者の秀逸な補足解説も引用します。
これはありがたい解説です。なんとなくふんわりと理解していたつもりだったものがクリアに説明されて心地よいです。
適合度と信頼性の相違点
確認的因子分析の二つ目のポイントとしてモデルの適合度という言葉が出てきていました。適合度はカイ二乗、GFI(Goodness of Fit Index)、RMSEA(Root Mean Square Error of Approximation)といった指標で判断されるものです。
では以前扱った尺度の信頼性とはどのように異なるのでしょうか。
そのため、確認的因子分析でモデルの適合度を評価しつつ、他方でα係数やω係数によって信頼性も評価することが併せて必要になる、ということです。
最後まで目を通していただき、ありがとうございました!
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